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「カンフーマスターに、俺はなる!!」ブルース・リー愛が満載!ぶっ飛びインド映画『燃えよスーリヤ!!』

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ライター:#松岡環
「カンフーマスターに、俺はなる!!」ブルース・リー愛が満載!ぶっ飛びインド映画『燃えよスーリヤ!!』
『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

令和元年の締めくくりにモーレツぶっ飛びインド映画が日本公開!

2019年は、インド映画の公開作が続いた年だった。その最後を飾る『燃えよスーリヤ!!』(2018年)は、一風変わった映画だ。いや、一風どころか、百風ぐらい変わった「ぶっ飛び」インド映画である。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

「ぶっ飛び物語の裏には、常に判断ミスがある」という、主人公スーリヤ(アビマニュ・ダサーニー)のモノローグから始まる本作は、ジミー警備保障のワル警備員どもを相手に壮絶な戦いを展開するスーリヤが、「死域に入った」(わからない人は北方謙三作「水滸伝」を読もう!)時に自分のユニークな半生を回想する物語だ。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

お話は母親の胎内での記憶から始まって、産院からスーリヤを抱いた母親が夫や自分の父、つまりスーリヤのじいちゃん(マヘーシュ・マンジュレーカル)と共に帰宅しようとしたら、ネックレス泥棒に襲われて命を落としたことや、その後スーリヤが先天性無痛症とわかり、じいちゃんが「痛み」を教えるために苦労したことなどが語られていく。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

無痛症のスーリヤは小学校でイジメに遭い、同級生の女の子スプリ(ラーディカー・マダン)に助けられるが、やがてあらゆる武術アクション映画を見て、自らを鍛え始める。特に、片足のファイター・空手マニ(グルシャン・デーヴァイヤー)の「百人組手」ビデオに大きな影響を受けるのだが、成長したスーリヤは一時疎遠になっていたスプリと再会し、スプリの師となっていた空手マン・マニと、マニの双子の兄弟ジミー(グルシャン・デーヴァイヤーの2役)との争いに巻き込まれていく……。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

こうストーリーを書いていくと一見まともそうなのだが、あらゆるシーンにひねりが加えられていて、「何じゃこりゃ?」の連発となる。夢オチや妄想シーンは当たり前、現実が描かれているのに「そんなアホな!」なシーンも多く、またそれがいずれも上手にデザインされていて味がある。脚本も担当したヴァーサン・バーラー監督の異才、畏るべし。こうなってはもう、『燃えよドラゴン』(1973年)のブルース・リーの至言「Don’t think, feeeeel!(考えるな、感じるんだ!)」を心に刻み、出てくるシチュエーションを楽しむしかないが、実はヴァーサン・バーラー監督が武術オタクというところから本作は始まったようだ。

ブルース・リーやジャッキー作品を独自解釈した次世代インド・アクション映画!

監督自身、空手の緑帯を所持しているとのことで、有段者、つまり黒帯になる前の「級」を持つ有級者の中では、中くらいの強さらしい。当然、武術アクション映画も山と見まくっていて、本作を作るに当たって参考にしたのは、「ブルース・リー」「ジャッキー・チェン」「サニー千葉」「ストリート・ファイター」シリーズなどだという。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

そして本作の出演者には、『ドラゴン危機一発』(1971年)、『ドラゴン怒りの鉄拳』(1971年)、『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』(1972年)、『燃えよドラゴン』(1973年)、『プロジェクトA』(1983年)、『サンダーアーム/龍兄虎弟』(1986年)、『プロジェクト・イーグル』(1991年)等を“見ておくべき作品”に指定し、事前学習させたそうだ。このあたりでもう、十風ぐらい変わったインド映画ができる素地が完成している。香港の武術アクション映画好きの皆さんには、スーリヤがチューブで水を飲むのは『プロジェクト・イーグル』からのアイディアだろうとか、いろんなツッコミができるはずだ。

https://www.youtube.com/watch?v=P2sermxXKDk

さらに、主演のアビマニュ・ダサーニーには、約8ヶ月の特訓を課したという。彼は身長173㎝だが、足がすごく長くて回し蹴りを決める姿が美しい。ベビーフェイスと言ってもいいハンサム顔で、これは美人女優の母バーギャシュリー譲りのようだ。イノセントな表情は素っ頓狂な青年スーリヤにピッタリで、「痛みを知らずに悪を討つ!」というキャッチコピーは、「カワイイ顔して悪を蹴る!」に変えたいぐらいである。映画初出演なのだが、本作1本で見事一人前の俳優に育ってしまった感がある。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

彼のほか、これが2作目となるラーディカー・マダンも特訓を受けたのか、スカーフを使ったアクションシーンが光っており、本作を足がかりに人気女優への道を歩み始めた。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

もう一人、以前からクセ者俳優として存在感を示していたグルシャン・デーヴァイヤーの演技も見ものだ。ヒーローのくせして気弱な空手マン・マニと、警備会社を営むがその実体は裏社会のボスというジミーとを、外見もまったく変えて演じ分けて見せた彼の達者な演技が、本作の風変わり度を押し上げている。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

まだまだ、この映画の一風変わったところはいっぱいあるのだが、書き出すとキリがないので、ぜひご自分の目で確かめてほしい。なぜにここでこの歌が? という音楽の使い方や、随所に挿入されるユル~い笑いのツボなども、従来のインド映画とは違った面白さを醸し出している。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

「♪ラッパン・ラッピ・ラップ、ウレー・ウレー・チャレー・チャレー(ぶっ飛ばしていこう)」と主題歌で歌っているように、観客にも「ぶっ飛び」が要求される快作&怪作だ。

『燃えよスーリヤ!!』©2019 RSVP, a division of Unilazer Ventures Private Limited

第43回トロント国際映画祭<ミッドナイト・マッドネス部門>で観客を熱狂させ、観客賞を受賞した本作。見ると水が飲みたくなるので、鑑賞時には水分補給も忘れずにどうぞ。

文:松岡環

『燃えよスーリヤ!!』は2019年12月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

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『燃えよスーリヤ!!』

スーリヤ(アビマニュ・ダサーニー)は生まれながらにして痛みを感じなかったため、いじめっ子たちの標的にされていた。しかし、幼なじみの女の子スプリ(ラーディカー・マダン)だけは彼を守ってくれていた。そんなスーリヤを見かねて祖父はたくさんのアクション映画のVHSを渡すと、スーリヤはその中で空手マンと呼ばれる片足の男マニ(グルシャン・デーヴァイヤー)が魅せる“百人組手”の映像に衝撃を受ける。スーリヤの夢は決まった。「カンフーマスターに、俺はなる!!」

 成長したスーリヤは、特訓を積んだカンフーと痛み知らずの身体を武器に、街の悪党たちと日々戦っていた。ある日、チンピラたちに誘拐されそうになる女性を助けようとしたところ現れたのは、幼い日に離ればなれになってしまったスプリだった。彼女は空手マンに弟子入りし、道場を経営していた。運命に導かれるように伝説の空手マン・マニに会えたスーリヤ。しかし、彼から双子の弟ジミー(グルシャン・デーヴァイヤー)が街を牛耳る悪党になってしまい、大切な師匠の形見を奪われ、スプリも危険にさらされていると聞く。スーリヤは師匠と仰いできた空手マンの誇りを取り戻すため、そして愛する幼馴染を守るため、悪の組織との戦いに身を投じていくー。

制作年: 2018
監督:
出演: