1人の青年の“映画愛”が産み出した怨霊がスクリーンを血で染める!!
劇場映画の企画書をプロアマ問わず募集し受賞作品の映画化をサポートするプロジェクト「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM(TCP)」。“熱血ホラーコメディ”のキャッチコピーで見事、2016年度の準グランプリを獲得したヤング・ポール監督の『ゴーストマスター』が2019年12月6日(金)より公開中。まさに映画に“呪われた”スタッフ・キャストが放つ超B級特撮ホラー&スプラッター&コメディだ。
出せば売れるとばかりに乱発される“キラキラ青春映画”。その流行りに便乗して安易な企画&低予算で製作されることになった作品の撮影現場でこき使われている、助監督の黒沢明(三浦貴大)が本作の主人公だ。何の因果か“巨匠”と同じ名前を背負ってしまった明だが、いろいろと杜撰な現場では殴る蹴るのパワハラは当たり前。そんな彼を支えるのはB級ホラー映画への限りない愛と、「いつか監督になる」という夢だけだった。しかし、そんな一途な想いが踏みにじられたとき、彼の愛と絶望が怨霊「ゴーストマスター」を呼び起こしてしまう。
主演俳優にとりついた怨霊が巻き起こす阿鼻叫喚の地獄絵図は、血糊が大量に使用されているので苦手な人は要注意。とはいえ、ストーリー自体はコメディータッチになっているのでご安心を。今年で76歳を迎えた麿赤兒のハッスルしたアクションや、シドニー五輪・柔道銀メダリストの篠原信一のなんとも言えない存在感、相変わらず憎たらしい手塚とおる、そして今までのイメージをくつがえす成海璃子の熱演が、CGに頼り切らない特撮&特殊メイクとの相乗効果で独特のハーモニーを生み出している。
涙なしでは観られない!? 映画を愛してしまったがゆえの葛藤
しかしながら、単純にコメディーとして笑い飛ばせないのも本作のニクいところ。舞台となる低予算映画の製作現場は「さすがにそれはないだろう」とツッコみたくなるほど酷い状況なのだが、それでも100%ないとは言い切れないリアリティがある。
実際に短編映画や深夜ドラマなどの制作現場で働いていたというポール監督は、業界のブラックな環境に疲弊して、その鬱屈をぶつけるべくTCPに応募したんだとか。心ある映画監督たちは平和で効率的な撮影を心がけていると聞くが、“働き方改革”が叫ばれて久しい昨今、それでもまだまだ“昭和”な制作スタイルは残っているのだろう。
「それでも、なぜ映画を作るのか?」― この問いかけに対して「愛ゆえに」と答えてしまうのが、映画に関わる人々の悲しい性。もちろん、その気持ちに便乗した“やりがい搾取”は言語道断だが、映画業界に関わる人ならば少なからず映画への“愛”を持っているはずで、それは映画の“呪い”と言い換えることもできるだろう。愛するがゆえに離れられず、離れても忘れられない。コッポラ、キューブリック、クロサワ……みな映画に呪われ、その人生を映画に捧げた巨匠たちである。
本作には、同じく映画に呪われた青年が“呪われた映画”を生み出してしまう悲哀が込められていて、劇中に挟み込まれる血の通ったセリフ=本音に、業界関係者は観ていて思わずドキリとさせられのではないだろうか。
脚本を完成させるのに第20稿もの推敲を重ねたというヤング・ポール監督の、映画への愛と執念が思う存分詰め込まれた怪作。グロ耐性がないと厳しいかもしれないが、ぜひ観賞して成仏させてあげて欲しい。
『ゴーストマスター』は2019年12月6日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
https://www.youtube.com/watch?v=cg9qSc7zQlo&feature=emb_logo
【BANGER!!! 開設1周年記念プレゼント】
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