我らがジャッキー・チェンの代名詞『ポリス・ストーリー/香港国際警察』
ジャッキー・チェン監督・主演の『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985年)は、『プロジェクトA』(1983年)と並ぶ彼の代表作で、ジャッキー自身もっとも好きな映画に挙げるアクション映画の大傑作だ。公開当時、映画はもちろん大ヒットしシリーズ化されたほか、スピンオフも作られているが、記念すべき第1作目の『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(原題『警察故事』)は、こんなストーリーである。
香港最大の麻薬組織を摘発するための作戦で、奮闘の末にボスを逮捕した若手のチェン刑事(ジャッキー・チェン)は、裁判で検察側の証人になるボスの秘書サリナ(ブリジット・リン)の護衛を任せられるが、隙を突いて逃げられてしまい、証拠不十分でボスは無罪となる。チェンはサリナを探してボスの別荘に忍び込むが、かえって同僚の刑事を殺した濡れ衣を着せられ、指名手配される。無実を信じる恋人のメイ(マギー・チャン)のサポートで、サリナを追うチェンは、ボスの経営するデパートに入っていくサリナを発見、そこにボスの一味も現れ……。
各場面に必ず見どころがあるのがジャッキー・チェン映画の魅力だが、今回は、一つの村を全部壊してしまうカーチェイス、走っているバスに傘1本でぶらさがる追っかけ、クライマックスのデパートの格闘場面で、どれもジャッキー名場面集に必ず登場するほど有名だ。特にシャンデリアに掴まってデパートの最上階から飛び降りるアクションは、『プロジェクトA』と並ぶ“映画史に残る”落下場面だろう。独特のコミカルなアクションにはジャッキーがバスター・キートンやハロルド・ロイドを始めとするスラップスティック・コメディを本当によく研究していることが見てとれる。
https://www.youtube.com/watch?v=NvLVgfaQY4M
ジャッキーの専属スタントチーム“成家班”との格闘シーンは必見!
1988年の第2作『ポリス・ストーリー2/九龍の眼』(改題『九龍の眼/クーロンズ・アイ』、原題『警察故事續集』)は、1作目の設定そのままの続編。見事、麻薬組織のボスを逮捕したチェン刑事だが、陳署長(ラム・コーホン)とチョー警部(トン・ピョウ)はデパートなどの損害を理由に交通課に左遷する。
一方、余命3か月と診断されたボスが保釈され、報復のために恋人のメイが襲われる。カッとしたチェンはボスの手下と乱闘して警察を辞職。そんなおり、デパートが爆破される事件が起こり、チェンの機転で人命に被害は出なかったものの、さらに爆破犯からの脅迫電話が来て、チェンが警察に呼び戻され、捜査に当たることになる。
見どころは、何といってもクライマックスの爆破犯との格闘と、すさまじい爆破場面だ。犯人の一人(メガネの男)に扮して素晴らしい足技を披露しているのは、ジャッキーの専属スタントチーム“成家班”のスタント・コーディネーターのベニー・ライで、彼とジャッキーの格闘場面が素晴らしい。
https://www.youtube.com/watch?v=e8S02T_v0Lo
こんな映像もう撮れない! 監督を退いたジャッキーの超絶アクションが炸裂
1992年の第3作『ポリス・ストーリー3』(原題『警察故事Ⅲ:超級警察』)は、香港から中国本土・マレーシアへとスケールアップ。前2作は監督もジャッキーだったが、本作は武術指導のスタンリー・トンが監督も務めた。
東南アジアの麻薬王チャイバ(ケネス・ツァン)を逮捕するため、香港警察を代表する“スーパーコップ”としてチェン刑事が中国本土に派遣される(香港が中国返還前のこと)。中国人民武装警察部隊のヤン部長(ミシェル・ヨー)の協力で、身分を隠してチャイバの手下パンサー(ユン・ワー)に接触、仲間になって収容所を脱走し、妹に扮したヤン部長を連れて、一味と共に船で香港へ脱出。そこから黄金の三角地帯と呼ばれる密林を経て、マレーシアの首都クアラルンプールへ。ところが運悪く、旅行に来ていた恋人のメイ(マギー・チャン)と鉢合わせし、正体がバレてしまう……。
本作の見どころは、スケールアップしたアクション。ジャッキーは命綱なしでヘリコプターにぶら下がり、ミシェルは走る列車の屋根にバイクで飛び乗る。もちろん格闘場面も素晴らしいが(ミシェルにマーシャルアーツの経験がないとは信じられない)、こんな危険なアクションシーンを演じる俳優は、もう二度と出ないし、保険会社がやらせてくれないだろう。
また、悪役パンサーを演じたユン・ワーは、ジャッキーやサモハンらと同じ中国戯劇学院の出身で、身体能力に優れ、ブルース・リーに認められて彼のご指名スタントマンとして有名になった人。カンフー映画へのオマージュを捧げたチャウ・シンチーの『カンフーハッスル』(2004年)では、豚小屋砦の大家を演じている。
https://www.youtube.com/watch?v=kRYSMcoxPQA
香港カンフー映画の殻を破って世界に飛び出していくジャッキー・チェンの脂の乗りきった30代の傑作。なぜ彼があれほど絶大な人気があったのか、納得の3本だ。
文:齋藤敦子
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』『ポリス・ストーリー2/九龍の眼』『ポリス・ストーリー3』字幕・日本語吹替版はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年4~5月放送