最新作『デッド・ドント・ダイ』が2020年公開予定のジム・ジャームッシュ監督による、超豪華キャストの会話劇『コーヒー&シガレッツ』(2003年)。映画の世界ではちょっとした小道具として使われることが多いコーヒーとタバコに思いっきりロマンと粋なゴタクを乗っけた、シンプルかつクールなコメディ・ドラマだ。
ジャームッシュ監督ならではの豪華キャストが全力でムダ話!
ただし本作、さあ映画を観るぞ! というテンションで挑むと肩透かしを食らうかもしれない。時代も場所もバラバラに撮影された11の短編からなる本作は全編モノクロ映像で、一見すると中身のなさそうな会話の中に、人種、文化、性格によるすれ違いなど欧米特有の文化のごった煮感が盛り盛りに盛り込まれていて、なぜか何度も見返してしまう不思議な中毒性がある。
まだギリギリ街中のカフェやダイナーでタバコが吸えていた時代、テーブルや壁紙に個性を感じさせるカフェやダイナー、オールドスクールなプロップの数々。コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のために撮った短編が基になっているそうだが、ロベルト・ベニーニ演じるイタリア系男性のエピソードなどは、特に分かりやすい“すれ違い”ギャグと言えるだろう。
たとえばダイナーで口論する黒人の双子(スパイク・リーの弟サンキと妹ジョイ)に絡んでくるのは、空気を読まないウェイターのスティーヴ・ブシェミ。エルビスの話をしたがるブシェミを双子ならではの呼吸で受け流すが、またすぐに他愛もないことで口論を始める。ジャームッシュにしか撮ることのできない、個性豊かな豪華キャストありきの、ある意味異常な映画だ。
エピソード別の絶妙なキャスティングは、いわゆるフィーチャリング的な視点で観ると面白い。なにしろトム・ウェイツ×イギー・ポップ、ビル・マーレイ×RZAとGZA(ウータン・クラン)、アルフレッド・モリナ×スティーヴ・クーガンという豪華さである(二役を演じ分けるケイト・ブランシェットやメグ&ジャック・ホワイトという例外もあるが)。しかも、それぞれが役を演じているわけではなくあくまで本人役というのがミソで、特にマーレイと共演するウータンの2人は特にノリノリなのが伝わってきて、思わずつられて笑顔になってしまう。
社会的距離が叫ばれるこの時世だからこそ、顔を突き合わせグダグダとくっちゃべる実のない時間が愛おしく感じられるはずだし、ちょっとコーヒーでも淹れて一服するか……と、非常事態にささくれがちな心を癒やしてくれるはずだ。
『コーヒー&シガレッツ』
コーヒーとタバコにまつわる11のエピソードを1作にまとめたオムニバス映画。個性豊かなミュージシャンや俳優たちが繰り広げる他愛のない、しかしひとクセあるやり取りを、ジム・ジャームッシュならではの絶妙な空気感で中毒性のある会話劇に仕上げている。
制作年: | 2003 |
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