巨匠コーエン兄弟が贈るオムニバス西部劇!
さまざまなジャンルの映画を撮り、しかもジャンルに捉われない味わいを残してきたコーエン兄弟の、今のところの最新作が『バスターのバラード』だ。2018年配信だから少し前になるが、意外と見てない人もいるんじゃないだろうか。いや実は筆者がそうなのだった。
本作はNetflixオリジナル作品。「そのうち見よう」のままだったり、「え、こんなのあった?」が“ネトフリあるある”じゃないですか。で、まあこういうご時世。いい機会だから見ちゃいましょう。めちゃくちゃ面白いです、そりゃもうコーエン兄弟なんで。
もはや巨匠と言ってもいいコーエン兄弟。『バスターのバラード』は2人が監督、脚本、プロデュースした西部劇であり、またオムニバスになっている。コーエン兄弟の西部劇といえば『トゥルー・グリット』(2010年)だが、あのシリアスなムードを予想していたら、いきなり裏切られた。
軽快なオムニバス形式で炸裂するコーエン節に感嘆!
オムニバスの第1話、映画のタイトルと同じ『バスターのバラード』の主人公バスターは、陽気なカウボーイ。馬の背中に乗ってギターを弾き、カメラ目線で観客に話しかけ、そうかと思うと超絶的な早撃ちと奇策で敵をぶっ飛ばす。そして、また歌う。笑いがあり暴力がありミュージカル仕立てでもあり、「これは大変なもんが始まったぞ」と身を乗り出さざるをえないわけだ。
さらに興行師(リーアム・ニーソン)や金を掘る老人(トム・ウェイツ)など、“いわゆる西部劇”とは違うタイプを主人公に、西部に生きる人々の運命が綴られていく。彼らの生き様死に様はユーモラスかつ悲劇的。無常で皮肉でままならない。人生のままならなさに翻弄される人間たちを、コーエン兄弟は甘やかしすぎず、同時に突き放しもしない。
見ていて思わず「あぁ……」とか「ん~……」と声が出る。オムニバスだから1話あたりの時間は短く、だからこそ省略がきいてキレ味が抜群だ。コーエン兄弟の“気持ちいいモヤモヤ”ともいうべき作風が好きな人には、絶対のオススメ。“さすが”の一本だ。
文:橋本宗洋
『バスターのバラード』はNetflixで独占配信中
『バスターのバラード』
荒唐無稽なものから深遠な話まで、コーエン兄弟ならではの味わいあふれるアンソロジー。アメリカ西部を駆け抜けた無法者や開拓者たちの6つの冒険物語。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |