我らがニコラス・ケイジの主演最新作『KILLERS/キラーズ ~10人の殺し屋たち~』が、めでたく日本公開! やっぱ定期的にニコケイを摂取しないと寂しいよな~と、ニコケイ観察をライフワークにしているファンは少なくないはず。しかし、そんな皆さんにとって『KILLERS/キラーズ ~10人の殺し屋たち~』は、フツーのニコケイ作品を期待していると大いに裏切られる珍・問題作であった。
感情の読めないニコケイ・スマイルが無駄に不安を煽る!
今回ニコケイが演じるのは中南米のどこかで、さびれたホテルを経営しているアラニャという男。“アラニャ”はスペイン語で“蜘蛛の巣”という意味らしく、お話に全く関係ないわけではないのだが、特に覚えておく必要はないのでスルーしよう。『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2017年)から引き続きもっさりヒゲモジャなルックスのニコケイは、地顔でも何を考えているのかよくわからないのに、いよいよ顔を見ているだけで不安になるレベルに達しつつある。
さてお話の方は、ダークなシンセサウンドが重~く不安を煽る中、ニコケイが殺し屋2人に詰問されるシーンから始まる。とはいえ何の説明もないので会話の内容はサッパリ不明で、どういうこっちゃ? と首を傾げていると、いきなりホテルの一室で何者かを狙撃しようとしている中年スナイパーのシーンに切り替わる。
なるほど“10人の殺し屋たち”と謳っているくらいだから、次々とタイプの異なる殺し屋たちが登場して、そのうち各々の話がつながっていく系のお話だな!? ……なんて予想してみたくなるかもしれないが、間違いなく後でバカみたいな気持ちになるので止めておこう。ともあれ、この中年スナイパーは物語の起点となる“サクッと死に役”というわけでもなく、ライトヘビー級の泣ける家族ドラマを遺して死んでいくのだった。
目眩がするような殺しのピタゴラスイッチ的ドンパチ展開!
なんとも予想外の展開に、ますます「なにこれ……?」と頭の中はハテナマークだらけになるわけだが、この後、まったく前情報を入れていないと非常にビビる展開がしばらく続くことになる。中年スナイパーを殺した若手スナイパーを悪徳警官たちが狙い、そこで“とあるブツ”(完全にマクガフィン)を巡る内輪モメが起こってドンパチを繰り広げたかと思うと、さらに凶悪な女ボスとわんぱくな手下が登場して……という目まぐるしい展開が、一切の説明なくズンズン進行していくのだ。
シークエンス毎に流れるようにバタバタ死人が出る様子は、まるで殺しのピタゴラスイッチ。しかも、中盤の折返し地点までニコケイがビタイチ登場しないという省エネ……もとい大胆な脚本で、再登場まで一体どんだけ待たせんだよ! と文句を言いたくなる人もいるかもしれない。しかし、真のニコケイファンならば「こりゃ最悪ラストまで出てこないかもな……」と逆にニヤリとさせられるはず。 しないか。
考えるな!(ニコケイを)感じろ!! 物語を追うと逆に混乱する不思議な映画
ニコケイはクズを演じた作品のほうが面白い傾向にあるが、本作のニコケイは義理を重んじるアツい男なのかカネ目当てのテキトー親父なのか、かなり最後のほうまで漫然としないまま物語は進む。その合間に緊張感を絶妙に削いでくる謎のニコケイ・ムーブも楽しめるが、いわゆる狂言回し的なポジションでもあって、それを自ら最後に回収する、と考えると分かりやすいかも知れない。ただし、本当にそういうことなのか微妙に自信がないので、そのへんは各自劇場で確認してほしい。
というのも、本作は真剣に観ていても話の本筋がイマイチ掴めないのである。いや、真剣に観すぎたから掴めなかったのかもしれない。つまり本作は、頑張って物語を追おうとせずに、しばらくドンパチを眺めつつ、満を持してのニコケイ登場を楽しむ……それが正しい楽しみ方なのだと思い至った。監督のケン・サンゼルは一応『リプレイスメント・キラー』(1998年:アントワーン・フークア監督)の脚本を手掛けた人物なのだが、なんとも可笑しな映画を撮ったものである(ぜんぜん勘違いしてたらすみません)。
『KILLERS/キラーズ ~10人の殺し屋たち~』はヒューマントラストシネマ渋谷で開催の「MDGPモースト・デンジャラス・シネマグランプリ2019」にて2019年12月20日(金)より公開
『KILLERS/キラーズ ~10人の殺し屋たち~』
さびれた場末のホテル、吸い寄せられるように集まった客は全員が殺し屋。“何者か”が仕掛けた危険な罠、殺し屋同士の果てしない殺し合いの連鎖。全員が全員を狙っている。全員が全員をダマしている。そして、最後に生き残るのは誰だ?
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催の「MDGPモースト・デンジャラス・シネマグランプリ2019」にて2019年12月20日(金)より公開