『パラサイト』の貧乏息子ことチェ・ウシク出演！ ガチの歴史書に記された疫病モンスターが怖すぎる『ムルゲ 王朝の怪物』

朝鮮王朝映画に新風！ 古来より伝わる怪物伝説を見事に映像化!!

ここ最近、雨後の筍みたいに作られている朝鮮王朝モノだが、本作『ムルゲ 王朝の怪物』は一味違う。なにしろ500年以上の歴史を編纂した書物「朝鮮王朝実録」をベースに本格的な歴史劇をやりつつ、その書物に記された怪物伝説をメインに据えるという大胆な創作を加えたシロモノなのだ。

『ムルゲ 王朝の怪物』©2018 CINEGURU KIDARIENT & TAEWON ENTERTAINMENT.All Rights Reserved.

とはいえ、実際そのモンスターは朝鮮王朝実録に実在が仄めかされているというから驚き。16世紀の朝鮮王朝を舞台にした本作では「ムルゲ（물괴）」という言葉がズバリ“物の怪”という意味で使われていて、不可解な出来事や疫病の原因として民から恐れられている。日本で言うところの百鬼夜行（に登場する妖怪）みたいなもの、と考えれば分かりやすいだろう。

本作の主人公ユン・ギョム（キム・ミョンミン）は、かつて内禁衛将（ネグミジャン：王室直属の近衛兵の長）として国に尽くした武闘派の忠臣。しかし、領議政（ヨンイジョン：王朝の最高官職）による疫病の噂に乗じた策略にかかった王様が民草を虐殺してしまい、それがどうしても許せなかったユンは生き残りの幼女ミョンを連れて国を離れ、ド田舎で貧乏猟師として細々と暮らしていたのだった。

『ムルゲ 王朝の怪物』©2018 CINEGURU KIDARIENT & TAEWON ENTERTAINMENT.All Rights Reserved.

領議政や兵曹判書（ピョンジョパンソ：軍事を司る大臣）が無知な王を惑わし実権を握ろうと画策！ みたいな展開は朝鮮王朝モノの定番だが、日本と同じく「ええい刀の錆にしてくれるわ～！」みたいな野蛮な時代だっただけに便利な設定には違いなく、観ている方も分かりやすくて燃えるというのが正直なところ。本作でも開始早々、王様がユンのもとを訪ねてきて過ちを謝罪しつつ助けを求めるシーンは、序盤の燃えポイントである。

超絶アクションからギャグ、恋物語まで網羅した全部盛りエンターテインメント！

ただし本作、怪物モノを大マジメな顔で描くつもりは毛頭ないらしく、いわゆる“まんが昔ばなし”みたいにコミカルな描写が盛りだくさん。さすがにミョンミンのボンクラ演技は冒頭だけだが、代わりに『王になった男』（2012年）で時代劇デビューして以来ますます活躍の場を広げているキム・イングォンがファニーな存在感を発揮し、ユンが娘として育てたミョン（イ・ヘリ：Girl’s Dayの元メンバー）も今後コメディエンヌとしての活躍を期待したくなるほどの好演を見せてくれる。

『ムルゲ 王朝の怪物』©2018 CINEGURU KIDARIENT & TAEWON ENTERTAINMENT.All Rights Reserved.

また、腹にイチモツ抱えた男を演じさせたら抜群のパク・ソンウンや、遠藤憲一をイケメンにしたようなパク・ヒスン、大友克洋×岩城滉一な白髪紳士イ・ギョンヨンら王朝の面々もいちいち濃い。そして最注目は『パラサイト 半地下の家族』（2019年）でキム家の息子ギウを演じたチェ・ウシク！ 演じるホ宣伝官（ソンジョングァン）は一見すると生っ白い青年だが、実は……と、ここは観てのお楽しみ。

『ムルゲ 王朝の怪物』©2018 CINEGURU KIDARIENT & TAEWON ENTERTAINMENT.All Rights Reserved.

ここぞというところで“スキル解放！”なカタルシスが盛り込まれ、まさかのスーパーアドバイザーが爆誕する中盤から、本来ならば終盤までもったいぶりそうな展開をモリモリ見せてしまうサービス精神、めちゃくちゃシリアスな場面にもガンガン入れてくるしょうもないギャグ、さらに非血縁の親子愛から淡い恋まで、歴史劇×モンスター映画とは思えないくらいの全方位型エンターテインメントに仕上がっている本作。果たして怪物は本当に存在するのか？ 真の恐怖の実態とは……？ 色んな意味で衝撃的なラストまで目が離せない！

『ムルゲ 王朝の怪物』は2020年3月13日（金）よりシネマート新宿＆シネマート心斎橋ほか全国順次公開