低地に住む貧乏一家が高台に住む富豪一家に文字通り寄生する!
ポン・ジュノ監督は1969年生まれ韓国出身。00年の長編デビュー作『ほえる犬は噛まない』以降、韓国内外で大ヒットを記録した『殺人の追憶』(2003年)や多くの映画賞を獲得した『母なる証明』(2009年)などの作品を発表し、韓国を代表する若き巨匠として不動の地位を確立しました。そんなポン・ジュノ監督の最新作が『パラサイト 半地下の家族』です。
タイトルだけでは一体どんな映画なのか見当もつかなかったのですが、本作を簡単に説明すると、ある貧しい一家が富豪一家と関わりを持ち、長男が家庭教師となり巧みに家庭に入り込んでいく、というお話。舞台になっているのは現在の韓国で、貧乏なキム・ギテク(ソン・ガンホ)一家が住む埃っぽい半地下の家から物語が始まります。
ギテク家は街の低地に位置していて、その一帯が貧困地域であることが容易に想像できます。また対照的に、ギテク家のターゲットとなるIT社長パク・ドンイク一家が住む豪邸があるのは、坂を上った高級住宅街。物語が進んでいくうちに、この高低差が大きな意味を帯びてきます。
その常識、本当に信じて大丈夫? 所々に散りばめられた鋭い風刺
物語はキム家の視点で描かれていて、書類さえあれば簡単に内容を信じ込んでしまったり、知人の紹介する人間であればすぐ信頼してしまうなど、ドンイク家の富豪であるがゆえの無関心さからくる隙を突いていきます。
そのため初めはドンイク家が愚かに見えるのですが、冷静に考えると、我々が日常生活で疑うことなく信じているものに疑問符を投げかけるような、所々に散りばめられた鋭い風刺が大きな見どころの一つになっていました。
また、2つの家庭の格差はそのまま世界中で拡がる格差の縮図のようであり、ときおり今の日本で起きていることとも類似していて、背筋が寒くなりました。そんなリアルな描写の数々に惹き込まれていると、物語はなにやらおかしな方向に向かっていきます。これが本当にヘンテコな展開で目が離せないので、ぜひ映画館で確認して頂きたいです。
監督はデビュー以来、一貫して貧富の差をテーマに映画を作っているようで、それは『殺人の追憶』を観た時も確かに感じました。そんな中で、『パラサイト 半地下の家族』はエンターテイメント作品としてのベクトルも大きい。悲惨なのにコミカル、豊かなのにどこか空虚、シリアスなのにどこか間抜けだったりと、相反するような瞬間がいくつものシーンで描かれていて圧巻でした。この映画について、早く色んな人と話したいなという気持ちになっています! おすすめです。
文:川辺素
『パラサイト 半地下の家族』はTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて2019年12月27日(金)~2020年1月9日(木)先行公開、2020年1月10日(金)より公開
『パラサイト 半地下の家族』
過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン… しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。
“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった——。
パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて2019年12月27日(金)~2020年1月9日(木)先行公開、2019年1月10日(金)より公開