70年代の低予算映画ならではの滋味を堪能!『ザ・クレイジーズ』
『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』(1968年)でゾンビ映画の礎を築いた偉人、ジョージ・A・ロメロによるパニック・ホラー映画『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』(1973年)。この5年後に『ゾンビ』(1978年)で現在に連なるゾンビを提示してみせたロメロの初期の傑作の一つであり、モンスターやクリーチャーに頼らずとも恐怖を生み出す事ができると証明してみせた記念碑的作品でもある。本作は、2019年“夏のホラー秘宝まつり”で劇場公開されて、2019年12月11日(水)にBlu-ray&DVDでのリリースが決定! 特にBlu-ray化は今回が初となり、ファンには嬉しいテレビ放送時の日本語吹替音声が収録される模様だ。
2010年にはロメロ自身が製作総指揮を務めたリメイク版『クレイジーズ』も公開されたが、異常事態にも関わらずどこかのんびりしたオリジナル版の雰囲気は、70年代の低予算映画ならではの滋味が堪能できる。大規模感染にも関わらず軍が充分な説明をしないところなどは近年のパニックものでもお約束となっているが、本作でも強引に隔離を進める軍の包囲網から主人公たちが脱出を試みる展開が物語の軸になる。
時代が時代だけに、本作における軍隊は武力による制圧と事実の隠蔽がメイン業務という横暴さで描かれている。さっきまで人形遊びをしていた子どもから編み物をしている老人までもが殺意を持って襲いかかってくるのだから、片っ端からブッ殺したくなる気持ちもわからないではないが、そもそもの責任は軍(国)にあるんじゃねーか! という普遍的な憤りを掻き立てられ、有事法制が強行される恐ろしさを疑似体験させられる。
しかし、この『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』が素晴らしいのは、誰一人としてヒロイックに描かないところにある。異常事態には誰もが責任を押し付け合って保身を図り、金品を奪い、そもそも正常な人間などいないのでは? と思わせるのだ。ゾンビを移民や差別問題、階級制度などのメタファーとして創造したロメロの、反体制的なメッセージを端々から感じることができるだろう。
『ソンビ』日本初公開時の幻のバージョンが蘇る!
ロメロはホラー以外にも秀作があるが、この度、代表作として挙げられるのはゾンビ映画の金字塔である『ゾンビ』の日本初公開復元版が、2019年11月29日(金)より上映。現在流通しているどのバージョンとも異なる、当時リアルタイムで劇場鑑賞したファンしか観られなかった幻の日本限定バージョンのリバイバルである。日本劇場公開40周年を迎える『ゾンビ』や、伝説のパニック・ホラー『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』を観て、改めてジョージ・A・ロメロの偉業を体験しよう。
『ゾンビ ─日本初公開復元版─』は2019年11月29日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』
アメリカの田舎町で、男が突然発狂する殺人事件が発生。そして町には防護服の軍隊が訪れ、伝染病が発生したとの情報を流す。しかし、人々の発狂の本当の理由は墜落事故により流れ出た細菌兵器のせいであった。
制作年: | 1973 |
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Blu-ray&DVD 12月11日(水)発売