常に時代の最先端を走り続ける音楽家・坂本龍一
2020年1月17日に68歳の誕生日を迎える世界的な音楽家、“教授”こと坂本龍一。2014年には中咽頭がんを発症し、療養を余儀なくされるも克服し見事復活。その後も精力的に活動し、言わずもがな日本の音楽界を牽引し続けるトップランナーの一人だ。
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1952年東京・中野に生まれた教授は、細野晴臣、高橋幸宏と結成したイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)で日本のポップ・ミュージックに革命を起こす。飄々としながらも重厚な佇まいの細野と、常に洒脱なジェントルマンを貫く高橋の間で難しそうな顔していたかと思えば、ド派手なメイク姿で故・忌野清志郎と組んで名曲「い・け・な・いルージュマジック」を生み出し、某人気バラエティ番組にシミ付きブリーフ姿で出演するなど、かなりエキセントリックな一面も併せ持つ、控えめに言ってもブッ飛んだ人物である。
世界的な映画音楽家として知られる教授の誕生日をお祝いする意味でも、あらためて『戦場のメリークリスマス』(1983年)、『天命の城』(2017年)、『Ryuichi Sakamoto:CODA』(2017年)という3本の映画を振り返り、教授の足跡を辿ってみよう。
1、『戦場のメリークリスマス』 俳優・音楽家として飛躍
これまでに国内外の多くの映画音楽を手掛け、アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を獲得してきた教授が、初めて音楽を手掛けたのが『戦場のメリークリスマス』だ。
当初、監督の大島渚は純粋に俳優として起用する予定だったそうだが、教授は「音楽を任せてもらえるなら出演します」と条件を出し、それに監督が「はい、分かりました」と即答したという逸話が残っている。
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その後、『戦メリ』をきっかけに知り合ったベルナルド・ベルトルッチ監督と親交を深め『ラストエンペラー』(1987年)に出演。もちろん音楽も担当し、アカデミー作曲賞を受賞して一躍“世界の坂本”としてその名を轟かせる。
2、『天命の城』 初めて韓国映画の音楽を担当
教授が韓国映画で初めて音楽を担当したのが『天命の城』。清の大軍に包囲され籠城を余儀なくされた朝鮮王朝を舞台にした史実映画だ。イ・ビョンホンとキム・ユンソク演じる2人の重臣の、国の存亡をかけた葛藤が描かれる本作で、韓国の伝統音楽を取り入れた重厚なシンフォニーを作り上げた。
登場人物が常にウルウルと涙目で、どうにか生きる道はないかと模索する絶望的なシーンの数々に、教授の音楽が重々しく響く。映像と音楽の一体感を満喫できる作品だ。
3、『Ryuichi Sakamoto:CODA』 貴重なドキュメンタリー
そして3本目は、教授自身をとらえたドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto:CODA』。2012年から5年間に渡る長期取材を敢行し、1年近くに及ぶ闘病生活から、環境問題をはじめとする社会的問題への関心の高まりまでをあますことなく語った、教授を知る上ではずせない1本になっている。
なかでも印象的なのは、音楽に取り組む教授の姿勢。創作活動に没頭する姿は、ちょっと観ていて怖くなるほど変態チックだが、妙に楽しげで可笑しみを誘う。本人によって語られる過去40年の音楽活動と併せて、ファンならずとも必見のドキュメンタリーである。
『戦場のメリークリスマス』『Ryuichi Sakamoto:CODA』『天命の城』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「シリーズ:世界を魅了する日本人 映画音楽家 坂本龍一」にて2020年1月放送