物語の舞台となるバンカー(要塞)そのものが大きな魅力!
娯楽性が高く、しかし、その中にも社会性がある。あるいは“社会派”なのに、とにかく見ていて面白い。それが韓国映画の魅力の一つだ。
キム・ビョンウ監督による『PMC:ザ・バンカー』も、そんな“さすが韓国映画”な一本。韓国と北朝鮮、その地下に作られたバンカー(要塞)におけるPMC、すなわち私的軍事会社=傭兵部隊の闘いを描く。
ハ・ジョンウ演じるエイハブが率いる傭兵部隊に課せられたミッションは、北朝鮮の要人の護送。しかし襲撃したバンカーにいたのは、“KING”と呼ばれる、北の最高指導者だった。
そこからの展開は予測不能。大統領選をめぐるアメリカ・CIAの陰謀も絡まり、事態はどんどんシビアになっていく。「え、これどうなんの?」の連続で、観客を気持ちよく振り回してくれる。入り組んだバンカーでの銃撃戦も緊張感たっぷり。この舞台そのものが魅力の一つと言っていい。監督はバンカーについて、こんなコメントを寄せている。
「地下バンカーは、いろんな役割の施設が集まって大きな空間を作り上げているので、全体的に何かを参考にしたというよりも、その役割ごとにそれぞれの施設を参考にしました。ただ大きく考えれば、かつてあったであろう冷戦時代の産物と言えると思います。そもそも、例えば旧ソ連だとか東欧諸国とか、昔はああやって地下に大きな施設を作っていた。そういったものも参考にしました」
「また、主に劇中序盤に出てくる、私たちが<スイートルーム>と呼んでいる豪華な部屋については、ある国のトップクラスの人たち同士が地下で秘密裏に会談を行い、それが終わった後にちょっとリラックスして過ごせる空間として考えました。なので、本当に地下にあるとは思えないような、ある意味とても親しみのある資本主義的ホテルのスイートルームを思い浮かべて作りました」
「北側のバンカーについても、おそらく北朝鮮にはこんな施設があるのではないかということを、自分たちなりに考えながら作りました」
ハ・ジョンウとイ・ソンギュンによる“変則バディ・ムービー”としても秀逸!
この入り組んだバンカーを縦横無尽に動き回るのが、野球ボール大の球体偵察機。高速で床を転がり、細い通路もすり抜けるさまをPOV(主観)映像で見せることで、展開だけでなく視覚の面でも刺激的になっている。
さらに地下での息詰まる闘いから一転、終盤は“空中戦”へ。ここで主人公が迫られる選択もドラマティックだ。このクライマックス、監督としてもかなり力が入った模様。
「やはりアクションシーンは全般的に大変ではありました。銃を撃つにあたって特殊効果が当然必要になってくるし、銃も1丁や2丁ではなく大人数で同時に発射するということもあったので大変でした。最後の落下傘のシーンも技術的に難易度が高く、ワイヤーもたくさん使いながら撮ったので、確かあのシーンだけでも3~4日かかったことを覚えています」
そしてもう一つ、これも韓国映画の魅力の一つと言っていい“胸アツ展開”もバッチリ。闘いの中で出会った主人公と北朝鮮のエリート医師(『パラサイト 半地下の家族』[2019年]で富裕層の夫ドンイクを演じたイ・ソンギュン)とのスリリングなやりとりもあり、本作は“変則バディ・ムービー”としても鮮やかな出来栄えだ。
文:橋本宗洋
『PMC:ザ・バンカー』は2020年2月28日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー
『PMC:ザ・バンカー』
韓国特殊部隊の元兵士で、今は民間軍事会社(=PMC)の傭兵として作戦成功率100%を誇る隊長エイハブ(ハ・ジョンウ)は、依頼主であるCIAの密かな策謀、仲間の裏切り、国家間の政治的な駆け引きによって孤立し、バンカー内で絶体絶命の窮地に陥る。度重なる想定外の誤算に見舞われて状況は混乱し、ついにはアメリカ、北朝鮮、韓国、中国の陰謀が究極の死闘へと発展していく―。エイハブは自分を信じる部下たち、そして愛する妻のもとへ帰るため、本来は敵同士である北朝鮮のエリート医師(イ・ソンギュン)と手を組み無謀ともいえる作戦に打って出る。果たして、彼は仲間と共に生きてこの巨大バンカーから脱出することができるのか――。
制作年: | 2018 |
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出演: |
2020年2月28日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー