『ロッキー4/炎の友情』はレンタルビデオ時代の映画でもある
『クリード 炎の宿敵』(以下『クリード2』)にイワン・ドラゴが再登場したことにより、『ロッキー4/炎の友情』(以下『ロッキー4』)はシリーズにおける重要度が一気に増した感がある。
冷静に見れば、本作は“不朽の名作”というよりも時代性が強い映画だ。ソ連(当時)のボクサー、ドラゴとの試合で親友アポロが命を失い、ロッキーは敵地に乗り込んでファイターとしての生きざまを貫く。いや、もういかにも80年代。1985年の作品だからレーガン政権時代だ。
試合後のロッキーの一大マイクアピールは平和を訴えているようでありつつ、よそ様の家で説教をかましているようでもある。ただ、そのシンプルすぎる構造ゆえにヒットしたのだろうし、ストレスのないドラマの盛り上がりがあるから何度でも見たくなる。そう、これは“レンタルビデオ時代”の映画でもあるのだ。
ドラマを後押しするのはアガる曲満載のサントラ
忘れてはいけないのがサントラ(サウンドトラック)盤。当時は人気アーティストが楽曲を提供する豪華サントラが花盛りで「MTV感覚」という言葉もあった。MTVで流れるプロモーションビデオのような感覚の映画というわけで、ポップな映像に軽快な編集で、意味よりもイメージで見せると説明すれば分かりやすいだろうか。
この『ロッキー4』のサントラ、劇中で流れる曲の数々も時代を代表するものだ。主題歌はサバイバーの「バーニング・ハート」。アポロ入場シーンではジェームズ・ブラウン本人が出てきて「リヴィング・イン・アメリカ」を歌う。「ハーツ・オン・ファイヤー」は何人ものプロレスラー、格闘家が入場曲に使った。「トレーニング・モンタージュ」は高田延彦が入場で使ったことで格闘技ファンにはおなじみ。要するに“アガる”曲満載であり、その曲たちに後押しされてロッキーvsドラゴのドラマが突っ走っていく。
大自然の中でトレーニングするロッキーと最新機器で鍛えるドラゴの対比をはじめ、すべてが分かりやすく、それゆえダイレクトに見ている側の心に届く。「とりあえず細かいことはいい!」そんな気持ちにさせられるのである。
『ロッキー4』の欠点は『クリード2』の面白さにつながる
ラストのロッキーの演説は、日本人から見れば「浮かれすぎじゃないのスタローン……」という感じもするのだが、かといって映画自体のエネルギーがもの凄いので見ていて冷めない。冷めそうになった分の気持ちは、そのままドラゴ=ドルフ・ラングレンに向かった。公開当時は「もの凄い新鋭が出てきたな!」と本気で思ったのだが、それからこうも苦労するとは。それもまた時代か。筋肉アクションだけでスターでいられる時間は、誰にとっても短かった。
しかし、だ。『ロッキー4』が80年代の映画でしかないからこそ、2018年の『クリード2』でドラゴが再登場するインパクトも大きい。タイムラグが際立つのだ。あまりのハッピーエンドっぷりにドラゴが不憫になったりもするが、それもまた33年後に活きる。
『ロッキー4』はシンプルに燃える映画だ。欠点もあるけれども、しかしそれは『クリード2』の面白さにつながってくる。『クリード2』を見るなら『ロッキー4』もマスト。若い方は『クリード2』を見てから『ロッキー4』へと遡っても味わいがあるはず。その場合はもう一回『クリード2』を見たくなるに決まっているのだが。
『クリード 炎の宿敵』は2019年1月11日(金)より全国ロードショー
【特集:俺たちのクリード】BANGER!!!執筆陣が全力で読み解く!アポロVS.ドラゴから、アドニスVS.ヴィクターへ。
『ロッキー4/炎の友情』
2度の戦いでロッキーと友情で結ばれていたアポロが、ソ連人ボクサー、ドラゴにリング上で殺される。この世界最強の敵と戦うべくロッキーはソ連へ遠征する──。
制作年: | 1985 |
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監督: | |
脚本: | |
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