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10歳の姉が弟を殺害!? 韓国を震撼させた虐待事件を描く実録サスペンス『幼い依頼人』

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ライター:#BANGER!!! 編集部
10歳の姉が弟を殺害!? 韓国を震撼させた虐待事件を描く実録サスペンス『幼い依頼人』
『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

福祉機関は機能せず周囲の大人たちも見て見ぬふり……虐待から子どもたちを救え!

映画『幼い依頼人』の主人公は、ロースクールを卒業したものの、ソウルの大手法律事務所への就活が上手くいかないジョンヨプ。世話になっている姉に働いて生活費を入れるよう言われ、仕方なく地元の児童福祉館(日本でいう児童相談所のようなもの)で臨時で働き始めるが、義母に虐待を受けている10歳の少女ダビンと、その弟を担当することになる。

『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

日本と同じように、韓国でも親権者である親が「虐待していない」と言えば、児童福祉館は干渉できない。しかし、少女の話からして虐待を受けているのは明らかで、ジョンヨプは煩わしさを感じながらも姉弟と一緒に遊んだり、何かと面倒を見るのだった。

その後、大手法律事務所への採用が決まったジョンヨプは、姉弟に「戻ってくる」と嘘をついて児童福祉館を辞めソウルで働き始めるが、ついに激しい暴行を受けた弟が亡くなってしまう。少女が「暴行したのは自分」と供述したと聞いたジョンヨプは自らの行いを悔い、弁護士としての成功を捨て、全力で少女の無実を証明することを決意する。

『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

凄惨な虐待映画の様相から一転、クライム・サスペンス的展開へ

物語前半、虐待を受けた姉弟が次第に追い詰められていく様子が丁寧に描かれるが、ジョンヨプが意を決してからは一転、クライム・サスペンスの様相を帯びていく。弟の司法解剖結果、日常的に暴行を受けていた状況証拠、母親(継母)の前科……。証拠は揃っているのに、少女はどうしても真実を話すことができない。両親に精神的に支配されていたからだ。

『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

継母が睨みをきかせる法廷で、はたして少女は真実を話すことができるのか? そしてジョンヨプは、少女の証言なしでも継母の暴行を証明できる“決定的な証拠”を手に入れることができるのか……?

『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

世界が注目する韓国映画界、そのレベルの高さを実感させられる隙のなさ

韓国では児童虐待事件が多発しており、ハン・ジミン主演作『虐待の証明』(2018年)など、実際の事件を題材にした映画は少なくない。本作も、2013年に実際に起こった「漆谷(チルゴク)継母児童虐待死亡事件」がベースになっている。

日本でも2019年、児童相談所や学校が虐待を把握していたにも関わらず、両親から凄惨な虐待を受けて子どもが亡くなるという事件が相次いだ。思わず、この映画のように亡くなったのか……と考えてしまい、虐待シーンには本当に胸が痛む。だが、目を覆いたくなるようなシーンをあえてリアルに描くことで、社会問題として提起する韓国映画界の意識の高さには敬意を覚える。

『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

冒頭、子どもたちの楽しそうな笑顔が瞬時に無表情になり、次第に助けを求めることを諦め心を閉ざしていく、子役たちのリアルな演技。冷酷な表情で暴行する継母の鬼気迫る演技。果たして日本の映画界に、ここまで現実に肉薄した演技ができる俳優がどれだけいるだろうか?

『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

弁護士ジョンヨプを演じるのは、本国で大ヒットを記録した『エクストリーム・ジョブ』(2019年)などで知られるイ・ドンフィ。そして『母なる復讐』(2012年)のユソンが継母を、“ポスト キム・ヒャンギ(『無垢なる証人』[2019年]、『神と共に』シリーズ[2017~2018年]など)”と称される子役、チェ・ミョンビンがダビンを演じ、チュ・ジフン主演『私は王である!』(2011年)などのチャン・ギュソン監督がメガホンをとった本作。改めて韓国映画のアベレージの高さを実感させられる、非常に骨太な作品だ。

『幼い依頼人』© 2019 EASTDREAMSYNOPEX CO., LTD. & LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

『幼い依頼人』は2020年3月27日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にてロードショー

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『幼い依頼人』

ロースクールを卒業して出世の道を突き進むはずだったジョンヨプは何度も就職に失敗し、姉の勧めで臨時に児童福祉館に就職する。ある日、継母から虐待を受けている“ダビン”姉弟に出会うが、さほど深刻に考えていなかった彼は、また来るという言葉だけを残して去る。数日後、法律事務所に就職したジョンヨプは電話を受けダビンの鼓膜が破れたことを知る。ジョンヨプは継母からダビンを引き離そうとするが、かえって誘拐犯扱いをされ、その後弟ミンジュンの死に加え殺人の被疑者とされたダビンを見て衝撃を受ける。何もかも間違った方向に進んでしまったと感じたジョンヨプは、真実を明かすため、ついにダビンの弁護士になることを決心する。

制作年: 2019
監督:
出演: