ジム・ジャームッシュ監督最新作『デッド・ドント・ダイ』(2020年4月3日公開)に、アダム・ドライヴァーやティルダ・スウィントンらと共に、あのビル・マーレイが出演!
1970年代に人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で才覚を発揮した後、本格的に映画俳優としてのキャリアをスタートさせたマーレイは、言わずもがなSF大作からハートフル・コメディまで大活躍するオフビート演技の代名詞のような存在だ。そんな彼も、早いもので古希目前(1950年生まれの69歳 ※2020年3月時点)! ということで(?)、マーレイの代表作の中から厳選した新旧3作+αを紹介したい。
言わずとしれたホラー・コメディの金字塔!『ゴーストバスターズ』シリーズ
特にアラフォー世代の映画ファンにとって、マーレイの代表作といえば『ゴーストバスターズ』シリーズ一択だろう。例のテーマソングも大ヒットした『ゴーストバスターズ』(1984年)『ゴーストバスターズ2』(1989年)でマーレイが演じるのは、超常現象の研究を行っている冴えない博士たちの一人、ピーター・ヴェンクマン。研究への援助を打ち切られ切羽詰まった3人(共演:盟友ダン・エイクロイドと故ハロルド・ライミス)が、研究によって培った技術で幽霊退治に乗り出すが……というドタバタSFホラー・コメディだ。
ヴェンクマン博士とスタンツ博士、スペングラー博士の3人は大学を追い出されたことをきっかけに“ゴーストバスターズ”を結成(というか起業)し、街の幽霊退治に乗り出すことに。皮肉屋のヴェンクマンはマーレイ節が炸裂した好キャラクターで、しっかりチャラいがインテリっぽさも兼ね備えた人物。メンバー中では唯一のオカルト否定派だが、口八丁でビジネスを回し隙あらば美女をナンパする、本作の実質的な主人公である。
正直いまさら内容を紹介する必要もないほどの超大ヒットシリーズだが、豪華女性キャスト版のリメイク作が誕生し、さらに31年ぶりとなる正当な続編『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の公開が2020年に控えるいまこそ観返しておきたい、その後のホラー/コメディ作品に多大な影響を与えた傑作だ。
ちょいワル爺さんと内気な少年の凸凹友情物語『ヴィンセントが教えてくれたこと』
アル中気味のちょいワル爺さんヴィンセントと、内向的な少年オリヴァーの超歳の差交流をユーモラス、というか爆笑満載で描いたハートフル・コメディが『ヴィンセントが教えてくれたこと』(2014年)だ。マーレイ演じるヴィンセントは、借金まみれで酒&ギャンブル三昧、さらにモラルの欠片もないような性格でご近所付き合いも皆無というクソジジ……もとい、初老の男性。そんな世捨て人のようなヴィンが、ひょんなことからオリヴァーを自宅に招くことになってしまったことから、なんとも不思議な交流がはじまっていく。
ヴィンの隣に引っ越してきたオリヴァーの母マギーはシングルマザーで、病院では検査技師として多忙の毎日。そこで隣人のヴィンに放課後オリヴァーの面倒を見てもらうことになる、というのが物語の始まりだ。しかし、飲む・打つ・買うは当たり前なヴィンは、まだ精通も始まっていないような子どものシッターとしては最悪の人選。ただし、オリヴァーも「彼はそこそこ年寄りだから……危険は少ないよ」とか言ってしまうこまっしゃくれたガキなので、意外と2人の相性は悪くないのであった。
転校先でイジメに遭っているところをヴィンに助けられたり、競馬で大勝ちして大喜びではしゃぎまわったり、その他たくさんの余計なことと一緒に、人生の奥深さを実践で学んでいくオリヴァー。しかし、気ままな独身貴族のように見えるヴィンにも最愛の妻がいて、認知症を患う彼女の介護施設の費用など、のっぴきならない事情を抱えていた。そんなヴィンをさらなる不幸が襲ったとき、孫ほど年の離れたオリヴァーが彼の魂を救い上げる……。
『IT/イット』シリーズ(2017~2019年)の名子役ジェイデン・マーテル(当時11、ジェイデン・リーベラーの名で活動)が演じるオリヴァーは、現在よりもさらにプリップリの可愛らしさ。その他キャストもかなり豪華で、マギー役のメリッサ・マッカーシーや、ロシア系の娼婦ダカ役のナオミ・ワッツ、さらにオリヴァーの担任役のクリス・オダウドや闇金役のテレンス・ハワードなど、実力派俳優たちがキャラの立った好演を見せてくれる。ファニーな不謹慎ネタで笑いたいとき、仕事や人間関係にどん詰まったときに見返したくなる感動作だ。
哲学的なテーマを秘めたタイムループ映画『恋はデジャ・ブ』
いまでこそ珍しくなくなった“タイムループもの”だが、その設定を知らしめた押井守監督作『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)に次ぐループものの代表作が、1993年の『恋はデジャ・ブ』だ。ちなみに本作の監督は、『ゴーストバスターズ』シリーズの共演者であり脚本家でもあったハロルド・ライミスである。
マーレイが演じるのはTV局のお天気キャスター、フィル。本作の原題でもある「Groundhog Day(グラウンドホッグ・デー)」(※実際に毎年2月2日に行われている春を占うイベント)の取材のため、クルーと共にペンシルベニア州パンクスタウニーを訪れたフィルだったが、田舎が大嫌いな彼はとにかく早く帰りたいオーラを出しまくり。ところが悪天候により足止めされ、ホテルに1泊することになってしまう。やっと翌日の朝を迎えて「帰れるぞ!」と喜んだのも束の間、なぜか町では再び2月2日のグラウンドホッグ・デーを祝っていた……。
朝の6時に時計のビープ音で目覚めると、自分以外は前日と全く同じ1日を過ごしていた。そんなループもののセオリーの中で、“生きるも地獄、死ぬも地獄”な毎日を過ごすことになるフィル。しかし、限られた1日を何度も過ごしながら様々な経験をしたことで、いわゆる賢者モードに突入する。まさに人生100周目(※予想です)状態のフィルは、もはや完全に悟りを開いた仙人の域に達したのだ。
ライミス監督いわく、本作は哲学者ニーチェが提唱した「永劫回帰」がヒントになっているそうだが、同じくニーチェの「超人思想」(の否定)にも踏み込んでいるように感じられる。ともあれ、難しく考えずとも本作が傑作であることには変わりないので、マーレイが魅せるクズ野郎から聖人への感動的なジョブチェンジを堪能してほしい。
『デッド・ドント・ダイ』と新『チャーリーズ・エンジェル』の前にこの2作!
さて、ジャームッシュ版ゾンビ映画『デッド・ドント・ダイ』の前に忘れてはいけないのが、2009年の傑作ゾンビ・コメディ『ゾンビランド』だ。同作ではゾンビ・パニック後の世界で、主人公一行が出会ったビル・マーレイ(本人役)と交流する様子が最爆笑シーンとなっていて、続編『ゾンビランド:ダブルタップ』(2019年)でも隠しネタ的にマーレイが登場する。つまりゾンビとマーレイの好相性はすでに証明済みなので、『デッド・ドント・ダイ』ではどんな活躍を見せてくれるのか? 必見である。
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また、2020年2月に公開された『チャーリーズ・エンジェル』も、マーレイとは深い縁がある。2000年公開の映画シリーズ第1作目に、エンジェルたちの指揮官ボスレー役でマーレイが出演しているのだ。撮影中に共演のルーシー・リューと大喧嘩したという“らしい”噂も有名だが、キャストを一新した新『チャーリーズ・エンジェル』ではボスレーの存在も意欲的に改変されているので、ぜひ旧『チャリエン』で予習してから鑑賞してほしい。
https://www.instagram.com/p/B1cRjeMDc5Z/
『ゴーストバスターズ』(1984年)『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)『ゾンビランド』(2009年)はNetflixで配信中
『ヴィンセントが教えてくれたこと』(2014年)はAmazon Prime Videoで配信中
(2020年3月時点)
『デッド・ドント・ダイ』は2020年6月5日(金)より全国公開
『デッド・ドント・ダイ』
アメリカの田舎町センターヴィルに、何やら恐ろしくゾッとする影が……。3人だけの警察署で働くロバートソン署長(ビル・マーレイ)とピーターソン巡査(アダム・ドライヴァー)は、ダイナーでの変死事件を皮切りに、思わぬ事態に巻き込まれていく。次々と墓場から蘇えり、町に溢れる死者たち。どうやら生前の活動に引き寄せられているようだ。日本刀を携えて救世主のごとく現れた葬儀屋のゼルダ(ティルダ・スウィントン)も加わり、時間を追うごとに増殖していくゾンビたちに立ち向かう。彼らを待ち受けるのは、希望か、それとも絶望か……!?
制作年: | 2019 |
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監督: | |
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2020年6月5日(金)より全国公開