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スパイク・リー監督の傑作3選! アメリカに生きる黒人たちを辛辣な視点にユーモアを交えて描き続ける!!

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ライター:#BANGER!!! 編集部
スパイク・リー監督の傑作3選! アメリカに生きる黒人たちを辛辣な視点にユーモアを交えて描き続ける!!
『ブラック・クランズマン』©2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

毎年参加セレブの華やかなファッションでも話題を呼ぶ<BETアワード>は2020年、新型ウイルスの影響でバーチャル開催となったが、ミシェル・オバマがビヨンセにHumanitarian Award(人道主義賞)を授与するなど、Black Lives Matter運動を後押しするような信念と希望に満ちた催しとなった。また、警官に殺害されたジョージ・フロイド氏の最期を再現したダベイビーのパフォーマンスなども印象的で、中でもナズやラプソディー、YGらが参加したパブリック・エネミーの「ファイト・ザ・パワー」にはオリジナル版をアップデートさせた普遍的な力強さが漲っていた。

https://www.youtube.com/watch?v=sHQolYuO6Ew

そして「ファイト・ザ・パワー」といえばスパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年) であり、2020年は日本公開から30年という記念すべき年でもある。というわけで、Black Lives Matter運動を風化させないという想いを込めつつ、スパイク・リー監督の“いま観るべき”新旧3作品を改めて紹介しておきたい。

https://www.instagram.com/p/CCEom-YHLvu/

ストリートの人種間対立を斬新かつリアルな映像で描いた『ドゥ・ザ・ライト・シング』

『ドゥ・ザ・ライト・シング』が全米で公開された1989年は、ジャングル・ブラザーズやクール・G・ラップ、LL・クール・J、EPMD、ビッグ・ダディ・ケイン、ロクサーヌ・シャンテにクイーン・ラティファ、そしてビースティ・ボーイズ やデ・ラ・ソウルなどなど、いわゆるゴールデンエイジ(ミドルスクール)と呼ばれるヒップホップの全盛期であり転換期だった。そんなタイミングでパブリック・エネミーの「ファイト・ザ・パワー」を引っさげて登場した、スパイク・リー監督の真骨頂が発揮された社会派ドラマが本作である。

https://www.instagram.com/p/B-pW9L4n9-F/

NYブルックリンのストリートで繰り広げられる悲喜こもごもは全体的にユーモアがまぶしてあるものの、本質は黒人とイタリア系、ヒスパニック系、ユダヤ系、そして韓国系移民たちの間で巻き起こる人種間対立であり、その結果が生んだ悲劇だ。それをストリート目線の生々しくケレン味あふれるカメラワークで捉えたところにリー監督らしさがあり、かつリアルな日常が切り取られていることが斬新で画期的だった。いま観ても説教くさくないのはそういった革新性の賜物だろう。

https://www.instagram.com/p/B6BTSCcn2aS/

一部のトラブルメーカーによって悲劇の連鎖が始まる、というストーリー展開は現代も変わらない構図であり、貧しいストリートの一角にアメリカ社会の抱える問題を凝縮した本作。リー監督の衣装センスなどは思わず真似したくなるほどクールだが、そういった表面的な興味をより深い本質の理解へと昇華させることができるかどうかを、激動の2020年の命題にしなければならない。

▶ファイト・ザ・パワー! 30年を経ても変わらぬ現実を突きつける『ドゥ・ザ・ライト・シング』

戦後多くの黒人に勇気と希望を与えた英雄の人生を生々しく描く『マルコムX』

20世紀の米国において最も影響力を持っていた活動家、マルコムXの生涯を描く伝記ドラマ。その壮絶な生い立ちから、イキりまくっていた青年時代、ネーション・オブ・イスラム(ブラック・ムスリム) への目覚め、黒人解放指導者としての活躍、そしてブラックパンサー党の設立にも繋がったであろう衝撃的な暗殺による最期までを描く。現在よりもシャープなデンゼル・ワシントンがマルコム役にぴったりで、稀代のカリスマを生々しく人間くさく演じている。

『マルコムX』
価格:DVD 1,429円+税
TM,(R) & Copyright (C) 2004 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

冒頭、ズートスーツでキメて街を流すマルコムと、かつてKKKに家を襲われたマルコム一家のシーンが続く。マルコムにも白人の血が流れていること、だからこそ白人至上主義者を憎んでいること、そして根深い白人への疑心暗鬼を続けざまに描き、若かりし頃の人となりをテンポよく描いていく。ヤング・マルコムのやんちゃぶりは楽しいが、彼の両親が受けた不条理な暴力や屈辱、そして黒人の社会的な成功を妨げる白人たちの態度から、後の彼の“変化”が必然であったことがわかる。

https://www.instagram.com/p/BqU0HinHAEK/

裕福な白人と同じような振る舞いをすることによって復讐に代えていたマルコムが、暗く長い獄中生活を経てネーション・オブ・イスラムに目覚め、やがて“黒人として生きること”の誇りを人々に伝道していく。このあたり、マルコムの変化が劇的すぎて「なんだ新興宗教にハマったのか」と思われてしまうかもしれないが、Q-TIPやモス・デフなど有名なラッパーたちもネーション・オブ・イスラムに改宗していて、アメリカ全体で見れば少数派ではあるものの若い世代にも根強い信者がいることは知っておいたほうがいいだろう。

https://www.instagram.com/p/B-QMmJKHCqA/

本作は他のリー作品と同じく客観性が根底にあり、当然ながら白人への攻撃を目的としたものではなく、黒人同士のいさかいや宗教的な偏見も盛り込み、決して主人公をヒロイックな人物として描こうとはしない。そして中盤以降、マルコムXという人物が思い描いた“理想”の規模の大きさに、多くの人は腰が引けてしまうかもしれない。そのあたりが本作が単なる伝記ドラマの枠を超えた作品であり、いまなお賛否が強く分かれる所以でもある。本作で描かれるマルコム像は史実と公のイメージの半々くらいのバランス感と捉えておいたほうがいいとは思うが、それでも劇中で起こる出来事はほぼ全て史実であり、それらを目の当たりにさせられるショックは大きい。

https://www.instagram.com/p/CAYHjP9Ho9G/

3時間強の大作なので、じっくり腰を据えて(スナックを食べながらとかでもいいから)鑑賞していただきたい、アメリカ史における黒人の歴史を理解するうえで避けては通れない傑作である。もし2020年にマルコムが生きていたら95歳。かつて彼が欧州やアジア諸国に訴えかけた共感や支援をいまこそ、少なくとも正面から受け止める時が来たのではないだろうか。そして本作では描かれないが、マルコムの傍らには日系二世の公民権運動家、ユリ・コウチヤマ氏がいたことも覚えておきたい。

現代と地続きの70年代アメリカの闇を軽快なコメディで描く『ブラック・クランズマン』

米コロラドスプリングス初の黒人警官となる主人公ロン・ストールワースを演じるのは、『マルコムX』にも子役で出ていたデンゼルの息子ジョン・デヴィッド・ワシントン。ロンの相棒となるフリップ・ジマーマンをアダム・ドライヴァーが演じる。

『ブラック・クランズマン』© 2018 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

MLB初の黒人選手ジャッキー・ロビンソンのネタが本作でも早々に飛び出すが、ブラックパンサー党のストークリー・カーマイケル/クワメ・トゥーレ(コーリー・ホーキンズ)が登場することからも、このお話がマルコム没後の60年代後半から地続きであることがわかる。クワメの演説シーンは演出上の必然だけでなく、映画の力を借りて当時の熱量を再現しようとしているかのような迫力がある。

本作は冒頭、白人至上主義のプロパガンダ映画『國民の創生』(1915年) を背景に、アレック・ボールドウィン演じる人種差別主義者が有色人種への憎しみをぶちまけるシーンからして強烈だ。そして、潜入捜査官となったストールワースの相棒となるのはユダヤ系のジマーマンであり、ホロコーストに言及することで黒人だけではない、世界中に蔓延る人種差別、それに端を発する暴力行為や不条理な構造的人種差別に対して「NO」を突きつける。

『ブラック・クランズマン』
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格:Blu-ray 1,886円+税/DVD 1,429円+税
© 2018 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)でお馴染みローラ・ハリアーも、アメコミ映画とは一味違うクールな学生自治会長パトリスを好演。あくまでコメディとして作られているので軽快なノリに救われた気分にもなるが、主人公が嫌忌すべき“警官”であり“白人の協力のもと”で活躍するという点において一部で批判があったというから、差別問題を描くことのハードルの高さを思い知らされる。

『ブラック・クランズマン』©2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

ともあれ、常に“学び”や“気づき”を与えてくれるスパイク・リーによる傑作コメディをリラックスして楽しもう。

『ドゥ・ザ・ライト・シング』はNetflixほか配信中
『ブラック・クランズマン』はAmazon Prime Videoほか配信中

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