杉野遥亮&福原遥のW主演も話題の映画『羊とオオカミの恋と殺人』が2019年11月29日(金)より公開。ネットで話題を呼んだ大ヒット漫画「穴殺人」を原作に、引きこもり男子と殺人鬼美女という接点ゼロの2人が紡ぐ青春猟奇的恋愛ドラマを見事に映画化してみせた朝倉加葉子監督にお話を聞いた。
「立場の異なる2人が自分自身と向き合いながら不器用に互いの想いをぶつけていく」
―まずは朝倉監督から、本作がどんな映画かご紹介いただけますでしょうか。
『羊とオオカミの恋と殺人』は「穴殺人」という、漫画家・裸村(らーそん)さんの作品が原作です。ニートで浪人生の男の子が、隣に住む美女に恋をするけど実は彼女は殺人鬼だった、というお話です。2人は恋人同士になり、楽しい日々を送りたいのに、殺人によって様々な事件が起こっていきます。怖いシーンもありますが、可愛らしいラブストーリーです。
―監督はどの段階から企画に関わったのでしょうか。
企画プロデューサーから原作を教えていただいて、映画化に向けた企画作りの始めから関わっています。初めにお話を頂いたときは原作も未完の状態(原作は2016年に完結)だったので、原作の8巻のうち1~5巻のエッセンスをピックアップして構成しました。
―原作「穴殺人」のどういった点に惹かれましたか?
2人のキャラクターが愛らしいし、立場や考え方も違いますが、どちらも彼らなりに自分自身と相手に真面目に向き合っていて、それをお互いに不器用にぶつけ合うところが魅力的でした。
―朝倉監督は、過去作でも冒頭のシーンへのこだわりを強く持たれていますが、本作も強烈なシーンから始まりますね。
そうですね。原作と近い始まりですが、この作品の序盤はニートで引きこもりの黒須くんという主人公が、自分の殻という穴の中から少しずつ出ていく物語です。ファーストカットをドアののぞき穴から始めて“穴“というものを画面に認識させながら、そこから明るい光が射し込んできて外に出ていくということを、冒頭のシーンでやりたいと考えました。
「遥ちゃんは“殺人鬼の役をやってみたかったので嬉しいです”と(笑)」
―清純なイメージの強い福原遥さんを主人公の殺人鬼・宮市さんに抜擢した理由は?
彼女はすごく可愛らしいし、爽やかで、清らかで明るいイメージの方で、お芝居も上手いし文句を付けようがないのですが、“本当”のところと“嘘”のところの境界線がわからないところに魅力があると思います。子供のころに一つの役(NHK Eテレ「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」の“まいんちゃん”こと柊まいん役)をずっとやってらしたことが関係しているのかもしれませんが、嘘っぽいことを演じても嘘に見えないし、リアルなものを演じてもリアルなだけにとどまらない、映画的な華があります。今回の役は隣に住む男の子と恋をする女子大生でもあり、かつ生粋の殺人鬼という特殊な役でしたか、素晴らしく演じてくれたと思います。
―福原さんは殺人鬼という役に戸惑いはなかったのでしょうか?
遥ちゃんと一番初めに会ったときに「殺人鬼の役をやってみたかったので嬉しいです」と仰っていて(笑)。面白い役にチャレンジしたいという意欲があったみたいです。彼女は本を読むことや映画を観ることが好きで、フィクションとしての殺人鬼を面白がっている部分があるので、、この役を演じることへの戸惑いはなかったようですね。この役をどう演じると面白くなるのか、ずっと相談しながら一緒に作り上げていきました。
―福原さんの殺陣の所作が美しかったのですが、監督からはどんな指導をされましたか?
まず、今作のアクションシーンは小柄な女性が殺人を趣味としていて、殺人に慣れているという設定なのですが、そういう人を現実化するのは参考例もないので難しかったです。ダンサー兼振付師で、古武術や身体についてお詳しい青木尚哉さんに相談しまして、美しい女性の殺人鬼なので、美しく見えるように振付を作っていただきました。自分と相手の体をそれぞれ力点と支点として、小柄な人でも力を掛けずに体勢をひっくり返すことや、相手を自由に動かせるアクションになっています。ユニークな殺人アクションがいくつも出てくるのが、今回の一つの目玉ですね。
―福原さん演じる宮市さんが合羽を着て黄色いカッターを持つ姿は、漫画の印象よりも洗練された印象を受けました。
この作品は殺人鬼も出てきますが、“異色のラブストーリー”という映画にしたかったので、杉野さんと福原さんがカッコよく、可愛く見えるようにポップなルックになるように心がけました。怖いところは美しく、楽しいところは明るく描いています
「杉野さんの柔らかい存在感は絶対にブレないので“受け”の演技を追求してもらった」
―杉野遥亮さん演じる黒須くんは健気に宮市さんのことを追い続ける男の子ですが、杉野さんを起用した理由を教えて下さい。
杉野さんが演じた黒須くんは、福原さんが演じた宮市さんとは対照的な役柄です。殺人鬼でもなく、立派な学生生活を送っている大学生でもなく、何にもない男の子の役で、逆に演じるのは大変だったと思います。杉野さんの魅力である柔らかい存在感は絶対にブレないので、本作では“受け”の演技(リアクション)を追求してもらいました。個性的なキャラクターが登場する映画なのですが、杉野さんには彼らの様子を見る係として、映画全体をまとめてもらう大事な役目を十分に果たしてもらいました。
―映画全体を柔らかい空気で包まれていますが、それは主演のお2人が自然と醸し出した空気感なのでしょうか。
そうですね。2人が持っている存在感が大きいと思います。それと、事件が頻発するタイプの作品なので、そうでないときは何もない日常生活を描いて、落差をつけて描こうと思っていました。
―監督がこれまで手掛けてきた作品の共通点として、登場人物が「怖いものを乗り越えていく」ことが多いと思いますが、一貫性のあるテーマは意識的なものなのでしょうか。
自分で狙って作っているわけではないのですが、不思議なもので、出来上がった作品を見て振り返ると共通するものがあると思います。今回は原作もありますし、今まで監督した作品とは違うタイプの映画になると思っていて、実際にそうなりましたが、すごく自分の映画っぽいなとも思いますね。自分でも不思議です(笑)。今作でも、主人公の2人が何かを乗り越えるという映画になっていますし、今回の殺人シーンを含めホラー要素もあります。メタ化して取り込んだつもりだったのですが、そういった要素が混在する雰囲気も、他の作品と共通する部分があるように思えます。
『羊とオオカミの恋と殺人』は2019年11月29日(金)より全国ロードショー
https://www.youtube.com/watch?v=aRVdIzhyjXs&feature=emb_title
『羊とオオカミの恋と殺人』
大学受験に失敗し予備校もやめ引きこもり、ライフラインを絶たれ絶望した黒須(杉野遥亮)は、 壁につけたフックで首吊り自殺を図るもあえなく失敗。その弾みで偶然にも、壁に穴が空いてしまう。穴を覗くと、美人で清楚な隣人・宮市さん(福原遥)の生活が丸見えで・・・。その日から穴を覗くことが生き甲斐になり、どんどん宮市の虜になっていく黒須。しかし、ある日彼女が部屋で行っている凄惨な殺人行為を目撃してしまい、声をあげてしまう。目撃行為が見つかってしまった黒須はつい宮市に愛を告白。殺されるかと思いきや、結果彼女と付き合うことに!アルバイトも始め、デートをし、部屋では宮市の手料理を食べ、幸せ絶頂の黒須。しかし宮市は、黒須とのデート中も構わず殺人を犯し…。次は自分が殺されるのか?黒須の運命はいかに!?
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2019年11月29日(金)より全国ロードショー