マイケル・B・ジョーダンが主演・製作で挑んだ社会派実録ドラマ!
マイケル・B・ジョーダンは本気でアメリカ社会を変えようとしているのかもしれない。無名の新人監督に才能を見出し、プロデューサーを買って出たSFサスペンス・アクション『KIN/キン』(2018年)ではローティーンの黒人少年を主人公に据え、自身も重要な役柄で出演したマイケル・B。そんな彼の主演最新作は、冤罪による死刑制度から黒人たちを救うべく戦っている実在の弁護士の物語『黒い司法 0%からの奇跡』だ。
マイケル・Bが演じるのは、1959年生まれの弁護士/社会正義活動家ブライアン・スティーブンソン。1980年代、ハーバード大学のロースクールで法学博士号を取得したブライアンは、死刑囚への法的支援のないアラバマ州モンゴメリーで、冤罪による死刑判決を受けた貧しい囚人たちを救うべく非営利団体<EJI(イコール・ジャスティス・イニシアチブ)>を設立する。このEJIは、これまでに140人以上の囚人を死刑執行から救ってきたという。ブライアンは、司法の不公正について<TED>でスピーチしているので、映画を観る前に予習しておくのもアリだろう。
ジェイミー・フォックスが実在の冤罪囚人をエモーショナルに好演!
『黒い司法 0%からの奇跡』は、黒人に対する非人道的な司法制度を是正してきたブライアンによる回想録「黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う」をベースにした実録ドラマだ。
まだ新人弁護士だったブライアンが黒人に対する非人道的な司法の現実に衝撃を受け、明らかに不正な証言だけで有罪にされた死刑囚ウォルター(ジェイミー・フォックス)の裁判を中心に、子どもを殺めてしまったPTSDに苦しむベトナム帰還兵ハーバート(ロブ・モーガン)や、強盗殺人の冤罪をかけられた青年アンソニー(オシェア・ジャクソン・Jr)を救うべく奮闘する姿をじっくり描いている。
何度も弁護士から匙を投げられてきたウォルターは希望を失いかけていたため、ブライアンは自分が他の弁護士とは違うということを証明し、まず彼の心を開くところから始めなければいけなかった。
やがてブライアンの誠実さに胸を打たれたウォルターは、彼と共に無罪を勝ち取る戦いに挑むことを決心する。白人の検事たちに決定的な証拠を握りつぶされそうになりながらも、何度でも立ち向かっていく強い気持ち、そしてブライアンを支える仲間エヴァ(ブリー・ラーソン)やウォルターの無罪を信じる家族の支えを受け、二人はついに最高裁に挑む。
合言葉は「ジャスティス」! 正義を信じて司法の闇に挑め!!
当時のエピソードとして興味深かったのは、米CBSの人気ドキュメンタリー番組「60 Minutes」に、係争中のウォルター自身や証人のラルフ(ティム・ブレイク・ネルソン)が出演するシーンだ。実際に検事の良心を刺激する効果があったかどうかは不明だが、かろうじてメディアが不公正の是正に機能していることが窺える小気味良いシーンだった。もちろんウォルター以外の囚人たちも全て実在の人物で、中には30年間をかけてブライアンとともに戦い、2010年代に入ってやっと無罪を勝ち取った者もいる。
また、劇中でブライアンがたびたび「ジャスティス」という言葉を口にするのも印象的だった。マイケル・Bは多くの人々をエンパワメントした革新的スーパーヒーロー映画『ブラックパンサー』(2018年)でヴィランを演じていたが、彼も映画/ドラマというフィールドから人種差別の根絶や有色人種の地位向上を成し遂げるべく、ブライアンと同じように戦っているのだ。本作を含め、今後はマイケル・Bが製作に携わる映画も要チェックだろう。
『黒い司法 0%からの奇跡』
黒人への差別が根強い1980年代アラバマ州、犯してもいない罪で死刑宣告された黒人の被告人ウォルターを助けるため、新人弁護士ブライアンは無罪を勝ち取るべく立ち上がる。しかし、仕組まれた証言、白人の陪審員たち、証人や弁護士たちへの脅迫など、数々の差別と不正がブライアンの前に立ちはだかる。果たしてブライアンは、最後の希望となり、彼らを救うことができるのか―
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |