珍タイトルに騙されるな! 名優サム・エリオット主演の衝撃作
その年に公開された映画の“珍タイトル”を決める投票があったら、ぜひオススメしたい作品がある。その名も『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』(2018年)。なんとも直球なタイトルだが逆に内容が想像できない、映画ファンならば絶対にスルーできない魅力的なタイトルではないだろうか。しかも原題も『THE MAN WHO KILLED HITLER AND THEN THE BIGFOOT』とほぼまんまで、トンデモ邦題とかの類ではないところもポイントが高い。
しかしてその内容は、人生を引退し犬と静かに暮らしている孤独な老人が、かつてアドルフ・ヒトラーを暗殺した伝説のナチハンターだった! そんな男がビッグフットの殲滅という極秘任務に挑む!! ……という、まさかの歴史モノとUMAモノを強引にミックスした、誰もが思わず笑顔になってしまうようなお話だった。しかも、アイデア一発で作られた自主映画みたいな安っぽさは全くなく、なんとも重厚な映像美に冒頭から見入ってしまう。
その重厚さに貢献しているのが主人公カルヴィンを演じているサム・エリオット。それ誰だっけ? と首を傾げた皆さんは、名作『ビッグ・リボウスキ』(1998年)に登場する意味深なカウボーイハットの男を思い出してほしい。最近では『アリー/スター誕生』(2018年)で第91回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、70歳を超えた今ふたたびキャリアの絶頂期に達した感のある、まさにいぶし銀の演技を見せる名優である。
ビッグフットなんて飾りです! 偉い人にはそれが分からんのです!!
ただし本作は、タイトルからハイテンションな展開を期待すると肩透かしを食うだろう。たしかに、若いチンピラにカツアゲされそうになったところでブチギレて本領発揮! その手際の良さはどう見てもカタギではない!! みたいなシーンは非常に燃える。しかし実は、カルヴィンの壮絶かつ悲しい過去を丁寧に描いた、濃厚な人間ドラマがメインなのだ。
ということで、気になるビッグフットは中盤過ぎまで登場しない。妙にもったいぶった感じを楽しめるかどうかが好き嫌いの別れ目になるかと思うが、カルヴィンの過去を知っているFBI捜査官が自宅を訪れ、いくつかの理由によって彼にビッグフットの殺害を打診するところから、ぐぐっと緊張感が高まる。そしていよいよミッション遂行段階に入ると急にSF映画みが増し、ビッグフットの殺害=未知のウィルスの蔓延を阻止=世界を救うという、規模がデカすぎる展開に雪崩込んでいく。
ドラマを重視した構成自体は良いとして、せめてビッグフット討伐パートからはスピード感をぐっと上げても良かったのではと思ったが、古希超え俳優にド派手なアクションを求めるのは酷というものだ。しかし肝心のビッグフットとのバトルも、せっかく積み上げた重厚な人間ドラマがまるで発泡スチロールみたいにスポーンと吹っ飛んでいきそうなB級ぶり。序盤にビッグフットを出さなかった理由も露呈してしまうが、そこはお土産みたいなものだと思って名優とUMAの珍バトルをまったり楽しもう。
『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』は「未体験ゾーンの映画たち2020」にて2020年2月14日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、3月29日(日)よりシネ・リーブル梅田で公開、青山シアターにて2月21日(金)よりオンライン上映開始
『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』
軍人を引退し、愛犬と共に平和な老後を送るカルヴィンのもとへFBI捜査官が訪れる。カルヴィンはかつて、あの史上最悪の指導者アドルフ・ヒトラーの暗殺も行なった伝説のナチハンターだったのだ。「人間に感染する恐ろしい病原菌を持つ、ビッグフットを殲滅してほしい。」依頼されたまさかの極秘任務に、引退後、心の奥底でくすぶっていたハンティングへの渇望が再び湧き上がる。カルヴィンは銃を背負い、ナイフを片手に史上最も過酷なミッションに挑むのだった…。
制作年: | 2018 |
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「未体験ゾーンの映画たち2020」にて2020年2月14日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、3月29日(日)よりシネ・リーブル梅田で公開、青山シアターにて2月21日(金)よりオンライン上映開始