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左翼ゲリラから大統領に⁉ 名匠クストリッツァが映し出す『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』

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ライター:#BANGER!!! 編集部
左翼ゲリラから大統領に⁉ 名匠クストリッツァが映し出す『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』
『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』© 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

あのムヒカ元大統領の素顔を名匠クストリッツァが映し出す!

ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ。「世界一ビンボーな大統領」として日本のテレビでも何度か紹介されたので、その名前を知っている人は少なくないはずだ。2012年のリオ会議(国連持続可能な開発会議)や、2016年に東京外国語大学で披露した感動的なスピーチを動画などで聞いたという人もいるだろう。ムヒカ氏は2度にわたるノーベル平和賞ノミネートでも有名だが、氏がウルグアイの大統領に就任するまでの半生を詳しく知る人は多くないかもしれない。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』©CAPITAL INTELECTUAL S.A.

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』は、2010~2015年までウルグアイの第40代大統領を務め、先述のリオ会議での感動的なスピーチによって一躍世界が注目する存在となったムヒカ氏の声を、いま改めて聞く……といった趣のドキュメンタリー映画だ。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』© 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

ムヒカ氏自身はもちろん、同国の現副大統領でもあるルシア・トポランスキー夫人やトゥパマロス(極左武装組織)時代の同胞ら近しい人々の言葉と共に、せっせと畑を耕す普段の姿も映し出される。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』©CAPITAL INTELECTUAL S.A.

そんな本作の監督は、まさかのエミール・クストリッツァ。言わずもがな、カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンすべての国際映画祭で最高賞ほか受賞経験を持つ名匠である。冒頭、カメラはクストリッツァとムヒカがマテ茶を(間接キッスで)すする姿を映し出す。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』©CAPITAL INTELECTUAL S.A.

そしてオープニングタイトルの後、1950年代までは福祉が充実した民主主義国家として“南米のスイス”と呼ばれていたこと、やがて他のラテン国家と同じく軍事政権の台頭によって反対勢力への弾圧がはじまったことなど、南米の小国ウルグアイが辿ってきた壮絶な歴史が当時の映像とともに紹介される。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』©CAPITAL INTELECTUAL S.A.

ゴリゴリの左翼ゲリラから大統領へ……ムヒカ氏が歩んだ波乱万丈の人生

ムヒカ氏といえば、財産のほとんどを寄付して質素な暮らしを選んだ無欲の政治家というイメージが強いと思うが、当時の軍事政権から“危険人物”とみなされていた活動家時代のエピソードは、耳を疑うほどの壮絶さ。いわゆる左翼ゲリラとして社会主義実現のために戦い、その闘争の過程で法を犯し10年以上投獄されたことも明かされる。当然、命を落とした同胞も少なくなかったと思われるが、好々爺のイメージを良い意味で覆す強烈なエピソードばかりだ。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』© 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

やがて大統領に就任し民主社会主義的な政策を執ったムヒカ氏は、反資本主義を掲げ2016~2020年の米大統領選の顔となったバーニー・サンダース氏との共通点が多い。もちろん両氏が歩んできた道程は全く異なるが、1%の富裕層が99%の庶民を支配する歪んだ社会の構造を変えようとする戦いが、世界中で活発化していることを示していると言えるだろう。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』© 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

そのパンクなアティテュードから映画界の異端児というイメージが強かったクストリッツァ監督も、現在65歳(2020年3月現在)。ユニークで奔放な作風が特徴だが、90年代にボスニア紛争で家族を失った経験から祖国ユーゴスラビアの歴史を激しい民族音楽に乗せて描いた『アンダーグラウンド』(1995年)によって作風の幅を広げ、カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞している。そんな監督がムヒカ氏のもとを訪れ、葉巻をくゆらせながらその言葉に耳を傾ける様子は、それだけでどことなくクストリッツァ作品の空気を帯びているから不思議だ。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』© 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

目からウロコの金言至言の連発! 愛とジョークを振りまくムヒカよ永遠に

本作ではムヒカ流“恋愛論”まで飛び出し、「どうやら(加齢と共に)愛を求める気持ちは男のほうが強くなっていく。おそらく本能的に自分を守るためだろう」「パートナーは互いにとって、緊張状態からの避難場所。愛は常に安全地帯なんだ」という言葉からは、長年連れ添う妻ルシアさんへの変わらぬ愛と信頼が伝わってくる。とはいえ、栽培している生花の話をするときも同じテンションなので、そのマイペースぶりに思わず苦笑してしまうのだが。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』© 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

とにかく、1時間強というコンパクトな上映時間の中に、目からウロコの金言至言がみっちり詰まっている本作。ムヒカ氏は、同国のモキュメンタリー映画『ハッパGoGo 大統領極秘指令』(2017年)の大麻合法化に伴うドタバタ劇に本人役で出演するなど、たいへんシャレの分かる人でもある。某国のお偉いさんたちには、ぜひムヒカ氏の爪の垢を煎じてジョッキでイッキ飲みしてほしいものだ。

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』© 2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』は2020年3月27日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

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『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』

人口345万人、人より牛が多い南米の小国ウルグアイから飛び出した、世界でいちばん貧しい大統領ホセ・ムヒカのドキュメンタリー。ムヒカを尊敬する映画監督エミール・クストリッツァが、その功績と意外すぎる過去を掘り起こす。

制作年: 2018
監督:
出演: