爆選! 意外と観てないかも? なドニー・イェン主演作
よほどの映画ファンでも、ドニー・イェン出演作を全部見ているという人は極端に少ないと思う。まあ筆者もそうで、なにしろ作品数が多く、日本では“全国拡大ロードショー”みたいなことにもなりにくい。「そういえばあれ、見逃したままだな」ということがあって当然。なんなら『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)しか見てないって人もいるだろう。
ちなみに、そんなドニーの日本公開最新作は、60年代香港の麻薬王を演じる『追龍』(2020年7月24日公開)。その一方で『燃えよデブゴン』(1980年)リメイク『エンター・ザ・ファット・ドラゴン(原題)』(日本公開未定)も。この2つのどちらかしか見ていなければ、ドニーのイメージはまったく違うものになるはずだ。
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多彩なジャンルでドニー・イェンの最強ぶりを堪能!
いや実際、ドニーが出演する映画、そのジャンルは幅広い。一口に“アクション”と言っても現代劇もあれば時代劇も。『三国志英傑伝 関羽』(2011年)などは、案外見逃している人が多いんじゃないだろうか。
タイトル通り、ドニーが演じるのは三国志に登場する英雄・関羽雲長。敵将・曹操との緊張関係や秘めた恋愛模様に加えて、やはり見どころはドニー=関羽のバトル。「青龍偃月刀」をブンブン振り回してのパワー系ファイトだ。『イップ・マン』シリーズ(2008年~)の詠春拳は最小の動きで敵を仕留める接近戦がメインだが、この『関羽』ではダイナミックさが魅力となっている。
現代アクションでは、MMA(総合格闘技)のエッセンスを活かした闘いに注目したい。MMAイベントのUFCがブレイクし、キャプテン・アメリカも寝技を使う今の映画界だが、ドニーはその先駆者なのだ。打撃だけでなくタックルなど投げ技で倒し、最後は絞め技・関節技で仕留める。
この路線は本数こそ少ないが、ドニー(とそのチーム)のチャレンジ自体も楽しい。『スペシャルID 特殊身分』(2014年)でも、クライマックスの“フィニッシュ”としてかなりマニアック(はっきり言って地味)な技がチョイスされているが、そこに迫力と説得力をもたらすことができるのがドニー。それもまた“宇宙最強”の所以だろう。
そして“宇宙最強”であるからこそ、ドニーは現代劇も時代劇も超える。SFファンタジーアクション『アイスマン 超空の戦士』 (2014年)、『アイスマン 宇宙最速の戦士』(2018年)の2本だ。
ドニーが扮するのは明朝の兵士。戦いの最中、雪崩に巻き込まれて冷凍保存状態となり、現代に蘇る。
日本で言えば戦国時代の兵(ツワモノ)が蘇ったようなもので、それはもう現代の基準を完全に逸脱する強さなわけである。しかもこの戦士には、過去に戻らなければいけない理由もあった。かくして、過去と現代をまたにかける、時空を超えた闘いが展開される。
ということは、当然シチュエーションもさまざま。ある種ぶっ飛んだ展開の中で、多彩な役柄をすべて自分に引き寄せ、なおかつ幅広い“ファイトスタイル”で観客を魅力するドニーの個性も際立つ。
まさにこの3本、見逃している人も多いはずで、この機会にドニーのオールラウンダーっぷりを堪能してほしい。
文:橋本宗洋
『アイスマン 宇宙最速の戦士』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年7月放送
『三国志英傑伝 関羽』はAmazon Prime Videoほか配信中
『スペシャルID 特殊身分』はU-NEXTほか配信中