この記事を書いているのは、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出された真っ最中。僕たちもライブがしばらくできていないのですが、また開催できる日を心待ちにしつつ、超大型フェスを開催しようとした男のドキュメンタリー『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』を紹介します。
フェスバブルの今こそ観るべき衝撃のドキュメンタリー
近年、様々な音楽フェスティバルが世界中で行われており、日本でもかなり開催されるようになりました。なので、ある程度どんなものなのか想像できると思います。もし、あなたがイベントを主催するとしたら、まず何から取り掛かりますか?
出演者のブッキング、ライブをするための設営、不測の事態が起きてしまったときのための備えを始めとして、気が遠くなるほどの準備をして当日を迎えなくてはなりません。また、規模が大きければ大きいほどクリアしなくてはならない項目が多くなります。イベントを開催してくださっている方々は本当に、無事に当日を迎えられるようあらゆることに尽力してくださっていて、バンドをやっている自分はとても頭が上がりません。
なぜ誰も止めなかった!? 悪夢の超大型フェス、狂気の顛末
本作は、25歳の青年ビリーが彼の想像する地上最高のフェス<FYRE>を作り上げようとします。ビリーは21歳の時に高級会員制クレジットカードの会社を立ち上げ、大きな成功を収めていました。そこの顧客たちから着想を得たのか、彼は高級志向のセレブやそれに憧れる人々をターゲットに置いたフェスを開催することを計画します。ビリーは資金を集めたり、プロモーションについては過去の実績やノウハウがあったため、効果的にSNSを用いて魅力的なイメージを作り上げ、あっという間にチケットを完売させました。
しかし後々、ライブ運営に携わった人であればきっと背筋が凍るような、ものすごく怖い事実が明らかになっていきます。チケットを売ること以外はほとんどノープランな状況であり、チームにはフェスの運営経験を持つ人間が誰一人としていませんでした。そこから実際に当日を迎えてしまったのが本当に信じられないのですが、開催日に向かって悪夢的な展開が続いていきます。
あまりにもずさん! 多くの被害者を生んだテキトー運営=犯罪の貴重な記録
当然ながら被害者が沢山いるので、これは単なる失敗談ではなく、犯罪の記録です。<FYRE>の運営に関わる人たちが、なぜイベント制作のプロフェッショナルが存在するのか? ということを一切考えずに行動してしまったことや、資金力だけはあったことが悪く作用してしまった、などなど失敗の要因を挙げればキリがないですが、トップにいるビリーが“不誠実な人間”であったことが、大きく明確な理由であることが物語を通してわかっていきます。
ビリーはクレジットカード会社で成功をおさめた際に、マスメディアには“時代の寵児”として扱われ、多くの成功者たちから称賛を送られる存在だったそうです。「まさか、そんな人が無計画なはずはない」と思ってしまいませんか? 自分たちの楽しみにしていることやお金を出していることが、そういった人によってこんな形で運営されていたとしたら……と思うとやりきれないですが、こういったことって皆さんの身の回りにもありませんか?
これは、実際に時系列を追って本人の姿を収めたケースのドキュメンタリーであり、音楽ファンでなくとも一見の価値があります。おすすめです!
川辺素(ミツメ)
『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』はNetflixで独占配信中
『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』
オシャレな私有島に集う豪華な音楽フェスとして派手に売り出されたFYRE(ファイア)は、ある実業家の思い上がりとずさんな運営により未曾有の惨事に終わる。
制作年: | 2019 |
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監督: |