古代中国を舞台にしたアクション時代劇は数あれど、チャン・イーモウ監督作『グレートウォール』(2016年)ほど時代考証を無視したトンデモSF時代劇は他にないだろう。あの色々と無茶な設定でお馴染みの人気漫画「キングダム」の世界よりも、軽く見積もって1000倍はクレイジーでカオスなハチャメチャ・アクション時代劇だ!
元EXOのルハンも活躍! 豪華キャストで贈る超大作SF時代劇
マット・デイモンとペドロ・パスカルにウィレム・デフォー、そこにアンディ・ラウとジン・ティエン、元EXOのルハンという異様に豪華なキャストがまず目を引く本作。
オープニングから「万里の長城の最大の目的は外敵の侵入を防ぐこと。その中には人に知られざる存在もいた!」という超説明的なナレーションのおかげで、作品の世界観を秒で理解できる。
しかし、本当にビックリするのはこれから。まるで聖闘士星矢のような色とりどりのキラキラ☆デコ甲冑を纏った兵士たちが、四足歩行の恐ろしいモンスターの集団と激しい戦いを繰り広げるのだが、ふと時計を見たら上映から15分も経っていない。
この出し惜しみのなさというか清々しいほどのサクサク展開が功を奏し、お話の中身の無さ……もといシンプルなストーリーを補って余りある痛快アクション時代劇に仕上がっている。
なにしろ登場するプロップが大小問わず全部デタラメという景気の良さで、史実に忠実な部分を探すほうが難しいというトンデモぶり。仕組みが不明なガトリング式の弩、釣り餌にしか見えないバンジージャンプ戦法、武器としても使える丸ノコ仕様の盾などなど、目に映るもの全てが楽しい(中でも欧米ウケを狙ったとしか思えないヌンチャク太鼓が一番のオススメ!)。
トンデモ映画ながらクオリティは高し! 手堅い展開で最後までイッキに鑑賞できる
世界を渡り歩いてるの傭兵ウィリアム(デイモン)とペロ(パスカル)は、ひょんなことから優れた武力を見せつけて中国軍に加勢することになるのだが、真の狙いは中国で発明された黒色火薬(ここは史実どおり)。
それゆえ中国人たちとひと悶着することになるのだが、最終的には期待どおり共闘することになるのでご安心を。
その過程でモンスターの意外な“弱点”が明らかになったりと、ジャンル映画としては非常に理に適った展開で最後までテンションを維持しているのは、さすがイーモウ監督といったところか。
そもそも、万里の長城はモンスターの襲来を食い止めるために建てられた! という設定からして素敵な本作。デイモンは本作に出演したことで公の場でイジられたりもしていたが、パスカルとデフォーと共に映画ファンが本作を“観る理由”として十分に貢献していると言えるだろう。メインビジュアルの強烈な印象に食わず嫌いしていた人は、ぜひ彼らに免じて鑑賞してみては。
『グレートウォール』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年6月放送