イングランドを代表する若手俳優の一人、ベン・ウィショー。ロンドンの王立演劇学校出身のベンは舞台『ハムレット』で注目を集め、2000年以降様々な作品に引っ張りだこの人気俳優に。その物憂げな雰囲気と、シュッとしているのに見た目に無頓着そうなもっさりした人柄で、日本にもファンが多い。
同性愛者であることを告白しているベンは『追憶と、踊りながら』(2014年)など自身の境遇と重なるような役柄を演じさせても素晴らしいのだが、ここは最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開を2020年11月に控える『007』シリーズを中心に、メジャーな代表作を3作ご紹介したい。
ギークなQが斬新! 名物キャラを生まれ変わらせた『007』シリーズ
ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンドを演じた『007』シリーズの『スカイフォール』(2012年)から、ガジェット開発担当の“Q”を演じているベン(『カジノ・ロワイヤル』[2006年]『慰めの報酬』[2008年]には登場しない)。Qは『007』ファンにはおなじみのキャラクターだが、ベンのQはボンドが所属する英秘密情報部MI6の特殊装備課(Q課)の若手新任課長である。
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MI6崩壊、そしてボンド引退の危機を軸に超シリアスな物語が展開する『スカイフォール』は、ベンQ初登場の記念すべき作品。ボンドとの初対面はロンドンのナショナル・ギャラリー、しかも<戦艦テメレール号>の絵画の前というお洒落ぶりで、ベンQのキャラクターを巧みに表現していてニクい。そもそも過去シリーズの老Qたちと比べるとぐっと若返っているのだが、シュッと線の細いベンはまさに2010年代のボンド映画らしい重要なキャスティングと言えるだろう。
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ベンQからボンドへの初プレゼントは、掌紋センサー付きのワルサーPPKと発信機というハイテクだが地味な武器。しかも、ブツクサ言うボンドに対して「ペン型爆弾のほうが良かったですか? ああいうのはもう古いですよ」と返し、サラッとボンドをディスったりする『007』の世代交代を象徴するような存在だ。それを毛量が多く細面でカーディガン属性のベンが言うのだから、グッとこないわけはないのである。ちなみに中盤の山場過ぎ、ボンドを遠隔で誘導するシークエンスが最大の見せ場だ(オロオロしててかわいい)。
憂鬱な日、Qのちょっとしたジョークで元気を出そう。 pic.twitter.com/V2g7XDHh6W
— 映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』公式 (@007movie_JP) January 21, 2020
続く『スペクター』では、すっかりボンドと同じく組織のアウトロー側の住人になってしまったQ。
前作より見せ場も増え、序盤からボンドとのイチャイチャぶりを見せつけて悶えさせてくれる。必死でボンドの無茶をフォローする姿なんかはもうほとんどBLで、二次創作待ったなしの高萌え度。アポなしでボンドのもとを訪れて諌めようとしたのに、まんまと丸め込まれてイジケる姿は(以下略)。
🎄 007ファンの皆様に ✨
— 映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』公式 (@007movie_JP) December 25, 2019
✨ メリーQリスマス 🎄#ベン・ウィショー 演じるQが#ジェームズ・ボンド との関係を解説!
『007/#ノータイムトゥダイ』
【 特 別 映 像 解 禁 】#クリスマス#MerryChristmas pic.twitter.com/fFgUcgktPh
ベンのアンニュイぶりが炸裂した壮大なSF絵巻『クラウド アトラス』
ウォシャウスキー姉妹監督とトム・ティクヴァ監督による本作は、時代も場所も異なる全6篇の物語から成る計3時間弱のオムニバス長編。各物語を行ったり来たりするので混乱するがキャストも共通していて、物語(時代)ごとに人種も性別も関係なく様々な役柄を特殊メイクなどで演じ分けているからスゴい。ベンがクレジットされているのは5役で、中にはチョイ役での出演もあったという。
特に印象的なのは、1930年代の作曲家ロバート・フロビシャー役だ。時代と運命に翻弄される彼は、映画全編を通して流れる「クラウド アトラス六重奏」の作者でもある。若き天才作曲家のプライドと純愛を描いたフロビシャーの物語は、本作でもっとも美しく悲劇的な一遍だ。やがて壮大な運命の糸が全てつながったとき、おもわず涙があふれてくる。
フロビシャー役はベンの見た目まんまの役だが、まさか! な役柄でも驚かせてくれるので、ぜひ前情報なしで鑑賞して“ベン当て”を楽しんでほしい。ジェームズ・ダーシーとのカップリングも眼福!
モサモサ仲間だけに相性抜群!『パディントン』『パディントン2』
赤いハットと青いコートでおなじみ「くまのパディントン」を実写映画化した『パディントン』シリーズも、ベンの隠れた代表作。あの愛くるしいパディントンの声をベンが担当すると聞いたときには全く想像できなかったが、声だけでなくモーションキャプチャーによる感情豊かな表情にいたるまで、ベンのハマり役であったことを証明している。
1作目『パディントン』(2014年)は、ジャングルから大都会ロンドンにやってきたパディントンが巻き起こすちょっとした騒動と、ブラウン一家との間に生まれる“家族”としての絆、そしてパディントンを付け狙う謎の女ミリセント(ニコール・キッドマン)との戦いを描く。
続く『パディントン2』(2017年)ではルーシー叔母さんへのプレゼントを巡り、落ち目の俳優ブキャナン(ヒュー・グラント)とのドタバタ・バトルを展開。どちらもパディントンの良い意味でズレた言動で大いに笑わせつつ、最後には“愛”の力でしっかり号泣させる傑作だ。
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ベンのモソモソ気味の声によって、なにをやっても荒唐無稽だが礼儀正しいパディントンの愛くるしさと可笑しみが倍増。いわゆる“モフモフ”仕上げではなく、常に濡れ雑巾みたいな汚しの入ったキャラ造形も秀逸で、思わず抱きしめたくなること必至!
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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2020年11月20日(金)より公開
『クラウド アトラス』はNetflixほかで配信中
『パディントン』『パディントン2』はAmazon Prime Videoほかで配信中
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
ボンドは現役を退きジャマイカで穏やかな生活を満喫していた。
しかし、CIA出身の旧友フェリックス・ライターが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。
誘拐された科学者を救出するという任務は、想像以上に危険なもので、やがて、それは脅威をもたらす最新の技術を保有する黒幕を追うことになるが……。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
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2020年11月20日(金)より公開