アサイラム映画ファンは必見! もちろん本家エイリアンとは無関係!!
巨大モンスター・パニックから青春ラブ・コメディまで、まともな出来の名作を除けば大抵の映画がそろっている製作会社、アサイラム。今回はそんなアサイラム映画の中から、『エイリアン:スカイコマンド』(2017年)という作品を紹介したい。
ちなみに原題は『Alien Convergence』。同じく2017年に公開された、リドリー・スコット監督の『エイリアン:コヴェナント(Alien: Covenant)』をあからさまに意識したタイトルだが、幸い本作には底意地の悪いアンドロイドが、これ見よがしにピーピーとフルートを吹くようなシーンは存在しないのでご安心を。
監督は、アサイラム映画ファンの皆さんにはご存じ、ロブ・パラティーナ。以前紹介した『エアポート2018』(2018年)や『オーバーロードZ』(2018年)、『世界侵略:ワシントン決戦』(2018年)などのアサイラム映画を手掛けた人物である。このラインナップの中では『エアポート2018』が比較的まともに見られる部類であるため、この手の低予算映画に興味のある方はぜひともご覧になっていただきたい。
また、本作の脚本を務めるマーク・ゴットリーブも、『PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星』(2016年)や『ジュラシック・ユニバース ダーク・キングダム』(2018年)などのアサイラム映画に参加している。しかしこうして改めて見ると、なんともひどい字面が並んだものである。
火星から謎の隕石が飛来! それは合体・変態を繰り返す恐るべきエイリアンの卵だった!!
時は現代。宇宙から三つの隕石がアメリカに飛来。カリフォルニア及びテキサスに衝突したその物質の正体は、火星をルーツとするエイリアン、通称“ラーガ”の卵であった。「孵化した幼体が、合体を繰り返すことで巨大な生体に成長していく」特徴を持つラーガは、地球侵略のため破壊活動を開始する。
一方その頃、人類は特殊なヘルメットを用い、脳波によって戦闘機を操縦する“ニューロ計画”なるプロジェクトを進めていた。パイロット・チームを指揮するエマは、各地で猛威を振るうエイリアンの存在を把握。ニューロ計画のために開発したシステムを使えば、まともに姿を追うことさえかなわないエイリアンとも渡り合えることを知った彼女は、父のベンや仲間とともに、ラーガへの反撃を試みる。
だが、変電所・製油所・原子力発電所にそれぞれ落下して生まれたラーガは、その追突場所の特性に合わせた、恐るべき力を獲得していた……。
巨大エイリアンは出色の出来!……なのにベタな人間ドラマがメイン!!
さて、この『エイリアン:スカイコマンド』だが、映像面についてはアサイラム映画基準で“まずまず”と言っていいだろう。無論、低予算早撮りのB級映画である以上それ相応にチープな質感ではあるものの、“爬虫類系の巨大なエイリアンが空を飛びながら都市を焼くシーン”などはまだ見られなくもない出来であり、“脚本または演出でカバーしてくれるのであれば十分許容範囲”程度のレベルには落ち着いていると感じた。
が、そもそも本作には肝心のエイリアンの活躍自体がどうも少ない。その代わりに全編を通して展開されるのは、「ヒロインのエマが、過去のいざこざを理由に会えばいつもケンカばかりしている父のベンと、一連の騒動を通じて和解していく」……という、“親子愛”がテーマのドラマである。それはそれでまあダメだとは言わないが、そのドラマの内容が良く言えばベッタベタ、悪く言えば薄っぺらもいいところで、これといって特筆すべき点がないのは厄介だ。
“意志の力で飛ぶ戦闘機”だとか“固有の能力を備えたエイリアン”という、“これもベタに違いないが普通に魅力的な設定”は多数見られるだけに、それをあまり活かせないまま話が終わってしまったのも、ちょっぴり残念に思う。もっとも、それには予算の都合や製作期間の事情なども含めた、仕方のない面もあるのだろうが。
という理由から、全体的にはかなり無個性なSFアクション映画であると評したい。面白そうな要素は複数抱えているにもかかわらず、面白くなる一歩手前で力尽きている、そんな印象の作品だ。
ところで本作、本編映像の一部が『世界侵略:ワシントン決戦』の劇中で、“地球を訪れたエイリアンが観ているTV映像”として流用されている。私個人としては辛口の評価で締めくくってしまったが、もしかすると種族の壁を越えて異星人に大人気の超話題作なのかもしれない。
文:知的風ハット
『エイリアン:スカイコマンド』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年4月放送
『エイリアン:スカイコマンド』
20XX年、北米大陸に飛来した3つの隕石から巨大生物が出現。猛スピードで空を飛び、エネルギー波で地上を焼き尽くす3体の怪獣によって、米国は瞬く間に全滅の危機を迎える。人類に残された唯一の希望は、特殊ヘルメットを装着して脳波で戦闘機を操る“ニューロ・ジェット・システム”だった。
制作年: | 2017 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年4月放送