北欧の至宝マッツ・ミケルセンは2019年11月に2本の出演作が公開され、しかも22日はお誕生日! という祝砲はこちらの記事で盛大に打ち上げさせていただいたが、そんなマッツの代表作にして傑作『偽りなき者』(2012年)を紹介しないわけにはいかないだろう。
この屈辱と悲憤に耐えられるか!? 変態扱いされるマッツが切ない名作『偽りなき者』
世界的なゲームクリエイター・小島秀夫もマッツ出演作のベストに推した『偽りなき者』はまごうことなき傑作なのだが、いわゆる“胸糞映画”であることにも触れておかなくてはならない。あまりにも重~いお話なので、ここでは努めて明るく紹介したいと思う……とはいえ、この傑作を貶めたくはないので塩梅が難しいところだ。
本作の舞台は、マッツの故郷でもあるデンマーク。マッツ演じるルーカスは子持ちバツイチで、小学校で教鞭をとっていたが廃校により失業し現在は幼稚園教師として働いているイケオジだ。息子は元妻のもとで暮らしているため愛犬と寂しく生活しているが人望は厚く、序盤は旧友や近所の仲間たちとワイワイ楽しくやっている様子が描かれる。同僚の女性とイチャコラするシーンもあるのだが、その全てが彼に迫る悲劇への振りとしか思えない。
その悲劇についてズバリ言ってしまうと、教え子であり親友テオの娘でもあるクララがついた何気ないウソによって、ルーカスは小児性愛者の烙印を押され、村八分にされてしまうのだ。その内容は人によっては気分が悪くなるようなもので、幼稚園児から聞かされたら怒り狂う人もいるだろう。つまり下半身的なアレである。当然ながら完全に冤罪なわけだが、過剰反応した園長によってルーカスは問答無用でクビになってしまうのだった。
原題『JAGTEN』(=狩り)の意味するものとは? 冤罪が人間社会の脆さを暴き出す
このお話が複雑なのは、ちょっとしたことで意地悪をしたくなる年頃の女児がコトの発端というところだ。しかもルーカスは生真面目すぎたがゆえに、周囲のプチパニックな状況に冷静に対応しようとしたのも良くなかったかもしれない。しかし、身に覚えのないことはその場で100%の力で否定するべきだな……と思わされると同時に、それは例えば痴漢の犯人だって同じ反応をするだろうし、この対応に関して正解を導き出すのは至難のワザだ。
クララはおそらく3~4歳と思われるが、「このクソガキ……!」と憎らしくなってくるほどナチュラルな演技を披露する子役、アニカ・ヴィタコプがスゴい。しかし物語のミソは、大人たちが明らかにクララの証言を誘導していて、真実の究明よりも「ペド野郎をとっちめたい」という意識が先行しているところにある。子どもの気まぐれひとつで真っ当な大人が人間的にも社会的にも抹殺されてしまう様子にゾッとさせられるし、大人たちの狂気を目の当たりにした子どもにもトラウマが残ることになってしまうだろう。
集団=街の住民たちが、獲物=ルーカスを肉体的・精神的に追い詰めていく展開、そして原題『JAGTEN』(=狩り)の意味がわかるラストシーンまで目と心を釘付けにされてしまう、動悸がするほど恐ろしく哀しい物語、それが『偽りなき者』だ。
映画にゲームに大忙し! そんなマッツが密着取材をOKしてくれました!!
そんな『偽りなき者』が“マッツ月間”の一環として、CS映画専門チャンネル ムービープラスで2019年11月6日(水)、22日(金)に放送!! 11月8日(金)には『永遠の門 ゴッホの見た未来』『残された者-北の極地-』と2本の出演作が公開され、さらにマッツが重要なキャラで登場する<KOJIMA PRODUCTIONS>製作のゲーム『DEATH STRANDING』も同日に発売ときた!
大忙しのマッツは諸々のプロモーションを兼ねて9月に来日していたのだが、そんなマッツにムービープラスが密着取材を敢行。前乗りで京都観光を楽しんだマッツと合流し、『残された者』ジャパンプレミアに始まり、多数メディアの取材対応など、分刻みのスケジュールをこなすマッツに文字通り密着した。さらにムービープラス特番用の収録にも参加し、プレゼントを賭けたゲームにも挑戦してくれた太っ腹なマッツ。書道チャレンジのリクエストに応え達筆を披露するなど、多忙にもかかわらず終始ニコニコ対応してくれたマッツ、本当にありがとう……。
『永遠の門』で共演したウィレム・デフォーやジュリアン・シュナーベル監督、『DEATH STRANDING』の小島秀夫監督からの称賛コメントも放送される「“北欧の至宝”マッツ・ミケルセン/来日密着特番 マッツ100%」を見れば、ますますマッツにメロメロになること間違いなし! サイン入り生写真など豪華プレゼントもあるので、というか特番を見るとめちゃくちゃ魂が救われるので、ぜひ『偽りなき者』と併せてご覧いただきたい。
「“北欧の至宝”マッツ・ミケルセン/来日密着特番 マッツ100%」と出演作『偽りなき者』は、CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年11月放送
『偽りなき者』
離婚と失業の試練を乗り越え、幼稚園の教職に就いたルーカス。そんな彼がある日、親友テオの娘クララの作り話が元で変質者の烙印を押されてしまう。幼いクララの証言を誰もが信じて疑わない。無実を証明できる手立てがないルーカスは仕事も親友も信用も失い、小さな町ですっかり孤立してしまう。
制作年: | 2012 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年11月放送