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刑事バディ映画にハズレなし! 人間兵器シュワルツェネッガーのブレイク直前作『レッドブル』

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ライター:#てらさわホーク
刑事バディ映画にハズレなし! 人間兵器シュワルツェネッガーのブレイク直前作『レッドブル』
『レッドブル』
価格:DVD¥1,500+税
発売元・販売元:株式会社KADOKAWA

刑事バディ映画にハズレなし!?『ターミネーター』でブレイク直前のシュワ主演作

自殺志願のヤケクソ刑事メル・ギブソンと堅物ジジイ刑事のダニー・グローヴァーが組んだ『リーサル・ウェポン』シリーズ(1987~1998年)、アルマーニのスーツで武装したインテリ刑事スタローンと野獣刑事カート・ラッセルが顔を合わせた『デッドフォール』(1989年)。最近でいえば、体育会系チャニング・テイタムとオタク青年ジョナ・ヒルが合体した『21ジャンプ・ストリート』(2012年)。いまも昔も、いわゆるバディ・コップ映画はなかなか外れが少ないジャンルだ。

まるで異なる個性を持った刑事ふたりがアレコレいがみ合いつつ、最終的には力を合わせて事件を解決する。コンビを組む同士の性格が水と油であればあるほど、その面白味は倍増しになるものだ。各々の文化的バックグラウンドが異なればなおよい。粗野なアメリカ人のマイケル・ダグラスVS真面目一本な高倉健という『ブラック・レイン』(1989年)、または常人と生ける屍という異色タッグの『ゾンビ・コップ』(1988年)、ないしは刑事と詐欺師の珍道中を描いた『48時間』(1982年)。やはり外れがない。

そして、みんな大好きアーノルド・シュワルツェネッガー主演、1988年の『レッドブル』もまた、異文化バディ・コップ映画の歴史にその名を残す快作である。

人間兵器シュワルツェネッガーを際立たせるダメ刑事とのキャッキャ&暴力!

旧ソ連からアメリカに殴り込んだ怪物刑事イワン・ダンコ(シュワルツェネッガー)と、シカゴ警察のはみ出し刑事アート・リジック(ジェームズ・ベルーシ)が事あるごとに対立しつつ、いずれ力を合わせて事件を解決する『レッドブル』。その物語、または文化的ギャップから生じるドラマやお笑い。それらすべての点において、先述の『ブラック・レイン』や『ゾンビ・コップ』、それに地球人と宇宙人のバディもの『エイリアン・ネイション』と同じことをやっている。そういえばこれらの作品はすべて同じ1988年に公開されており、この年にいったい何があったのだろうかと考えてしまう。だがいずれも傑作であることに変わりはないので、そういう奇跡のような年があったということでご納得いただきたい。

それで『レッドブル』である。いろいろありつつ結局はお互いの体制からはみ出してしまったデカふたりが、互いの差異を乗り越えて事件を解決する……という異文化バディ刑事もののテンプレートを愚直になぞる本作。しかし、どこかで見たようなストーリーだという指摘はこのさい野暮というものだろう。結局のところ、これは犯罪都市シカゴという異郷に放り込まれた人間兵器シュワルツェネッガーと、そして彼の怪物性と堅物ぶりを際立たせるために配置されたダメ男ベルーシのじゃれ合いを堪能する映画なのであって、それが予定調和的というのはまったく野暮というものなのだ。とはいえ作品は、何も男ふたりがキャッキャする様だけを見せているだけではない。R指定の映画は昼も夜も薄汚れたシカゴの情景を全編にわたって描き出しつつ、その要所要所で思わずハッと目が覚めるような暴力の華を咲かせる。基本的には大人が観る映画なのである。

異常なハッタリとケレン味に満ちたオープニング! もっと観られるべきシュワ黄金時代の一本

『48時間』で大ヒットを飛ばしたアクションの名手、ウォルター・ヒルがここでも確実な手腕を見せている。何しろ映画は冒頭からしてケレン味しかなく、まったくもって最高というほかない。グルジア(いまはジョージアと呼ぶのだった)のサウナ。悪い顔と凄い肉体をした全裸男たちがひしめき合い、そのなかには裸の金髪美女の姿も見える。どう考えても堅気が集う場所ではないこの公衆浴場に腰巻き一丁のシュワルツェネッガーが殴り込み、いきなり裸一貫の大立ち回りを見せる。

https://twitter.com/SOleThorsen/status/846474696048570368?s=20

サウナの窓をブチ破って飛び出した銀世界で半裸のマッチョをシュワルツェネッガーがブッ飛ばした、と思ったその次の瞬間にドバーン! と大写しになるモスクワは赤の広場。プロコフィエフ作曲、ジェームズ・ホーナー編曲による男女混声合唱「革命20周年のためのカンタータ」が爆音で鳴り響き、レーニン像がバン! バン! バン! と三段ズームで迫ってくる(赤の広場でロケを許可された、本作は世界初の映画だった)。そして「アーノルド・シュワルツェネッガー」のクレジットに続いてドカンと現れる『RED HEAT(原題)』のタイトル。音楽がアホみたいな勢いを増していく……。あまりにも異常なハッタリとケレン味に満ちたこのオープニングを観られただけでも入場料以上の価値があったと、公開当時の劇場で感動に打ち震えたものだ。

その後『ターミネーター2』(1991年)で、いよいよ世界最高峰のアクション・スターの座に上り詰めることになるシュワルツェネッガー。『レッドブル』はその少し前、「オーストリアの巨木」がスター街道を驀進していた頃に生み出された作品のひとつだ。ジョン・ベルーシの弟ジェームズ・ベルーシの人を食った魅力(この人はもっと評価されるべきだ。最近では『ツイン・ピークス The Return』[2017年]でも元気な顔を出していて、実に嬉しかった)、ウォルター・ヒルの手慣れた監督ぶりも素晴らしい。実は忘れられがちな作品ではあるが、凸凹バディ・コップ映画の名作として、それにもちろんシュワルツェネッガー黄金時代の一本として、これはもっと観られるべき映画なのである。

https://www.instagram.com/p/B269cvvgXUe/

文:てらさわホーク

『レッドブル』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年3月放送

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