世の中には、時を経てもその価値が変わらない不朽の名作があれば、不朽のサイテー映画というものもある。いつの時代も変わらず、常にサイテーであり続けた、サイテー中のサイテー映画……。その代表格である『プラン9・フロム・アウタースペース』と『死霊の盆踊り』が、なんと「サイテー映画の大逆襲2020」として令和の時代にリバイバル上映決定!
セットも衣装も演技も撮影も何もかもが学芸会レベルのSF映画
『プラン9・フロム・アウタースペース』(1959年)は、作る映画すべてがヒドイ出来だったとして有名な「史上最低の映画監督」とも言われるエド・ウッドの監督作(ちなみにエド・ウッドについては、彼自身とその作品を愛したティム・バートンが『エド・ウッド』としてジョニー・デップ主演で1994年に映画化している)。
ある日、チープにもほどがある円盤型UFOがフラフラと地球にやってくるところから映画はスタート。そして、どういうわけか死者が復活し、人々を殺害。やがて続々とUFOが地球に飛来し米軍との戦いになるのだが、実はUFOに乗っていたのは地球人の殺し合いを止めるためにやってきた友好的な宇宙人だった。しかし、地球人は当然ビビってUFOを攻撃。そこで宇宙人たちは「死体を甦らせて自分たちの存在を認めさせようとする作戦」である<プラン9>を決行する!
セットも衣装も演技も撮影も何もかも学芸会レベルでお送りするハイパー・チープ・ムービー。とはいえ、もっと予算があれば! という次元じゃないことも明白で、物語の異常な壮大さが裏目に出まくり、はっきりと露呈するバカさ加減! もはや笑いを通り越し、まるでリストラされた会社員がヤケ酒の末に放つジョークのような哀愁すら漂っちゃっている一品だ。
例えば、目が離れちゃってるパチモンのドラえもんフィギュアに妙に惹かれちゃうとか、そんな、イビツなものを愛てしまうすべての人に観ていただきたい。
伝説的な脱力邦題がすべてを物語る“観るストリップ”
そしてもう一本、『死霊の盆踊り』(1965年)は……個人的には『プラン9・フロム・アウタースペース』を、ゆうに越える凄まじさ。こちらに至ってはストーリーもなにもなく、もはや観るストリップだ!
一応あらすじとしては、「ドライブ中に事故って見知らぬ墓場に来ちゃったカップルが体験する一晩の恐怖」と説明することは可能だけれど、墓場の広場を舞台に、ただひたすらパンイチトップレスの女幽霊がひとりづつ現れ、豊満ボディを見せびらかしながら踊るだけ。その伝説的な脱力邦題がすべてを物語っている。
しかも撮り方は凡庸で、例えばおっぱいをアップで見せたりすることは決してしない。間違ったサービス精神かなんなのか、まんべんなく全身を見せる引いた絵が延々と続き、ただただ馬鹿らしさが強調されるだけという、今なお斬新極まりなく、ある意味でとてつもない恐怖を提示している。
そんなわけで、一度観たら網膜に焼き付いて絶対に忘れられないなんとも厄介な2本。その神々しいほどのサイテー具合をスクリーンで拝むチャンスは最期かもしれない。逃す手はない!
文:市川力夫
『死霊の盆踊り』は2019年12月28日(土)より、『プラン9・フロム・アウタースペース』は2020年1月11日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
「サイテー映画の大逆襲2020」
『死霊の盆踊り』は2019年12月28日(土)より、『プラン9・フロム・アウタースペース』は2020年1月11日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開