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S・キング御大のプレッシャーに胃をギュッと掴まれた!? 奇跡の続編『ドクター・スリープ』監督インタビュー

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ライター:#小西未来
S・キング御大のプレッシャーに胃をギュッと掴まれた!? 奇跡の続編『ドクター・スリープ』監督インタビュー
『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

スタンリー・キューブリック監督の名作スリラー『シャイニング』(1980年)から40年後を描いた続編『ドクター・スリープ』が、2019年11月29日(金)より公開。『シャイニング』の改変が許せなかった原作者スティーヴン・キングがちゃぶ台をひっくり返さんばかりにキレたという話も有名だが、果たして『ドクター・スリープ』はお気に召したのだろうか?

キング原作映画『ジェラルドのゲーム』(2017年)も手掛けたマイク・フラナガン監督が、キューブリック版へのリスペクトや映画化のきっかけ、そして御大からのプレッシャーなどを語ってくれた。

マイク・フラナガン監督

「小5で『シャイニング』を見て、良い意味でも悪い意味でもトラウマを負ってしまった(笑)」

―どういったきっかけで本作を監督することになったのでしょうか?

その質問に真面目に答えるとなると、子供時代に戻らなくてはいけないな。

―そこまで遡りますか(笑)。

なにしろ『シャイニング』に惚れ込んで、それからキューブリック映画にハマることになったから。また、あの映画がきっかけでスティーヴン・キングのファンになったんだ。『シャイニング』は小学5年生のときから自分の人生にとって、とてつもなく大事な映画だ。若い時分に見たので、良い意味でも悪い意味でもトラウマを負ってしまったんだと思う(笑)。

それからずいぶん長い時間を経て、「ドクター・スリープ」を読むことになった。当時は別の映画を撮影していたんだけど、キングの新作が出るといつもそうするように、出版された週末に新刊を入手したんだ。あの本を読むのはとても奇妙な経験だった。まず、スティーヴン・キング好きとして、新たな物語に惚れ込んだ。回復と禁欲と責任に関する素晴らしい物語だ。同時に、この本を読みながら、ぼくの頭のなかではキューブリック的な映像が展開していた。『シャイニング』におけるキューブリックの言語を理解していたからね。そして、その映画をぜひとも見たいと思った。それで、すぐにエージェントに「ドクター・スリープ」の映画化はどうなっているか確認した。ワーナーが権利を持っていることは突き止めたんだけど、当分のあいだは凍結らしいということで、話し合いの機会を持たせてもらうことができなかったんだ。

『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

その後、ワーナーの制作部長のジョン・バーグと会うことになった。具体的な企画じゃなくて、DCユニバースについて漠然と話す約束だったんだ。そのミーティングの最中に、2人ともスティーヴン・キングの大ファンであることがわかった。そして、ジョンが言ったんだ。「『ドクター・スリープ』の権利をうちが持ってるの、知ってる? あいにく映画化のやり方が分からなくてね」と。それで「まさに、それについて相談させて欲しいとずっと思っていたんです」と打ちあけて、プレゼンを用意していたわけじゃなかったから、自分ならどうアプローチするのかを話し始めた。本を読んだときに頭の中に浮かんだ映画について話したんだ。その会合のあと車に乗ったときには、ピーターはすでにスティーヴン・キングに電話をかけていた。そこから、あっという間に動き始めたんだ。

「キングとキューブリック、二つの異なる世界を一つにするためにベストを尽くした」

『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

―『シャイニング』の続編ということで、プレッシャーは感じませんでしたか?

もちろん怖かった。この映画の監督として検討してもらえただけでもびっくりだよ。キューブリックとキングのファンとして、もし誰かがこの映画を作ったら、ぼくはかなり疑ってかかっていたはずさ。だから、どれだけのプレッシャーがかかるかも分かっていた。そして、実際に死ぬほど怖かったね。この映画に関わっているあいだ、リラックスできたことは一度もないよ。『シャイニング』が映画ファンにとってどれだけ大事であるか、スティーヴン・キングがみんなにとってどれだけ大事か分かっていたから、圧倒されていたし、心配していたし、とにかく大変だったね。

『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

―スティーヴン・キングは映画版『シャイニング』を批判していますが、どうやって続編を了承させたのですか?

たしかに、彼がこのバージョンを許可してくれなかったら、映画は実現していない。原作から意図的にオーバールック・ホテルを取り除いていたのに、この映画ではそこを舞台にすることもね。ぼくらとしては、キューブリックが生みだしたシネマティック・ユニバースの中でしか、この映画をやりたくなかった。だから、最初にスティーヴン・キングに自分の計画を説明したとき、胃がぎゅっと掴まれた感じだった。当初、彼はその方向の映画化は望んでいなかったんだ。その気持ちは十分理解できるよ。でも、ぼくがどう描きたいか、どうしてそう描きたいかを説明したら、許可をくれたんだ。

『ドクター・スリープ』©2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved

その後のスティーヴン・キングは、他の映像化作品と同じように、後ろに退いて、まったく関与しなかった。圧倒的な信頼を与えてくれたんだ。干渉されないのは素晴らしいことだったけど、いずれ彼が完成作を見ることは分かっていた。そして、気に入らなければ、彼は躊躇いなしに発言することで知られている。だから、その最悪のシナリオがずっと頭にのしかかっていた。それに、キングだけじゃない。ぼくはキューブリックの遺族にも見せることになっていた。つまり、ぼくの目標はこの二つの異なる世界を一緒にするためにベストを尽くすことだったんだ。

―スティーヴン・キングは完成作を見ましたか?

うん。2時間半、緊張でずっと呼吸ができなかったよ。でも、映画を気に入ってくれたんだ。同時期にキューブリックの遺族も見てくれて、彼らも気に入ってくれた。ぼくにとってみれば、もっとも重要な批評家2人が認めてくれたことになる。おかげで少し気が楽になったよ。

取材・文:小西未来

『ドクター・スリープ』は2019年11月29日(金)より全国ロードショー

『シャイニング』CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年12月放送

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『ドクター・スリープ』

40年前の惨劇を生き延びたダニーは、心に傷を抱えた孤独な大人になっていた。父親に殺されかけたトラウマ、終わらない幼い日の悪夢。そんな彼のまわりで起こる児童連続失踪事件。
ある日、ダニーのもとに謎の少女アブラからメッセージが送られてくる。彼女は「特別な力(シャイニング)」を持っており、事件の現場を“目撃”していたのだ。
事件の謎を追うダニーとアブラ。やがて2人は、ダニーにとって運命の場所、あの“呪われたホテル”にたどりつく。

制作年: 2019
監督:
出演: