ハーレイ・クイン待望の単独作でありバーズ・オブ・プレイの誕生譚!
『スーサイド・スクワッド』(2016年)で初登場すると人気爆発、いまやコスプレのスタンダードにもなっているDCコミックのキャラクター、ハーレイ・クインの単独主演作、その名も『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』。
ただこの映画、『スーサイド・スクワッド』の続編ないしスピンオフとしては単独主演なのだが、同時に第1作でもある。原題はメインタイトルのほうが『BIRDS OF PREY』。つまり女性キャラチーム、バーズ・オブ・プレイの“誕生編”なのだ。
監督は、アジア人女性として初めてアメコミ映画のメガホンを握ったキャシー・ヤン。脚本はクリスティーナ・ホドソン、製作&主演のマーゴット・ロビーと、主要スタッフにも女性が名を連ねる。
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容赦ないアクション満載! ジョーカーと決別したハーレイがゴッサムをサバイブする
恋人であるジョーカーと別れたハーレイが“後ろ盾なし”の中で、いかにゴッサム・シティをサバイブしていくか。それは女性の“自力”と“闘い”というテーマにもつながり、スタッフの顔ぶれを含め明確なメッセージ性を感じる。映画界にとって重要な試みであり、まずはその部分から拍手を送りたい。
正直に言うと、弱点がないわけではない。ハーレイの魅力は“可愛い狂気”にあると思うのだが、劇中の“ポップ”や“エキセントリック”の表現は、今ひとつ新鮮味に欠ける。たとえば、ハイテンションかつメタ視点のモノローグは「それデッドプールがやってたなぁ」と。時系列を入れ替えた構成も成功しているとは言い難い。
特に、ユアン・マクレガー演じるブラックマスクの紋切り型っぷりはマイナスポイント。目をひん剥いての“狂気”は悪い意味で「マンガ的」だ。劇中では不在にせよジョーカーが絡む世界の映画だけに、この部分にこそこだわってほしかった。
逆に素晴らしいのは、アクション~暴力描写。何しろ容赦がない。顔面ボコボコ、ナイフでグサグサ。暴力とは関係ないがゲロの吐きっぷりも景気いい。格闘シーンの描き分けもしっかりしている。ハーレイは(コミックで)体操選手だったという設定もあり、軽やかな動きで敵を倒す。飛びついて投げるのはメキシカン・プロレス“ルチャ・リブレ”風味だ。
BIRDS OF PREYも、80年代の刑事者に憧れている設定のレニー・モントーヤはオールドスクールなぶん殴り合いが持ち味。ブラックキャナリーは蹴り技、クロスボウの達人ハントレスは殺傷能力の高さを際立たせ、彼女たちがチームになっていく姿がハーレイ“単独”以上の見どころになっていると言っていいだろう。
宇宙規模のアメコミ映画とは異なる程よいサイズ感も魅力!
クライマックスは、遊園地での遊具を使った集団バトルからカーチェイス。言い方は変かもしれないが“程よい”スケールだ。CGを使えば何だってできる、地球滅亡級の出来事が珍しくもない今の映画だからこそ、“何をやらないか”も重要。そうした部分に、この映画のセンスが感じられる。地に足がつき、体を張っていると言えばいいか。
ちなみに上映時間は109分。これも実に程よい。ハーレイの今後はもちろん、今度はバーズ・オブ・プレイの“単独”作品もぜひお願いしたいものである。
文:橋本宗洋
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』CS映画専門チャンネル ムービープラスで2022年1月ほか放送
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
悪のカリスマ=ジョーカーと別れ、すべての束縛から放たれたハーレイ・クイン。モラルのない天真爛漫な暴れぶりが街中の悪党たちの恨みを買うなか、謎のダイヤを盗んだ少女を守るため、悪を牛耳る残忍でサイコな敵ブラックマスクとの全面対決へ! 悪VS悪のカオスな戦いを前に、ハーレイはとってきおきの切り札、クセ者だらけの最凶チームを新結成。ヴィランたちの世界で、予測不能のクレイジー・バトルが始まる!
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2020年3月20日(金)より全国ロードショー