リュック・ベッソンが幼少期に出会った伝説のフランス産コミックをついに映画化!
強く美しい女スパイの活躍を描く最新作『ANNA/アナ』(2020年6月5日公開)も話題のリュック・ベッソン監督の代表作と言えば、やはり『レオン』(1994年)か『フィフス・エレメント』(1997年)、もしくは『TAXi』(1997年)のイメージが強いだろうか。しかし、今あえてイチオシしたいのが2017年公開、フランス映画史上最大の予算を費やし製作されたSFアクション大作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』だ。
あらすじを超ざっくり説明すると――西暦2740年、銀河を股にかけて活躍する宇宙ステーションのエージェントであるヴァレリアンとローレリーヌは、ある極秘任務で向かった惑星で謎の生物を保護。ステーション内の全種族の存亡を賭けたミッションに挑む中、ある種族との交流によって醜悪な隠蔽工作を知った2人は、立場を顧みず巨大な陰謀に立ち向かうが……という感じだ。
アーティストからイケオジ陣まで、大胆かつツボを抑えたキャスティングにニヤニヤが止まらない!
デヴィッド・ボウイ「スペース・オディティ」をBGMに宇宙開発史をざっと振り返る……と思いきや、秒で異星人たちとの邂逅シーンにつなげるオープニングは感動的。もうこの時点でウネウネ系エイリアン好きにはたまらないのだが、地球上の国々がいがみ合うことなく実践的な宇宙開発を行った結果と考えると希望があるし、なにしろ異星人たちのビジュアルが最高で(以下略
主演は主人公ヴァレリアンを演じるデイン・デハーンと、相棒ローレリーヌを演じるカーラ・デルヴィーニュ。言わずもがな、地球上でトップクラスの美しいルックスを持つ若手2人の共演はそれだけでバゲットが何本でも食べられそうなパンチがある。特にデルヴィーニュはこの世のものとは思えない美しさで、ただそこに存在しているだけでじいっと魅入ってしまう不思議なパワーがある。唯一生身でこの作品の世界観に馴染める存在というか、選ばれし新人類的なオーラを放ちまくっている。
いっぽうデハーン演じるヴァレリアンは隙あらばローレリーヌにマジメに求婚するという、冴羽獠とは真逆な性格にも関わらず軽薄にしか見えないという絶妙なキャラ。その場しのぎのテキトー男のように振る舞っているが、特殊任務を任されるくらいだからエージェントとしては相当優秀なのだろう。そこに元EXOのクリス・ウーやリアーナ、さらにクライヴ・オーウェンやイーサン・ホーク、ルトガー・ハウアー(あのハービー・ハンコックも!)など、いぶし銀のベテラン勢が加わるという贅沢なキャスティングはため息モノだ。
衣装も美術もVFXもキャラ造形も最高! 観てるだけで楽しい銀河極彩色絵巻
本作の世界観は序盤の巨大異次元市場みたいなシーンに凝縮されていて、レトロフューチャーからさらに一周したようなメタ的な懐古SFビジュアルはとても新鮮だし、ハイテク和服みたいな衣装が多いのも印象的。
ビジュアルに関しては『フィフス・エレメント』はもちろん『アバター』(2009年)や『スター・ウォーズ』シリーズをミックスしたような雰囲気で、これらの作品に影響を与えたバンド・デシネ(フランス語圏の漫画)を原作としているのも納得だ。とにかく、いますぐどこかの遊園地にアトラクションを作って欲しいくらい映像的な楽しさが充満していて、シーン毎に登場する武器や乗り物、ガジェットにもいちいちグッときてしまう。
美しく不思議な生命体が暮らす超平和な惑星が一瞬で破壊される胸クソ描写は結構つらいが、SF版『千と千尋の神隠し』(2001年)みたいな異文化ごった煮感は観ているだけで楽しい。正直、これだけ魅力的な世界設定とビジュアル、キャラクターが揃っていたら特に何も起こらなくても十分に楽しいので、ミッション遂行に伴うハラハラドキドキ展開がなかったほうが、強烈なカルトとして多くのリピーターを生んだのではないかと思う。
ともあれ、エンドロールを迎えるころには冒頭のシーンを思い出し、同じ人間同士なのに長年憎しみ合っている我々が、本作に登場する人々のように未知の異星人に対して握手(=平和的な交流)を求めることができるだろうか……? と、遠い未来に想いを馳せてしまうはずだ。
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年6~7月放送
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』
西暦2740年。宇宙の平和を守る腕利きエージェント、ヴァレリアンと相棒のローレリーヌ。ある日、巨大宇宙ステーション“千の惑星の都市”が放射能に汚染されていることが判明した。2人は、全種族が死滅する危機を「10時間以内に救え」という極秘ミッションを託される。
制作年: | 2017 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年6~7月放送