フランス最後の植民地で起こったテロ犯罪に世界最高峰のスナイパーたちが挑む!
サスペンス・アクション映画の歴史に、また一つ重厚な名作が刻まれた。実話を基にした映画『15ミニッツ・ウォー』(2018年)の舞台となるのは1976年、アフリカの小国ジブチ。1800年代に武力援助の見返りとしてエチオピアから譲渡されるとフランス領ソマリランドと呼ばれ、他のアフリカ諸国が徐々に独立していく中にあって70年代後半までフランスの植民地だった国だ。エチオピアの右上あたりにポツンとある小さな国ではあるが、ソマリア沖アデン湾に面し3国と隣接するため重要な貿易の拠点となっている。
かように複雑な歴史を持つジブチだけに、かつては独立派のアファル族と残留派のイッサ族の間で紛争も発生。独立が遅れたのも民族間の対立が原因だったようだが、この『15ミニッツ・ウォー』は軍関係者の子どもたち数十人が乗ったバスが、フランスからの独立を求めるソマリア沿岸解放戦線の集団にジャックされるところから始まる。もちろん犯人たちの要求は、フランスからの独立と志しを同じくする同胞たちの解放だ。
この緊急事態に対しフランス政府は、軍でも指折りのスゴ腕スナイパー5名を招集し特殊チームを編成。まだ幼く行動が読めない子どもたちを無傷で取り戻すべく、複数人の実行犯を“同時に”射殺するというウルトラC級難度のミッションに挑むことになる。
これはまるで『七人の侍』だ! 危険を顧みず子どもたちを救うべく戦った5人のスナイパー
基本設定はほぼ実話どおりといって差し支えないと思うが、おそらく登場人物はフィクションで、随所にドラマチックな演出が加えられている。アルバン・ルノワール演じるチームの指揮官ジェルヴァル大尉はかなりアツい男だし、保守的なヴァンサン・ペレーズ演じるファヴァート将軍と度々衝突。また、子どもたちとバスに同乗することを望んだアメリカ人教師ジェーンを演じるのはオルガ・キュリレンコで、テロリストたちに屈しない芯の強い女性教師を持ち前の眼力で表現してみせた。
そして本作のハイライトとなる“同時射撃”だが、どうやらスナイパーたちは本当にこの離れワザをやってのけたらしく、モデルとなった“世界一の対テロ作戦部隊”と言われるGIGN(Groupe d’intervention de la gendarmerie nationale/国家憲兵隊治安介入部隊)の実力に驚かされる。映画内では、スコープ越しに射殺される標的や視界の揺れの演出が見事で、変な過剰さはなくリアルさを感じられる程度に留めてあるのがシブい。待機中にヨタ話をしたり屁をこいたりするユルさと、いざ射撃モードに入ったときの緊張感のギャップが激しく、一瞬で空気が変わる展開に思わず息を呑む。
史実を詳しく調べずに観ると、いつ誰が死んでもおかしくない状況に心臓がキューッとなること必至。かなり切迫した状況で危険な賭けに出る姿は、『七人の侍』(1954年)で描かれた自己犠牲の精神を彷彿とさせる。犯人側に協力するソマリア軍と激しく衝突するシーンも口の中がパッサパサになるほどの緊張感なので、最後の最後まで目が離せない。
『15ミニッツ・ウォー』は2019年10月11日(金)より公開
『15ミニッツ・ウォー』
フランス最後の植民地ジブチ。軍関係者の子供らを乗せたスクールバスが、独立派武装組織のメンバーに乗っ取られるという事件が発生。テロリストたちは同志である政治犯の即時解放と、フランスからの独立を要求し、応じない場合は人質である子供たちの喉を切り裂くと宣言する。事態を重く見たフランス政府は、事件の早期解決のため極秘裏に特殊制圧チームを編成し現地へ派遣することを決める。チームを指揮するジェルヴァル大尉(アルバン・ルノワール)を始め、集められたのは軍でもトップクラスの実力を持つスナイパーたち。彼らは一斉射撃によるテロリストの同時排除という前代未聞の作戦を立案。しかし現地駐留軍、そして事態を穏便に収束させようと動く外交筋との連携がうまく行かず、膠着状態が続いてしまう。一方生徒たちの身を案じた女性教師・ジェーン(オルガ・キュリレンコ)は軍関係者の静止を振り切り、生徒たちのために、単身テロリストに占拠されたバスに乗り込んでゆくのだが…。
制作年: | 2018 |
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2019年10月11日(金)より公開