暴風、津波、稲妻、竜巻、ジェラルド・バトラー! な災害全部盛り映画
『ジオストーム』(2017年)は、設定、ストーリー、配役、オチ、そのすべてが滅茶苦茶という点において、かなり画期的な映画だと断言できる。
とんでもない自然災害が続く2019年。17カ国が協力し、気象をコントロールする画期的な衛星システム「ダッチボーイ」が作られた。そんな人類にとっての救世主「ダッチボーイ」を作ったのは、天才技術者ジェイク・ローソン。演じるのはジェラルド・バトラーだ。
なぜアナタが天才技術者役? と、いきなり信じられないほどのミスキャスト具合で面食らうし、『エンド・オブ』シリーズ(2013年~)等ほかのバトラー映画と同じく、見た目はそのまま、いつも通り上層部や政治家とは折り合いが悪く悪態をついている。そんなところにちょっとした安心感を感じてしまうバトラー中毒者の温かな視線をよそに、開始早々「ダッチボーイ」管理者を解任させられちゃうバトラー。言わんこっちゃない。しかし大丈夫。バトラーが主役なら何が起きようが、力づくで解決してくれるから。たとえ世界が滅びかけようと……。
そして3年後、待ってましたと言わんばかりに「ダッチボーイ」の調子が悪くなり、アフガニスタンでは村人さえ一瞬で凍りつくほどの寒波が起き、香港では市街地で噴火が発生。東京では巨大なヒョウが降り、ほかにも世界各地で暴風、津波、稲妻、竜巻と、ありとあらゆる異常気象が様々な地域で発生。ヤケクソ気味な災害全部盛りだ! そして、ついに立ち上がるバトラー!
この、あまりにもトゥーマッチなやり口に呆れていたらまだまだ全然序の口で、『ゼロ・グラビティ』(2013年)に真っ向から挑む宇宙空間でのてんやわんや、汚い政治家の陰謀、その果てに銃撃戦からカーチェイスまで、映画で起きたら楽しげな出来事を何もかも取り揃えるという気の狂ったサービス精神を見せつけてくれる!
近年稀に見るカオスっぷりでカルト的支持を得ている稀有な映画!
そんな本作だが、テスト試写での反応が悪すぎて莫大な資金を投入して再撮したり、役者の降板劇があったりと、結構な難産だったという。さらに、公開されてみれば酷評の嵐と踏んだり蹴ったりにもほどがあるのだが、近年稀に見るカオスっぷりでカルト的支持を得ているのも事実。ダメ映画にありがちな「ダラダラと突っ込みながら観る」なんて余裕も与えてくれないほど観る者を唖然とさせてくれるので、本国では「映画そのものが災害」なんて言われている未曾有の1本なのだ。
こんなとんでもない映画を作ったのは、ディーン・デヴリンなる人物。父親がドン・デブリンという映画監督で、父の撮った『マイ・ボディガード』(1980年)で俳優としてデビューし、その後ローランド・エメリッヒ監督、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ドルフ・ラングレンの『ユニバーサル・ソルジャー』(1992年)で、どういうわけか脚本家デビュー。そして製作・脚本で『インデペンデンス・デイ』(1996年)やエメリッヒ版『GODZILLA』(1998年)を手掛けるなど、筋金入りの地球クラッシャーとして名を馳せ、本作で満を辞して監督デビューした。頼む、もっとやってくれ!
文:市川力夫
『ジオストーム』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2019年12月、2020年1月放送
『ジオストーム』
度重なる自然災害から地球と人類を救うため、天候を制御する気象宇宙ステーションが開発され、災害は過去のものとなった。だがある日、ウイルス感染した衛星が暴走を開始!リオ・デ・ジャネイロが寒波に、香港は地割れ、ドバイは洪水に・・・空前絶後の大災害に科学技術者ジェイクたちが立ち向かう。
制作年: | 2017 |
---|---|
監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2019年12月、2020年1月放送