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エルたん歌ウマ! 歌手を夢見る田舎暮らしの少女がオーディション番組に挑む!『ティーンスピリット』

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ライター:#BANGER!!! 編集部
エルたん歌ウマ! 歌手を夢見る田舎暮らしの少女がオーディション番組に挑む!『ティーンスピリット』
『ティーンスピリット』 © 2018 VIOLET DREAMS LIMTED.

エル・ファニング主演最新作『ティーンスピリット』は、ド田舎のダウナー少女が歌手を夢見て奮闘する音楽青春映画。冒頭からグライムスが流れるので期待値がグングン上がってしまうが、まさか2019年になってノー・ダウトの「Just A Girl」を複数の作品で聴くことになるとは!(※『キャプテン・マーベル』の戦闘シーンでも印象的に使用されていた)……な嬉しい驚きはさておき、ミレニアム世代の音楽ファンも必見の快作の登場である。

『ティーンスピリット』 © 2018 VIOLET DREAMS LIMTED.

エルたん演じるド田舎暮らしの少女が夢見るのはクールなシンガー

エルが演じる17歳の少女ヴァイオレットが暮らすのは、イギリス南部のワイト島。60~70年代に音楽フェスが開催され、00年代に入ってから再び現代的なフェスが催されるようになった島だ。ヴァイオレットはポーランド系移民の娘で、牧場で牛や馬を育てながら母親と二人暮らし。

https://www.instagram.com/p/B6NWkOogodw/

こんなド田舎で牛に牧草やりながら老いぼれていくなんてまっぴらごめんだ! と思ったかどうかは知らないが、タイトルにもなっている「ティーンスピリット」とは、いわゆる“スター誕生!”的なタレント発掘オーディション番組で、歌が大好きだったヴァイオレットがこのオーディションに挑むところから物語が始まる。

『ティーンスピリット』 © 2018 VIOLET DREAMS LIMTED.

観客の年齢によっては田舎で牧場なんて最高じゃん! とか思ってしまいそうだが、本作は“何者か”になりたい盛りの若者のお話である。しかも、ヴァイオレットは分かりやすく喜びを爆発させることがない、Z世代らしく終始ダウナーな少女。彼女の父親が蒸発していることも原因の一つかもしれないが、歌手の夢に反対する母親とはぶつかってばかりで、青春もののはずなのに序盤は浮かれた雰囲気がほとんどない。

https://www.instagram.com/p/B2n9JsTAJ2w/

終始ダウナーな主人公の心の支えになるのは元オペラ歌手の飲兵衛オヤジ

とはいえ本作の最大の見所は、やはりエルが披露する驚異的な歌唱力だろう。コブシの効いた美声は玄人はだしで、エルがこんなに歌ウマ女優だったことに驚かされる。もちろんヴァイオレットはその歌唱力でオーディションの予選で勝ち残り、地元で一躍有名人に。このへんはいきなり昭和な展開で面食らってしまうが、そんな平和なお話に終始するわけがなく、本戦に近づけば近づくほど緊張感が増していく。そして“参加することに意義がある!”みたいな熱血物語というわけでもなく、最初からオーディションありきで進むのが今どきの若者らしい。チームもの映画のような燃える交流もなく、完全な個人戦の孤独感が強調される。

https://www.instagram.com/p/B2n9D0kAq9B/

そこで良きアドバイザーになってくれるのが、バイト先のカラオケパブに現れる酒飲みのおっさんヴラド。オーディションのための保護者役を引き受けた代わりにマネージャーにしろと交渉してくるが、実は元プロのオペラ歌手で、エルに発声の基本なんかをみっちり教えてくれるというわけだ。このへんは『クリード』シリーズ(2015年~)とか『ウォーリアー』(2011年)みたいな、少しだけスポ根要素を感じさせるシークエンスだが、ごくさりげなく描くだけにとどめている。

https://www.instagram.com/p/B2n9NR-gsvV/

まるでホンモノのミュージックビデオみたいな歌唱シーンは必見!

オーディションの歌唱シーンはまるでミュージックビデオのような演出で、エルのファンでなくとも見応えたっぷり。華やかなバンドや派手なダンスを盛り込んだライバルたちの中で、歌ひとつで勝ち進んでいくヴァイオレットの最初の見せ場だ。オーディションの“勝負!”的な描写はほとんどなく、現代っ子らしく番組上のお決まりごともそつなくこなすヴァイオレットの淡々とした姿は逆にリアル。彼女をはじめライバルたちに極端なキャラ付けをしたり、わざとらしくドラマチックな演出がないのも好印象だ。若干名、業界のウザさを体現したようなキャラクターがいるにはいるが、特に結末には絡んでこないモブっぷりである。

『ティーンスピリット』 © 2018 VIOLET DREAMS LIMTED.

お待ちかね! とばかりにうさん臭い音楽業界人(演じるのはレベッカ・ホール!)が出てくるのは音楽映画のお約束。日本では羽振りがいいのはごく一部の業界人だけなのでどうにも違和感があるが、欧米では音楽プロダクションの一社員(30歳前後)であってもゴツめのマンションに住めるくらいの給料をもらっている人が多く、芸術に対する対価の価値観というのか、夢がある度は日本の比ではない。しかし、ヴァイオレットは田舎者らしくオイシい話(っぽいが実はエグいかもしれない契約)に、「私をそんなに評価してくれるの?」と惹かれてしまうのであった。

https://www.instagram.com/p/B5M-AusAbnk/

鑑賞後はカラオケに行きたくなるかも? エル自身が歌う2010年代ヒット曲の数々

経験やコネがある他の出場者と違って、ヴァイオレットは何も知らない裸一貫状態。泥沼の足の引っ張り合いみたいな描写こそないが、彼女の無防備さが後半のドラマを推進するようになっているため、観ているこっちはハラハラしっぱなし。製作者側の狙いどおりとは思いつつも、「エルたんを悲しませたらタダじゃおかねえぞ!」みたいな気持ちを抑えきれない。

『ティーンスピリット』 © 2018 VIOLET DREAMS LIMTED.

果たしてヴァイオレットはオーディションで優勝し夢への切符を掴むことができるのか? 気になる結末は最後のお楽しみにとっておくとして、とにかくエル自身が歌う2010年代のヒット曲の数々と、その変わらぬ瑞々しさを堪能しよう。

『ティーンスピリット』は2020年1月10日(金)より角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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『ティーンスピリット』

イギリス南部のワイト島。ポーランド移民の娘である17歳のヴァイオレット(エル・ファニング)は母親のマーラ(アグニエシュカ・グロホウスカ)と2人暮らし。父親は彼女が幼い頃に家を出て行ったまま帰って来ない。学校の友人も少なく、孤独な日々を送る彼女にとって、唯一の心のよりどころが「音楽」だ。

バイト先のパブのステージで歌うヴァイオレット。その歌声に惹かれたのは、パブで飲んでいたクロアチア出身で元オペラ歌手、ヴラド(ズラッコ・ブリッチ)だった。見知らぬ相手に声をかけられ、戸惑うヴァイオレットだが、ヴラドの言葉に少しだけ勇気づけられる。

そんなヴァイオレットが街で目にしたのは、「ティーンスピリット」の広告。昨年の優勝者がプロデビューを果たし、国際的人気を誇る公開オーディション番組だ。その予選がワイト島で開催されることになり、自分にとって大きなチャンスだと信じたヴァイオレットは参加を決意するのだった―。

制作年: 2018
監督:
出演: