アポロの仇・ドラゴ、許すまじ……!
「さーて、これまでのロッキーは?」とばかりに前作のハイライトを振り返る、同シリーズ恒例の親切構成で幕を開ける『ロッキー4/炎の友情』。ミスター・T演じるクラバー・ラングとの戦いに勝利しチャンピオンの座に返り咲いたロッキーが、親友アポロ(カール・ウェザース)と非公式の真剣勝負を行うラストシーンまでの強制プレイバックだ。
敵は、親善大使として来米したソ連チャンピオンのドラゴ。ドラゴはロッキーを指名するも“無敵”とうそぶくソ連側の態度にイラついたアポロが対戦を熱望し、その結果リング上で命を落としてしまう。アポロの希望を汲んでタオルを投げず見殺しにしてしまったロッキーは、親友の死に報いようとキャリアを締めくくる(つもりで)リベンジマッチに挑むのだった。
当初は3作目でシリーズを完結させる予定だったそうだが、そのままエンタメ路線で続編を制作することに。すっかりセレブとなったロッキーとアポロの浮かれた私生活を描きつつも、ドラゴを通して当時の政治情勢(米ソ冷戦)を盛り込むなど、結果的にスタイリッシュかつ骨太な作品となっている。
調子こいたアポロ、自分の入場パフォーマンスにJBを呼ぶ
引退して5年も経つアポロの復帰に難色を示していたロッキーは、ドラゴとのエキシビジョンマッチでジェームス・ブラウンをフィーチャーしたド派手な入場をかます様子を呆れたような顔で見守るばかり。実際、今あらためてこのシーンを見ると「アポロ調子乗りすぎ!」と思わざるを得ないので、さもありなんだ。さすがのドラゴも、この過剰に“レペゼンUSA”! なパフォーマンスにはイラッときたことだろう。
このとき脳裏に「殺ったろか」という考えがよぎったかどうかは不明だが、圧倒的な強さを見せつけて2ラウンドでアポロを屠ったドラゴ。前作でセコンドのミッキーさんが亡くなったときと同じく涙を隠しつつアポロの葬式に参列したロッキーは静かにアポロに語りかけ、チャンピオンベルトを捨ててでも非公式のリベンジマッチに挑むことを心に誓う。しかも時はクリスマス、極寒のロシアでだ!
当然ながら妻エイドリアンは反対するが、ロッキーは保証されたキャリアや豊かな生活よりも大事なものがあると、ファイターとしての矜持を説く。愛車ランボルギーニを駆って夜道を疾走するロッキーの脳裏によぎるのは、ライバルとして切磋琢磨してきたアポロとの日々、愛するエイドリアンとの蜜月、そしてドラゴにメッタ打ちされ息絶えるアポロと、その時タオルを投げ入れなかった自分自身……なのだが、ここにロバート・テッパーの(唯一の)ヒット曲「ノー・イージー・ウェイ・アウト」をほぼフルコーラス挿入してくるものだから、思わず「長っ!」とツッコみたくなる。
遭難寸前の雪原トレーニングが最大の見どころ!?
前作でアポロとイチャつきながらトレーニングしたカリフォルニアのビーチとは打って変わって、雪が降り積もるロシアのド田舎にインしたロッキー一行。さっそくムートンジャケットに革のブーツという完全な普段着で雪原を駆け回り、大木を切り倒しては担いで運び、それを大きなノコギリで切り、岩を持ち上げソリを牽く……という、スタローン版「北の国から」のようなトレーニングに励む。
かたやドラゴは、ソ連の科学の粋を結集した最先端テクノロジー(という設定)によるトレーニングで身体を仕上げていく。この対比が少年ジャンプ的で非常に燃えるのだが、本作はロッキーとドラゴの世紀の決戦よりもそこまでの過程、つまり根拠のはなはだ怪しいアナログトレーニングとゲーセンみたいなハイテクトレーニングを楽しむ映画と言っても過言ではない。ということで、感動と興奮の結末については各々復習して頂く方向でお願いします。
そんな本作は公開当時、ラジー賞5部門で受賞するなどコテンパンな評価を受けた。殿堂入り作品の続編の宿命ではあるが、その後33年を経てアポロの息子の物語に繋がるとは、そのとき誰が想像できただろうか? 正直、負けたドラゴのアフターケアをしなかったことが彼の逆恨み人生の原因なのでは……なんてことも考えてしまうが、そのあたりを含めシリーズ最新作『クリード 炎の宿敵』ではどのように回収してみせているのか、大いに期待しつつ今すぐ劇場へダッシュだ!
『クリード 炎の宿敵』は2019年1月11日(金)より全国ロードショー。
【特集:俺たちのクリード】BANGER!!!執筆陣が全力で読み解く!アポロVS.ドラゴから、アドニスVS.ヴィクターへ。
『ロッキー4/炎の友情』
2度の戦いでロッキーと友情で結ばれていたアポロが、ソ連人ボクサー、ドラゴにリング上で殺される。この世界最強の敵と戦うべくロッキーはソ連へ遠征する──。
制作年: | 1985 |
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監督: | |
脚本: | |
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