カンフー界の偉人ラム・チェンインの意志を継いだ新道士が再び活躍!
自分が小学生の頃、『来来! キョンシーズ』(1987年~)というドラマがとても流行っていた。基本的にはコミカルだがなかなか怖く、主人公のテンテンに淡い恋心も抱いていた。「どうしてもあのお札が欲しい! キョンシーごっこがしたい!」とせがむ僕のしつこさに負けた兄貴が、黄色のチラシをお札サイズに切って、赤い筆ペンで“おふだ”と書いてくれたことを鮮明に覚えている。
毎週のようにテレビの中で大暴れしていたキョンシーだけでは飽き足らず、もっと強烈なキョンシーを求めてレンタルビデオを借りて観たのが、現在まで続くキョンシー映画の金字塔であり、最新作『霊幻道士X 最強妖怪キョンシー現る』(2019年)の元祖でもある、第1作目の『霊幻道士』(1985年)だった。
https://www.youtube.com/watch?v=fwrj5Bk62Q4
サモ・ハン・キンポーが製作総指揮を務めた1985年の香港映画『霊幻道士』で主人公の道士を演じたのは、その後の『霊幻道士』シリーズで道士役を務めることになるラム・チェンイン(ブルース・リーの信頼を得て数多くのカンフー映画で活躍した偉人であり、詠春拳の使い手でもある)。今回『霊幻道士X』でハオ道士を演じるチン・シュウホウは第1作目を含む複数作品に道士の弟子チュウサム役で出演しているが、1997年に亡くなったラム・チェンインの意志を継ぐ形で前作『霊幻道士Q 大蛇道士の出現!』(2018年)から道士を演じている。
『霊幻道士』1作目とリンクするかのような展開に燃える!
さて、キョンシー映画最新作『霊幻道士X』のお話は、2人のダメダメ弟子を連れてキョンシーや妖怪退治をしているハオ道士が、掘り起こされた棺の中で山猿の姿をした伝説の妖怪・山魈(さんしょう)が眠っているのを見つけるところから始まる。
そして、シリーズのお約束となっているドジな弟子の不手際や、出世を目論む警察の何やかんやがあって、ついに山魈が復活してしまった! そんな中、兄弟子のチュウサムは古来から財宝を守る妖怪・黄妖(こうよう)を訪ねるが、その美しさに心惹かれてしまう。
本作にはハオ道士の過去が垣間見えるセリフが盛り込まれていて、弟子が妖怪と恋をするシーンも第1作目とリンクしている。かつて『霊幻道士』で幽霊と恋をしてしまう弟子を演じたチン・シュウホウが、道士となった本作で新たな弟子(=かつての自分?)にどのような采配を下すのか……。
役柄として完全にリンクしているわけではないかもしれないが、シリーズのファンならばかなりグッとくる展開だろう。もし1作目を未見の人は、本作の後でも構わないのでレンタルかサブスクで鑑賞することをオススメしたい!
これくらいの塩梅がちょうどいい! 家族で楽しめるチョイ怖ホラー
ともあれ『霊幻道士』の代名詞といえばキョンシーである。作品によって微妙に変化してきてはいるが、基本的にはゾンビと吸血鬼の融合(?)みたいな存在で、亡くなった人がキョンシーになり、そのキョンシーに噛まれたor爪で殺された人がキョンシーになるという設定がほとんど。しかし本作を観ていて、あれ? キョンシーぜんぜん出てこねーじゃん! と首を傾げる人もいるだろう。副題にもある「最強妖怪キョンシー現る」は、あくまで“最強の妖怪キョンシー(=山魈)”なのであって、“最強妖怪のキョンシー”ではないのだ。……と、俺は思います! 知らんけど!!
近頃はとにかくド派手な映画が多いから、本作のアクションではお腹が満たされないという人もいるかもしれない。けれど全体的にコミカルでホロっとできて、過剰にグロいシーンもなく楽しく観られる本作は、特に家族で観るのに最適。シリーズのファンだった親世代も、本格的なホラーが苦手な子どもたちも一緒に観られる! そして、しつこいようだが鑑賞後は初代『霊幻道士』や『来来! キョンシーズ』を観て、2010年代の締めくくりに是非キョンシーの話題で盛り上がっていただきたい!!
文:ゾニー(KING BROTHERS)
『霊幻道士X 最強妖怪キョンシー現る』は「のむコレ3」にて2020年1月10日(金)よりシネマート新宿、2019年11月26日(火)よりシネマート心斎橋で公開
『霊幻道士X 最強妖怪キョンシー現る』
ハオ道士と、弟子チュウサムとモンチョイ。ある日、西山で棺が掘り起こされる。その中で眠っていたのは、山猿の姿をした伝説の妖怪【山魈(さんしょう)】であった。
しかしお札が取れてしまい、この妖怪キョンシーが暴れ出す!一方、兄弟子のチュウサムはモンチョイの婚約にあたって結納金を工面するために、
古来から財宝を守る妖怪【黄妖(こうよう)】を訪ねていた……。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2020年1月10日(金)よりシネマート新宿、2019年11月26日(火)よりシネマート心斎橋で公開