軒並み大ヒット中のS・キング原作映画の中でもかなりホラーな仕上がり!
『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』『ドクター・スリープ』と、スティーヴン・キング原作のホラー小説が次々と映画化されていますが、その最新作が『ペット・セメタリー』(2019年)です。僕個人の意見としては、この3作の中では、最もホラー映画として仕上がっていました。
1983年に出版された原作小説は「ペット・セマタリー」というタイトルでした。<ペットのお墓=セメタリー>が重要な場所で、正しいスペルは“Cemetery”ですが、この物語では子どもたちが誤字(綴りをミス)った“Pet Sematary”という看板を掲げているという設定で、そのため原作小説はわざと「Pet Sematary」というタイトルになっています。
翻訳本は、そのニュアンスを活かした「ペット・セマタリー」となっていますが、1989年に映画化された時は邦題『ペット・セメタリー』で、今回のリメイク版も『ペット・セメタリー』となっています。
絶妙な原作改変によってフレッシュな恐怖の醸成に成功!
米メイン州の田舎町の森の中。子どもたちがペットを埋葬するお墓の奥には、死体を埋めると蘇る神秘の場所があった。愛する娘を失ったある父親が、そこに死体を埋める。その子は蘇るが、以前の娘とはどこかが違っていた……。
蘇った死者の恐怖というのはホラーの1パターンですが、この物語の本当の怖さとは、「愛する者を失うことの恐れ」、そして「禁断の力を借りてでも愛する者を蘇らせる」という選択を自分もするのではないか? 自分がその立場に置かれたらどうするだろう? 的な不安そのものなのです。
したがって、物語としてはじっくり心に沁みてきますが、怪物が派手に暴れまわる『IT/イット THE END』、超能力バトルの『ドクター・スリープ』に比べ、映画的にちょっと地味……と思ったら、これがしっかり怖い映画になっていました。実は原作を少し変えて、“幼い男の子”ではなく“少女である姉”が不慮の事故で亡くなり、その子が蘇るとしたのです。
前半は、娘を蘇らせるかどうか悩む父親の葛藤(これは本当に身につまされる)、後半はホラー少女が起こす、たたみかけるようなホラーになります。
S・キング原作映画は今後も続々公開予定!
『IT/イット THE END』がモンスター映画、『ドクター・スリープ』がアクション映画的に仕上がりましたが、本作はホラー映画の王道をいく展開。オチも原作や89年版と異なっています。あの結末をどう解釈するか、考えるのも楽しいでしょう。2019年に公開されたホラー映画の傑作『アス』をちょっと思い出しました。その人であって、その人でない、というモンスターですからね。
なお、スティーヴン・キング原作のホラー小説は、この先もどんどん映画・ドラマ化されていくようです。80年代に発表されたキングの小説は、80~90年代に続々と映画化されました。おそらく、それを子どものころに観た世代が、今またキングの小説を映画化しているのかもしれませんね。
個人的には、悪意が憑りついた車が恐怖を引き起こす『クリスティーン』(ジョン・カーペンター監督で1983年に一度映画化されています)を、誰かリメイクしてくれないかなと思っています。
文:杉山すぴ豊
『ペット・セメタリー』は2020年1月17日(金)より全国ロードショー
『ペット・セメタリー』
家族と田舎に引っ越した医師ルイス。
新居の裏には謎めいた動物の墓地“ペット・セメタリー”があった。
ある日、飼い猫が事故にあうと、墓地を越えた奥深くの森で猫を埋葬する。
しかし次の日、凶暴に豹変した猫が姿を現わした。
その地は、先住民が語り継ぐ秘密の森だったのだ。
そして迎えた娘エリーの誕生日、彼女は交通事故で帰らぬ人に……。
果たしてルイスの取った行動とは――。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2020年1月17日(金)より全国ロードショー