ドルフ・ラングレンと元UFC王者が対決! 低予算ながら安定感ある仕上がり
はっきり言ってしまえば、いかにもB級(本来の“B”の意味とは違うが)である。『アクセレーション』は、低予算なりの仕上がりとなったクライム・アクションだ。……が、映画好きというのは、パッと見「フツーの映画」の中に得難い味を感じたりもするもの。本作も「おっ、やってるやってる」的な楽しみ方ができる映画なのだった。
実質的な主役はナタリー・バーン演じるローナ。犯罪組織の殺し屋である彼女が幼い息子を人質に取られ、ボスの命令で次々と“殺しのミッション”をクリアしていく。どうやらローナは裏切りの疑いをかけられているらしい。
ボス役は『クリード 炎の宿敵』(2018年)で我々を泣かせに泣かせたドルフ・ラングレン。出番は短いが、ダニー・トレホも登場する。この手の映画に欠かせない“ファイター枠”としては、元UFC世界チャンピオンのチャック・リデルとクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン。安定の布陣だ。
ジャクソンは2019年末に日本で、元PRIDEヘビー級チャンピオンのエメリヤーエンコ・ヒョードルとの一戦(RIZIN)を控えている現役ファイター。しかしここでは、単にコワモテなだけではない雰囲気も醸し出している。このままキャリアを積んだらローレンス・フィッシュバーンのようになるかも? と言いたくなる“何か”の持ち主なのだ。
一方のリデルは、ラングレンとの格闘シーンもあり。いや、アクション映画好きで格闘技好きとしては“夢の顔合わせ”だ。人間核弾頭vsジ・アイスマン!
ツッコミどころは多々ありつつも「爪痕を残してやる!」という野心を感じる映画
息子を人質に取られた主人公が意に沿わぬ殺しに手を染めていくという、先が見えないダークなムードに包まれている『アクセレーション』。それぞれの人間関係が見えそうで見えないもどかしさもある。ただローナの苦闘をたっぷり描いて、その上で終盤イッキのたたみかけが待っている。
「あっ、そういうことね!」という感じもあり、「早く言えよ」と思わないこともない展開なのだが、いずれにしても「何か爪痕を残してやろう」という作り手の気合いの表れだろうと思う。リドリー・スコット作品を思わせる照明なども含め、野心を感じる映画であることは間違いない。
文・橋本宗洋
『アクセレーション』はヒューマントラストシネマ渋谷で開催の「MDGPモースト・デンジャラス・シネマグランプリ2019」にて2019年12月13日(金)より公開
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『アクセレーション』
ロスの裏社会を牛耳るロシア・マフィアのボス、ヴラディク。ローナは凄腕で恐れられる女殺し屋だが、組織に裏切りを疑われ、ヴラディクの仕掛けた罠にはめられてしまう。息子のミカを人質にとられ、7時間後の夜明けまでに、ヴラディクが指示する5つの《タスク》をクリアしなければならない。それが、息子を無事に取り戻す唯一の道だ。だがその《タスク》は、いずれもヴラディクと敵対する悪党どもを始末する、危険極まりないミッションだった。ローナは愛車のマセラティを駆り、深夜の街を猛スピードで駆け抜けながら、次々と敵を倒してゆく。そして、ヴラディクの隙をついてミカを奪還しようとするが......。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催「MDGPモースト・デンジャラス・シネマグランプリ2019」にて2019年12月13日(金)より公開