サミュエル・L・ジャクソン、ブルース・ウィリス、ジェームズ・マカヴォイ主演、M・ナイト・シャマラン監督最新作『ミスター・ガラス』が2019年1月18日(金)から公開!『アンブレイカブル』『スプリット』に続く三部作の最終章(たぶん)ということで注目を集めている本作を、杉山すぴ豊氏によるアメコミ目線の解説で予習復習(&トリビアも)!!
『ミスター・ガラス』は『アンブレイカブル』の続編であり『スプリット』ともリンク
『ミスター・ガラス』はシャマラン仕掛けのひとひねりあるスリラーですが、アメコミ・ヒーロー映画好きにも注目されている作品です。というのも本作は、シャマランが2000年に発表した『アンブレイカブル』の続編であり、この作品はアメコミ・ヒーローをテーマにしていたのです。
誤解のないように言っておくと『アンブレイカブル』も『ミスター・ガラス』もアメコミ原作ではありませんが、この世の中にアメコミで語られ続けてきたヒーローやヴィランのような人間が本当にいる(いたら)という設定でお話が進んでいくのです。さらにこの『ミスター・ガラス』は、2017年に公開された『スプリット』ともリンクしています。
イライジャ、ダン、ビースト……まずは過去作の設定をおさらい
『ミスター・ガラス』をより楽しむために、まず『アンブレイカブル』と『スプリット』の内容を簡単におさらいしておくと、コミック・コレクターでありビンテージ・コミックの原画をアートとして扱っている画商イライジャは高いIQの持ち主ですが、生まれながらにして骨がもろく骨折しやすい体質に生まれていました。
イライジャはコミック・ブックの世界に描かれているヒーローvsヴィラン、超人たちの戦いは“真実”であり、今の人間たちはそれを無意識のうちにコミックという形で伝承している、例えば遺跡に描かれている壁画や聖書、英雄神話のように……という考えにとりつかれています。さらにコミック・ブックの世界では、ある超人に対しそれと真逆の力を持つライバルがいることから、骨折しやすい自分とは真逆の、骨折しない=不死身の存在がどこかにいるはずだと。そして、ついにその相手を見つけました。列車脱線事故でただ一人生き残ったダンという男です。
イライジャはダンに近づき、ダンこそ超人であり人々を守るヒーローなのだと告げます。最初はイライジャを異常者扱いするダンでしたが、思い当たるフシが何度も見つかり、自分がヒーローであるという運命を受け入れます。不死身の体と怪力、そして触れただけで相手の悪行がわかる力をダンは持っていたのです。ダンは人々を守るヒーローとして生きようと決意します。そして自分の運命を導いてくれたイライジャに感謝の握手をします。その時、イライジャの本性がわかるのです。なんとあの列車事故はイライジャが仕組んだものであり、それ以外にもホテル火災や飛行機事故など様々な事件を起こしていたのです。すべては“自分とは対になる存在(結果的にはそれがダンだった)”を見つけ出すために!
イライジャは言います。「ヒーローには対抗できるヴィランがいるんだ。君がヒーローなら僕はヴィランだ。ヴィランには素敵なニックネームがあるんだよ。僕の名前はミスター・ガラスだ」。ダンの通報によりイライジャは逮捕され、サイコパスとして収監されます。それから16年。新たな恐怖が世間を震撼させます。ビーストという怪人が現れたのです。その正体はケヴィンという男ですが、なんと24人格の持ち主であり、ビーストの人格が現れると肉体まで変化し、銃弾をもはじく驚異的な身体能力を見せます。
ビーストは、親から愛されている子を“不純の子”、虐待を受けている子を“純粋な存在”と考えており、不純の子を生贄として殺してしまうのです。そして3人の女子高生を誘拐した事件でその存在が明らかになります。この事件ではただ一人、ケイシーという育ての親=叔父から性的虐待を受けていた女の子だけが助かるのです。ビーストは警察の目を盗み逃亡します。影のヒーローとして人知れず悪と戦ってきたダンは、ビーストとの戦いを予感します。……というところから『ミスター・ガラス』が始まります。
アメコミ・ヒーローは神話を求めるアメリカの無意識の欲求
このプロットからもわかるように、ダンとミスター・ガラス、ビーストが戦う、という展開になるわけですが、これが単なるヒーロー活劇に終わるはずがなく、シャマランらしい衝撃ストーリーになっていきます。さらに自分がヒーロー、ヴィランであると信じて行動することは誇大妄想でしかない、と断言する女性精神学者が現れます。
そしてダンにはヒーロー行動をサポートする彼の息子ジョン、イライジャ=ミスター・ガラスには彼の母親、ビースト=ケヴィンには彼が手を出さなかったケイシー、それぞれの物語も絡んできます。ダン役はブルース・ウィリス、イライジャ=ミスター・ガラス役はサミュエル・L・ジャクソン、ビースト=ケヴィン役はジェームズ・マカヴォイです。
この映画はタイトルからわかるとおりサミュエル・L・ジャクソン演じるミスター・ガラスが主役なわけですが、タイトル等でジェームズ・マカヴォイがフィーチャーされています。それもそのはず、ジェームズ・マカヴォイは前作『スプリット』に続いて24人格を演じて(演じ分けて)おり、一番出番が多い。しかしストーリーのカギを握るのは、やっぱりミスター・ガラスです。ミスター・ガラスの真の狙いはなんだったのか? それがわかった時に“こう来るか!”という驚きと、ある種の感動があります。
興味深いのは、なぜアメコミにヒーロー物が生まれたかというと、アメリカは若い国だから、そもそも神話や英雄伝説がない。例えばアーサー王と円卓の騎士とか、ヤマトタケルとか。その代わりの無意識の欲求を、アメコミのヒーロー物が担っているのだ、と。『アンブレイカブル』から始まるこのサーガは、そうしたアメコミ=アメリカの神話、という考え方を受け継いでいますね。シャマラン映画ファン、アメコミ・ヒーロー映画好きにとっては必見です。
最後にトリビアを。『アンブレイカブル』で幼い頃のイライジャが最初に手に取るコミックの表紙に、緑色のコスチュームのヒーローとオレンジ・イエロー色ベースの獣人のようなヴィランが戦っています。今回、ダンを象徴するカラーは緑色、ビーストは黄色なのです。つまり『アンブレイカブル』の頃からダンとビーストの戦いは予言されていた、ということになるわけです!
文:杉山すぴ豊
『ミスター・ガラス』は2019年1月18日(金)より全国ロードショー
https://www.youtube.com/watch?v=W75tPAotJFk
『ミスター・ガラス』
フィラデルフィアのある施設に3人の特殊な能力を持つ男が集められ、研究が開始された。彼らの共通点はひとつ。自分が人間を超える存在だと信じていること。不死身の肉体と悪を感知する力を持つデヴィッド、24もの人格を持つ多重人格者ケヴィン、そして、非凡なIQと生涯で94回も骨折した壊れやすい肉体を持つ〝ミスター・ガラス″…。彼らは人間を超える存在なのか?最後に明らかになる“驚愕の結末”とは?M・ナイト・シャマラン監督が『アンブレイカブル』のその後を描く、衝撃のサスペンス・スリラー。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |
2019年1月18日(金)より全国ロードショー