• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • 『007』のサントラは映画音楽の教科書だ! 名作曲家の豪華競演による“007サウンド”の流儀

『007』のサントラは映画音楽の教科書だ! 名作曲家の豪華競演による“007サウンド”の流儀

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#早川優
『007』のサントラは映画音楽の教科書だ! 名作曲家の豪華競演による“007サウンド”の流儀
筆者の『007』シリーズのサウンドトラックのコレクション 撮影:早川優

多彩なサウンドの料理人たちが腕によりをかけた音楽のフルコース

サウンドトラックが映画『007』シリーズの最大の魅力のひとつであることに異論を挟む方は少ないだろう。

▶ 【特集:007の世界】主題歌・サントラのレビューも充実

https://www.instagram.com/p/CBa-MFMIEr4/

ほぼ全作にわたって登場する冒頭のガンバレル・ショットに合わせて鳴り響く「ジェームズ・ボンドのテーマ」に心躍らされ、アバンタイトル(プロローグシーン)を挟んで毎回凝りに凝ったメインタイトルとオープニング・クレジットを優雅に彩る主題歌に始まり、我らが紳士スパイの一挙手一投足に合わせて奏でられるアクション音楽や、麗しのボンドガールたちに香水のようにまとわりつくラブテーマ。そして、世界を股にかけて展開する物語に合わせたエキゾチックなワールド・ミュージックまで、1作毎に多彩なサウンドの料理人たちが腕によりをかけた音楽のフルコースを、我々にたっぷり堪能させてくれる。

それは『007』映画が、第1作『007/殺しの番号(再公開時より『ドクター・ノオ』)』(1962年)から、揺るぎない伝統として実践し続けてきた大いなるチャーム・ポイントだった。

まさに映画音楽の教科書! 歴代『007』サウンドの流儀

そうした『007』音楽のパターンは、すでに第1作で確立されている。前述の「ジェームズ・ボンドのテーマ」をはじめ、映画の舞台となるジャマイカを取材し現地のリズム“カリプソ”を取り入れた「マンゴの木の下で」等の挿入歌や、ご機嫌なソース・ミュージック(いわゆる現実音としてバーなどのBGMとして流れる音楽)、オーケストラを用いたドラマティックな背景音楽の一切をモンティ・ノーマンが作曲。また、テーマ曲によりパンチの効いたアレンジを求めたプロデューサー・サイドの求めに応じて、後の『007』サウンドの立役者であるジョン・バリーがブラス・ロックにアレンジし自らのバンドで演奏したチューンが、タイトルバックその他を飾ったのだった。

以降『007』映画では、ボンドの活躍シーンにはバリー・アレンジを基にした「ジェームズ・ボンドのテーマ」が流れる一方、作品毎に主題歌を含むテーマ音楽が新規に用意され、様々に編曲されて各シーンを彩るという二段構えの構造となった。音楽がヒーローの雄姿に花を添え、物語を推進させ、繰り返し流れるテーマ音楽は映画を一度見ただけで耳に残ってヒットチャートを賑やかすという、まさに映画音楽の教科書といえるのが歴代『007』サウンドの流儀なのである。

また、1作毎の『007』サウンドには誕生に至るそれぞれの物語がある。初期作品に限って見ていっても、前述の通りモンティ・ノーマンが作ったテーマ音楽がジョン・バリーによるリメイクを経て完成したのを筆頭に、常にギリギリまで粘りに粘った作業が行われている。その結果、主題歌に意外なNGテイクが存在したり、歌い手が変更されながら結局使われなかったり、はたまた『007/黄金銃を持つ男』(1974年)におけるアリス・クーパーなど、楽曲の提供依頼を受けて録音まで済みながら最終的に採用されずに終わるアーティストもいたりというトピックスが多数存在する。そして、それらを収めた当時のレコードや後のCDも、全世界的なシェアを誇るシリーズならではの各国毎に異なったジャケット・デザインなどで、コレクター泣かせの状況を生み出している。

最新作はハンス・ジマー! 多彩な作曲家陣の競演という贅沢な愉しみ

初代ボンド映画のマエストロであるジョン・バリー、第18作目『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)から5作連続で登板したデヴィッド・アーノルドの二大マエストロを別格に、様々な個性で各作品の音楽を担当した多彩な作曲家・アーティストたちの競演を味わい尽くすのは、『007』シリーズのコアなファンに許された大きな愉しみである。

▶ 巨匠のお墨付き! テクノ系「次世代型『007』音楽」を確立した作曲家デヴィッド・アーノルド

そんな『007』サウンドの味わい方を、シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020年)の封切りを待ちながら徒然に綴っていけたらと思う。ビリー・アイリッシュの物憂げな主題歌がすでに配信されているが、劇中の音楽を担当するのは当代きっての売れっ子コンポーザー、ハンス・ジマーである。『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)などのヒーロー作品や、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ(2003~2011年)などの冒険映画、そしてスパイ映画ではすでに人気フランチャイズの『ミッション:インポッシブル』シリーズ第2作『M:I-2』(2000年)を手がけている。

盟友クリストファー・ノーラン監督が『女王陛下の007』(1969年)にオマージュを捧げた『インセプション』(2010年)でも音楽を担当したジマーが、伝統の『007』サウンドをいかに自家薬籠中の物にしているか、お楽しみは尽きないのである。

文:早川優

▶ プレゼントキャンペーン実施中!【特集:007の世界】

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2020年11月20日(金)より公開

『007』シリーズはCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年6月ほか放送

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

ボンドは現役を退きジャマイカで穏やかな生活を満喫していた。しかし、CIA出身の旧友フェリックス・ライターが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。
誘拐された科学者を救出するという任務は、想像以上に危険なもので、やがて、それは脅威をもたらす最新の技術を保有する黒幕を追うことになるが……。

制作年: 2020
監督:
出演: