どうもアニです。
Appleが始めた動画配信サービス<Apple TV+>のオリジナル作品『ビースティ・ボーイズ・ストーリー』を観ました。10代の頃に結成して、2012年にメンバーのMCAことアダム・ヤウクが他界したことによって活動を終えたグループの歴史を、残るメンバーのアドロックとマイク・Dが写真や映像を見ながら振り返る、といった内容です。
1987年の初来日を最前列で観た若かりし日のスチャダラパー
お客さんを入れた会場でアドロックとマイク・Dが話すという内容で、監督は「Sabotage」のMVを監督したスパイク・ジョーンズ。で、結論から先に言ってしまうと最高の映画でした。自分自身大ファンだし憧れの存在というのもあって、観たことない映像やエピソードがテンコ盛りで、すげー楽しかったです。
初期のバンドを結成してから、1stアルバム『Licensed to Ill』(1986年リリース)を出したあたりの話はほとんど知らないことばかりだったので、観てて「へぇー、そうだったんだ」と思うことばかりでした。
初めて買ったビースティーのレコードは「It’s The New Style/Paul Revere」の12インチシングル(1986年リリース)で、当時聞いてたラジオで紹介されてて急いで買いに行った記憶があります。まだアルバムが出る前で、アルバムの先行シングル的な感じだったんじゃないかな。デフジャムの12インチのデザインもカッコよくて、表にターンテーブルのアームがあしらってあって、裏はDとJが大きく書いてある、今もあまり変わらないデザインに当時19歳だった自分は本当にシビれました。それで「あー、もっと聴きたいな」と思ってたところに、アルバム『Licenced To Ill』が出て、完全に虜ですよ。
このアルバムで初めてメンバーの姿を見たんじゃないかな。まぁ、そんな時代ですよ。ものすごく遠い存在でした、アジアの片隅の若者からしてみたら。それでもカッコイイなぁ、と思いながら毎日聴いてましたよ。
アルバムのインナーの写真がライブの写真で、最初はムチ振ってんのかなと思ったら、ビール撒いてる写真で。マドンナのツアーの前座やったときのなんだけど、本編にもその時のエピソードが出てきます。どういう経緯で前座をすることになったのか。
https://www.instagram.com/p/BjANHdjh32n/
そんでアルバムが大ヒットして、1987年の初来日で東京公演を3回やったんだけど、全部行きました。そのうち2回は最前列で見た。それくらい好きだった。その最前列で見てたのが、後のボーズ、アニ、シンコだったりするんだけど。
その時、一緒に行ったシンコの友達がウォークマンでこっそりライブを録音してたから、それダビングしてもらって、そのライブを超聴いてた。その時のライブ、なんかもうメチャクチャでカッコよかったんですね。ビール持ってただただ騒いでる感じが、10代の若者から観たら。
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攻めの2ndが大コケするもバンドサウンドの3rdで大復活! 来日ツアーや東京でのMV撮影などなど
この映画を観たら、収録曲が足りなくて、ふざけて作った曲「Fight For Your Right(To Party!)」が意外なウケ方をして、本人たちも面白がってたらそのノリに取り込まれていってしまって、戻るに戻れなくなっていったらしいです。日本のツアーの時はもう半ばヤケクソ気味だったみたいですね、観てる方は全くそんなこと気づかずに、「カッコイイ!」とシビれてたわけなんですけど。
1999年のベスト盤『Anthology: The Sounds Of Science』に収録曲の解説が付いてて、「Fight For Your Right」はサイテーの曲だから入れることにした、とありました。あと「冗談で始めたことには気をつけろ」とも。この後、何回もライブ観てるけど、「Fight For Your Right」は一回もやってないです、多分。
それで、もう馬鹿騒ぎにも飽きてたのにレーベルにはもう一回ツアーをしろと言われて、やりたくないと言ったらアルバムの印税の支払いを止められたそうです、契約違反だからと。友達として楽しくやってたと思ってたら、思いっきりビジネス目的だったのでガッカリしたみたいなのとか、結構ちゃんと語ってるのとかは超貴重だったりするんですよ。
それで地元のNYを離れてLAに移るんですよ。で、3人でまたイチからやってみようっていうことになる、その辺の1stアルバム~2ndアルバム作るまでの話とかは、ファンにはたまらない内容です。レコード会社探して部屋も借りて(ハリウッドの豪邸で共同生活)とか。この頃のMVってそういうことなのね的な。
で、2ndアルバム『Paul’s Boutique』(1989年)が完成して本人達も前作以上の手応え感じたんだけど、大コケしたらしいです。それも意外だった。普通にファンだったからアルバムが出た時に買って超聴いてて、いいアルバムだと思ってたから。でも本国では全然売れなくて評価も低かったらしいです。後に評価されてスゴいアルバムだってことになったらしいけど。この頃行ってた東京のクラブではシングルの「Shake Your Rump」よくかかってた。その頃でたPublic Enemyの「Fight The Power」と一緒に。東京というか、自分の周りでは結構流行ってた印象だったので。
『Paul’s Boutique』は全編サンプリングで作られてて、その使用料がとんでもない値段だったらしいけど、同じ年に出たDe La Soulの『3 Feet High And Rising』と並んで、サンプリングが凄いアルバムだと思います。あと、いとうせいこうの『MESS/AGE』も。音のコラージュで、なおかつポップミュージックとして。『Paul’s Boutique』に収録されている「B-Boy Bouillabaisse」という曲は、短い曲が集まっていて組曲みたいになってて凄いです。
アルバムはコケたけど、まだレコード会社との契約が残ってたので、豪邸を出て安いホールみたいなのを借りて、自分たちでスタジオ(G-Son Studio)を作って、そこで完成したのが3rdアルバム『Check Your Head』(1992年リリース)。サンプリングで作るのはお金がかかりすぎるから自分たちで演奏しようということになって、バンドサウンドとヒップホップが合体したアルバムでまた人気を盛り返すんですよ、新たなファンを獲得して。
それで2回目の来日をするんだけど、その時、僕らの友達のタケイグッドマンとマットの武井兄弟が、スペースシャワーの特番のためにビースティー・ボーイズの日本ツアーに密着して、ずっと張り付いてビデオを撮ってたら、なんかのタイミングで気に入られて、それからはイロイロと協力的になったらしいです。
その時、1ヶ月くらい日本にいたんじゃないかな。武井兄弟はオフの時に東京案内とかしてたし。一緒に付いてたMC.Booも気に入られて、ライブで飛び入りでラップしたのが「Gratitude(Live At Budoukan)」に入ってます。本当は武道館じゃなくてクラブチッタだけど。
そういう縁でMC.Booのグループ<脱線3>は、日本人アーティストとしてG-Son Studioでレコーディングしてる貴重なアーティストだったりします。その音源はアルバム『XXX-JAPAN』(1995年リリース)に収録されています。
ずっとビースティー・ボーイズのファンでいてよかったとしみじみ思える作品
ビースティーは2ndアルバムの頃からビデオも自分たちで撮るようになって、一応“MCAの叔父さん”という設定のナサニエル・ホーンブロワーという名義でMVを作ってるんだけど、どれもなんか味があってイイ。
その後、4thアルバム『Ill Communication』(1994年リリース)を出すんだけど、その中の「Sabotage」でまた爆発的な人気になって、90年代ユースカルチャーを代表するバンドになっていくんですね。「sabotage」をフェスでやったらお客さんが異常に盛り上がって、本人たちもびっくりして「新たなライブの締めの曲できたな」ってメンバーで話したというエピソードが好きです。
それで、そろそろNYに戻るかということになって戻って作ったアルバムが『Hello Nasty』(1998年リリース)というあたりで本編は終了してます。このアルバムのシングル「Intergalactic」のMVは東京でロケしてるんだけど、武井兄弟のところに連絡があって、「今度東京でロケしたいからヨロシク~」って感じで、本当にスタッフ連れてきて撮影したらしいです。ほとんどゲリラで撮影して、出来上がったらああいうビデオだったらしいです。
10代の頃に出会った3人がイロイロあって、大人として成長した姿で自分たちの歩んできた歴史を振り返るという、とても見応えある映画でした。MCAはもういないけど、彼の作った物はこれからも色んな人々に影響を与えていくんだろうなと思います。
残りの二人、アドロックとマイク・DもMCAがいなきゃビースティー・ボーイズじゃないからもうやらないっていうのも、なんかカッコいいなって思いました。最後まで謎が多い男だった、って語っておりました。ずっと、ビースティー・ボーイズのファンでよかったなと、これを見てしみじみ思いました。そして鑑賞後、ビースティーのビデオクリップ集を見返しました。
文:ANI(スチャダラパー)
『ビースティ・ボーイズ・ストーリー』はApple TV+で2020年4月24日(金)より配信中
『ビースティ・ボーイズ・ストーリー』
マイク・ダイヤモンドとアダム・ホロヴィッツが伝説となったバンドの物語と40年にわたる友情について語るライブ・ドキュメンタリー。監督は友人で長年のコラボレーターでもあるスパイク・ジョーンズ。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |