いま観ると超深刻! 猿が支配する世界を描いたSF映画の金字塔
1968年の『猿の惑星』から始まり、その後『続・猿の惑星』(1970年)『新・猿の惑星』(1971年)『猿の惑星・征服』(1972年)『最後の猿の惑星』(1973年)と続いた映画『猿惑』シリーズ旧五部作。そして2011年の『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』から始まったリブートシリーズも大ヒットを記録し、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014年)と『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017年)の新三部作として完結した。
https://www.youtube.com/watch?v=y1BTo6_Dkjc
初代『猿の惑星』をティム・バートン監督が大胆にリメイクし(壮大にズッコケ)た問題作『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年)はシリーズに汚点を残す大事故とされている珍作だが、あれはあれで時代の徒花というか、バートンに向いてないことをやらせるべきじゃないという教訓として歴史に刻んでおくべきだろう。
もう人間なんて滅んでいいよ! 絶対に猿たちを応援してしまう新シリーズ
人種差別問題や米ソ冷戦=核戦争の恐怖をベースにしていた旧五部作に対し、新三部作はより個人単位での“警告”を発してもいる。天才猿シーザー(アンディ・サーキス)を主人公に据えたことで猿たちのドラマが深く掘り下げられ、それと比例するように人間の傲慢さや視野狭窄ぶりを容赦なく突きつけてくるのでツラい。人間よりもよっぽど感情豊かで仲間を思いやる猿たちのほうに、どうしても感情移入してしまうのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=hjFnX1Y9Wpw
人間の傲慢さとシーザーの悲哀、覚醒を描いた『創世記』、人類との全面戦争~猿の解放までを描いた『新世紀』に続く完結編『聖戦記』では、猿たちが安住の地を求め最後の戦いを繰り広げる。旧シリーズのようなSFみはないが、ベトナム戦争を意識したシーンから始まったりとシリーズのテーマは貫いていて、せめて前2作は観ておかないと話にならないので要注意。
https://www.youtube.com/watch?v=wfmxuQ2W478&feature=emb_title
なお、過去の悲劇から何も学んでいない人類の愚かさを改めて強調するなど、マット・リーヴス監督の“人間F●CK”な姿勢にもブレはないので、新シリーズのファンはご安心を。
人間は愚かだけど猿だって悩む! さらに一歩踏み込んだ深遠なテーマ
団結によって力を得た猿と、対立を繰り返し衰弱した人間。その対比がシリーズの根底にあったが、本作では恐怖心から人間側についた猿たちの葛藤もじっくり描かれており、人間との対立の火種となった武闘派猿コバを殺したシーザーは「猿は猿を殺さず」という掟も守れず、たびたびコバの幻影(&恨みつらみ)に苦しめられることになる。
そのシーザーが家族の仇として憎悪する“大佐”(ウディ・ハレルソン)は完全に『地獄の黙示録』(1979年)のカーツ大佐のような存在として描かれていて、彼なりの歪んだ正義を追求する姿はカルトの教祖のようで痛々しい。
また、シーザーたちと行動をともにする言葉を失った少女ノバは、旧シリーズに登場したノバに直結するようなキャラクターではなく、絶滅待ったなしの人類に一縷の希望を残す役割を担ってもいる。
猿vs人間という単純な対立構図にとどまらず、種の存続という根本的な部分にさらに一歩踏み込んだ『聖戦記』。とにかく終始重~い空気が充満しているが、動物園育ちの口達者なチンパンジー、バッドエイプがコメディリリーフとして効いていたりと、意外と前2作よりもどんよりしない仕上がりなので、やがて人類に取って代わるかもしれない猿たちに想いを馳せつつ鑑賞しよう。
『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年5~6月放送
https://www.youtube.com/watch?v=zi_7Vp1EdHU