言い逃れ不可避! だいたい『プレデター』+ ちょっとだけ『プレデター2』
日本でも大人気のSFアクション・ホラーシリーズの最新作『ザ・プレデター』と、同じ2018年に公開されたのが、今回紹介する『プレデターvsネイビーシールズ』だ。製作会社はもはやおなじみのアサイラムなので、言わずもがな本家『プレデター』とは一切関係ない。
ちなみに、本作の監督および撮影は、以前紹介したアサイラム映画『アトランティック・リム』の監督としてご存知ジャレット・コーンである。彼はほかにも『バトル・オブ・アトランティス』や、『キング・アーサー 英雄転生』というアサイラム製モックバスター作品の監督として、どうも常習的な犯行に及んでいる。
困ったものだが、それはさておき今日はさっそく『プレデターvsネイビーシールズ』について語っていこう。
銃弾飛び交う中米のジャングルに、突如として未確認飛行物体が不時着。調査に向かった米軍部隊は、謎の襲撃を受けて消息を絶った。ネイビーシールズを率いるエイドリアン中佐と、技術兵のブルックス、そして血気盛んな隊員たちは、行方不明となったチームの捜索に乗り出す。
応援を待てという上層部の命に背いて、危険地帯を進んでいく一同。未知の殺人光線による襲撃や、ブービートラップを乗り越えた先で彼らが見たものは、圧倒的科学力で人類などたやすくねじ伏せる、世にも恐ろしい宇宙人たちだった……。
というわけでこの『プレデターvsネイビーシールズ』だが、細かい設定は違えども、作品を観た印象としては「だいたい『プレデター』(1987年)といっしょ」で、そこに「ちょっとだけ『プレデター2』(1990年)をほうふつとさせる要素を乗せた」ような作品である。
それではもうほぼ『プレデター』みたいなものではないか、と思われるかもしれないが、ほぼ『プレデター』である。
具体的には、宇宙人が手首でピポパポするガジェットを使ったり、スタイリッシュなアーマーとマスクの下からクリーチャー然とした醜い顔をのぞかせたり、『プレデター』じみた危険地帯の森や、『プレデター2』めいた狭く薄暗い通路で戦ったり……登場するものや展開に対してどうも既視感がぬぐえないのだ。個々で見た場合は偶然の一致で片付けられようが、これだけ被っているともう言い逃れはできない。
というより、本作の原題は『ALIEN PREDATOR(エイリアン・プレデター)』なので、アサイラム側も特に言い逃れはしていない、どころか完全に開き直っている。それと、ドサクサに紛れて『エイリアン』にもケンカを売っている。これはもうエイリアンvsプレデターvsアサイラムなる三つどもえの構図である。実質的には2対1の形になるが。
プレデターなのに非好戦的⁉ しかしながら猟奇的な面も
さて本作、実際には本家『プレデター』シリーズと異なる点も多く、たとえば今回登場する宇宙人は、別に人間狩りを目的とはしてはおらず、どちらかというと非好戦的な部類だという設定が存在する。それはまあ結構なことだが、その割には自分から積極的に戦いを挑んできたり、捕らえた人類を何かの内臓だか血に染まったロープだかよくわからないおぞましいもので木に縛っていたり、平和主義者どころか猟奇的犯罪者の傾向が見られる。
ただまあこういう面白おかしなツッコミどころは、個人的にはアサイラム映画の“愛嬌”として受け入れられる点でもあるので、あまり目くじらを立てる気にはならないが。
が、あまりに本家『プレデター』シリーズをうわべだけ意識しすぎたためか、序盤から中盤にかけて、宇宙人が画面外から紫色の殺人光線をピュンピュン撃つばかりで一向に姿を見せないのは問題だ。
オリジナルの『プレデター』と違って、あえて宇宙人が画面に映らないことで逆に緊張感が増している……なんてこともなく、また作品自体の進行ペースが遅め、かつ何かと台詞だけで状況を説明しがちなので、最初のうちは観ていて退屈を覚えるかもしれない。一応宇宙人は中盤に差しかかったあたりでちゃんとその姿を現すと、以降はそこそこの頻度で出てきてくれるので、それまでは辛抱するしかないだろう。
また、宇宙人と戦うネイビーシールズの隊員たちも、B級映画にはありがちなこととはいえ、あまりに行動がお粗末すぎる。例を挙げると隊員の一人が、宇宙人の存在を抜きにしても反政府勢力がウロチョロしているというジャングルで、あからさまなブービートラップである見慣れない黒い球を素手で拾ってそのままドカンと死んでいるありさまだ。
日本国内の宣伝文句では彼らを“地球最精鋭特殊部隊”などと謳っているが、この体たらくでは皮肉にしか聞こえない。たぶん外宇宙の侵略者が地球をバカにするときに使うジョークなのだろう。
本作については特筆すべきオリジナル要素も少ないので、はなから“アサイラム版プレデター”を観るつもりで視聴するといい。「あの名作がこうなるのか……」という差異を楽しむ方向で観ていけば、発言に責任は負わないが楽しめるはずだ。
文:知的風ハット
『プレデターvsネイビーシールズ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2020年2月放送
『プレデターvsネイビーシールズ』
中米ホンジュラスのジャングルに正体不明の飛行物体が墜落。調査に向かったチームが消息を絶った。仲間を救出するため、現地へと向かう米海軍特殊部隊ネイビーシールズのエイドリアン中佐。しかし、そこは“地球外最強ハンター”が様々な罠を仕掛けた、恐怖の狩猟場だった!
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2020年2月放送