伝説の女子レスラーの実話をもとに描く感動のスポ根ストーリー!
WWE、すなわち世界最大のプロレス団体において女子部門のトップとなったレスラー、ペイジのサクセスストーリーを描く『ファイティング・ファミリー』は、いわゆる“スポ根”ものと言っていい。
主人公サラヤ(のちのペイジ)は両親が経営するイギリスの弱小プロレス団体に所属。兄もレスラーで、いわばレスリングはファミリービジネスだ。もちろん儲かるはずはなく、労働者階級のパンクな一家である。
そんな境遇から脱出するきっかけが、WWEのトライアウトに合格したこと。ただ“ザ・レスラー”なサラヤに対し、数年前までWWEでの女子は添えもの的な感じもあった。選手はDIVAと呼ばれ、金髪、日焼け、巨乳のセクシー美女が観客の“目の保養”を担当するといった趣だ(そんな選手ばかりでもなかったが)。
当然、サラヤはなじめない。子供の頃からプロレス漬けで生きてきたプライドがある。だが、やはりWWEは世界トップの団体であり、練習も生き残りも厳しい。そこで支えになるのが、彼女の性格もプロレスの世界も知り尽くした家族たちだった。
つまり『ファイティング・ファミリー』は、スポ根ドラマであり家族愛の物語だ。そしてレスリング一家の話である以上、プロレスというジャンルの独自性も重要なスパイスになってくる。プロレスは、ボクシングや総合格闘技(MMA)のような純然たるスポーツではない。かといって、単なるショーでもない。体を張り、命を削っての生き残り合戦だ。
あのロック様が出演・製作を担当! プロレスへの愛と厳しい業界の切実さも描く
気の強さの裏にナイーブさも隠し持つ主演のフローレンス・ビューはもちろん、父親リッキー役のニック・フロスト(イギリスのボンクラといえばこの人!)、WWEの新人育成エージェント役ヴィンス・ヴォーンなど、脇を固める俳優陣も見事。ヴォーンが語る、サラヤの兄ザック(ジャック・ロウデン)がWWEトライアウトに落ちた理由には、説得力と哀愁がある。「なるほどプロレスはそういう世界なのか……」と思わせるのだ。
ストーリーが進むと“金髪美女”たちがプロレスに挑む切実さも見えてくる。プロレスの“裏側”も描かれているが、それはプロのなんたるかを描くために必要不可欠な部分だ。
特に印象深いのは、サラヤの兄が指導するレスリングスクールの場面。荒んだ郊外で暮らす少年たちにプロレスを教えるのもまた“プロレス業界”の一つの光景である。本作はWWEでの出世物語を描きながら、「メジャーな舞台だけがプロレスではない」とも言っている。そこに、この映画の奥行きがあるのだ。
ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンは、この映画に出演するだけでなく制作総指揮にも名を連ねている。彼もプロレスラー一族の生まれであり、またプロレスの煌びやかな部分だけでなく“どインディー”の名もなき(そして愛すべき)面々まで含めて愛しているのだろう。映画の魅力とプロレスの魅力がまっすぐにつながった快作だ。
文・橋本宗洋
『ファイティング・ファミリー』は2019年11月29日(金)より全国ロードショー
『ファイティング・ファミリー』
イギリス北部ノーウィッチでレスリング・ジムを営むナイト一家はレスリングの固い絆で結ばれている。中1の時からリングに立っていた18才のサラヤ(フローレンス・ピュー)は特にレスリングを愛している。日々ジムに通う子供達にレスリングを教え、いつかはWWE(ワールド・レスリング・エンターテイメント)の試合に出て一家を盛り上げたいと願う健気な娘だ。兄のザック(ジャック・ロウデン)もプロレス命。だが彼は愛する彼女と結婚をし、普通の家庭も持ちたい。そんな兄妹に転機が訪れる。トレーナーのハッチ(ヴィンス・ヴォーン)に誘われ、WWE のトライアウトに参加する。そこで二人が尊敬してやまない、かのドウェイン・ジョンソンとの対面を果たすのだ。大喜びでトレーニングに勤しむ兄妹だったがサラヤだけが次のステージに進み、フロリダに行くことが決まる。兄と二人で渡米したいと言い張るサラヤを、ザックが説き伏せる。「家族みんなの為にお前一人でも行ってくれ。」渋々承知したサラヤはリング名を「ペイジ」に決め、大好きな家族と別れてアメリカに渡る——。
制作年: | 2019 |
---|---|
監督: | |
出演: |
2019年11月29日(金)より全国ロードショー