ハイペースで新作を発表する今泉監督と破竹の勢いの田中圭
今泉力哉監督については、友達のバンド、Homecomingsがエンディング曲を担当した『愛がなんだ』(2018年)の印象が強くあったので、もう新作が公開になるのかと思い調べていたら、『アイネクライネナハトムジーク』も2019年公開でしたし、2020年1月24日(金)には『his』という最新作の公開も控えているようです。
そんな、映画って簡単に作れてしまうのかなと思わず勘違いしてしまいそうなほどハイペースで作品を発表し続けている今泉監督と、今すさまじいご活躍の田中圭さんが主演という組み合わせが、2020年1月17日(金)より公開の『mellow メロウ』です。
『愛がなんだ』は、ビデオで撮った自分の不格好な振る舞いを見る恥ずかしさのような、客観的に見ることで明瞭に認識させられてしまう拙さみたいなものが、すごくリアルに描かれています。登場人物それぞれの行動がふと自分とリンクしたときに、いたたまれないような居心地の悪さと共に、自省の念が起きる映画でもありました。
https://www.youtube.com/watch?v=oXc_JlCqQE4&feature=emb_title
『mellow メロウ』では、田中圭さん演じる花屋で働く夏目誠一の、優しいけれど自分のことには鈍感な男の視点で、同じように優しい人たちとのやりとりが描かれています。登場する人たちそれぞれの繊細な心を、まるで花のように丁寧に優しく扱う誠一の姿は見ていてとても安心でき、こういう人で溢れた世界になってほしいなと切に思いました。また、ときおり彼や彼女たちが発するセリフは、監督がスクリーン越しに話しかけているようでもあり、凛とした監督の哲学や優しさが滲むようでした。
『愛がなんだ』と『mellow メロウ』に共通するリアル
気の遣い方のズレや、ちょっとした間合いの悪さで物語が展開していく様子は、映画として俯瞰して見ることで面白く感じますが、現実世界でもこういったすれ違いは起こっているのではないでしょうか。気づかないうちに取り返しのつかないことになったり、逆に素敵なことが起きたりする、というところまで踏み出してリアルに感じさせてくるところが、『愛がなんだ』と『mellow メロウ』に共通して感じたところでした。
田中圭さんに関しては、ドラマ「おっさんずラブ」や「あなたの番です」も見たのですが、もう安心して見ていられる“田中圭という存在”を確立しているように思えて、これからもどんどん“田中圭”ありきの作品が増えるな、と考えずにはいられなかったです。
文:川辺素
『mellow』は2020年 1月17日(金)より全国公開
『mellow』
オシャレな花屋「mellow」を営む夏目誠一。独身、彼女無し。好きな花の仕事をして、穏やかに暮らしている。姪っ子のさほは、転校後、小学校に行けない日がたまにある。そんな時、姉は夏目のところにさほを預けにやってくる。
さほを連れていくこともある近所のラーメン屋。代替わりして若い女主・木帆が営んでいる。亡くなった木帆の父の仏壇に花を届けるのも夏目の仕事だ。常連客には近くの美容室の娘、中学生の宏美もいる。彼女はひそかに夏目にあこがれている。
店には様々な客がいて、丁寧に花の仕事を続ける夏目だが、ある日、常連客の人妻、麻里子に恋心を打ち明けられる。しかも、その場には彼女の夫も同席していた。
様々な人の恋模様に巻き込まれていく夏目だが、彼自身の想いは……。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2020年 1月17日(金)より全国公開