ドンソクが演じるのは「この人にだけは逆らっちゃダメ!」な最強ヤクザ
韓国産ゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)で、屋久杉のようなごんぶとアームを世界中に誇示したマ・ドンソク。その後も『犯罪都市』(2017年)や『ファイティン!』(2018年)、『無双の鉄拳』(2018年)など大変マッスルな主演作が続き、ついには2021年に全米公開予定のマーベル・シネマティック・ユニバース第25作目『ジ・エターナルズ(原題)』(日本公開日未定)にも出演。いまや飛ぶ鳥を張り手で叩き落とす勢いだ。そんなマ・ドンソクの待望の新作『悪人伝』が、2020年7月17日(金)より日本公開される。
▶逃げ場なし、希望なし、漢気あり!『新感染 ファイナル・エクスプレス』 ゾンビ列車が韓国縦断
本作のマ・ドンソクが演じるのは、腕っ節自慢のヤクザの組長ドンス。名前からして強そう……。初登場シーンでは、サンドバックを黙々とぶっ叩いているのだが、そのサンドバックを開けると中には人間が詰め込まれていました! というブルータルなサプライズで先制。
そうして観客に「この人にだけは逆らっちゃダメ」とすり込ませたところで、事件勃発。なんと、ドンスひとりでいるところを気分次第で人を殺しちゃう無差別殺人鬼が急襲。あまりの不意打ちだったのでドンスも押され気味となってしまい、その場はなんと引き分け! そこからドンスは組織力と地位を存分に生かし、自分を襲った殺人鬼探しに躍起になるのだった。
一方、警察側も無差別殺人鬼を追っている。若くイケイケな乱暴刑事テソク(キム・ムヨル)は、これまで起きていた殺人事件と同じ手口で襲われたドンスに接近。立場の違いから当然反発し合うふたりだったが、ドンスの提案で協力して無差別殺人鬼を探しだすことに!
だだっ広い背中を持つマ・ドンソクを襲う殺人鬼の無謀さよ!
ということで、警察とヤクザという両極端でありながら権力や力を駆使して好き勝手やる、という意味では似たりよったりなふたりによるタッグが誕生。ここまでくると破滅まっしぐらな殺人鬼側を応援したくなるぐらいの展開に。
……というか、引っかかるのはそこなんです。そもそもドンスを襲った殺人鬼。あのドンスの巨体を前にして臆せず襲ったっていうのが凄すぎないか? 通り魔が逮捕されると、よく「誰でもよかった……」と口にするけど、本当に誰でもよかった試しがないわけで。それか、この手の映画でもっとも重要な役回りである「とてつもなく人を見る目がない人」というのがいるけど、それにしても……。そんなわけで、ただの通り魔的犯行を繰り返す殺人鬼ではなく、もしかしたら襲った理由が何かしらあるんじゃないか? と終始邪推してしまったけど、そんなことは微塵もなく最後まで本当のただの無差別殺人鬼でした。強いな殺人鬼!
そんな本作のポイントは、ヤクザと警察が結託していながら目標は同じだけど目的が違うってところ。刑事テソクは、もちろん殺人鬼を逮捕したい。なんなら出世したい。一方のドンスは、メンツを保つために殺人鬼をとっ捕まえて八つ裂きにしたい。ここの目的が違うから、何度も揉める両者。これによって単純な話でありながら展開を読めなくさせているのは上手いところ。もちろん全編バイオレンス盛りだくさんで、ドンス&テソク以外も登場人物全員が血気盛ん。梅雨時期の低気圧からくる頭痛なんて開始数分で吹き飛ぶはず。
ちなみに本作は、シルヴェスター・スタローン製作によるリメイク化も進んでいるとのことで、マ・ドンソクも同じ役柄で続投決定。いっそのこと殺人鬼役は『ランボー ラスト・ブラッド』で殺人鬼っぷりを見せつけたスタローンが演じればマ・ドンソクを襲う説得力も生まれるし最高なのに!
文:市川力夫
『悪人伝』は2020年7月17日(金)より全国公開
Presented by クロックワークス
『悪人伝』
凶暴なヤクザの組長チャン・ドンスが、ある夜何者かにめった刺しにされる。奇跡的に⼀命をとりとめたドンスは対立する組織の仕業を疑い、手下を使い犯人探しに動き出す。一方、捜査にあたるのは、暴力的な手段も辞さない荒くれ者のチョン刑事。彼は事件がまだ世間の誰も気づいていない連続無差別殺人鬼によるものであると確信し、手がかりを求めてドンスにつきまとう。互いに敵意を剥き出しにしながら自らの手で犯人を捕らえようとするドンスとチョン刑事。しかし狡猾な殺人鬼を出し抜くために互いの情報が必要であると悟った2人は、いつしか共闘し犯人を追い詰めてゆく――。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2020年7月17日(金)より全国公開