アメコミ・スーパーヒーロー(風)SFアクション『ガーディアンズ』(2017年)や、本格戦車サバイバルアクション『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(2018年)など、いま謎にイケイケなロシア映画界が生んだゴシック・ミステリー・ホラー三部作の記念すべき第1作目、『魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち』(2017年)が、ついに日本で劇場公開される。
物語の主人公は近代ロシア文学の先駆者、ニコライ・ゴーゴリその人である!
良識ある映画ファンの皆さんならば、まず「魔界探偵ゴーゴリ」という字面のパンチ力と、情報量が多すぎな盛り盛りタイトルだけで興味を惹かれてしまうだろう。中2感と言ってしまえばそれまでだが、まるで『ハリポタ』シリーズを1本鑑賞したんじゃないかと錯覚するくらい濃厚なタイトルで大変好感が持てる。いや、内容がタイトル負けしてるとか、そういう意味では決してない。
さて“ゴーゴリ”といえば、もちろん19世紀ロシア文学の代表的な作家、ニコライ・ゴーゴリである。盗まれたコートを求めて彷徨う幽霊を描いた短編「外套」などで有名な近代ロシア文学の祖の一人だが、本作はまさにそのゴーゴリの著作「ディカーニカ近郷夜話」の前日譚を描いた物語。そして主人公は、青っ白いもやしっ子ゴーゴリくん自身である。とはいえ「まんが道」みたいな作家を志す青春物語とか、そういうお話では当然ない。
出し惜しみ一切なし! 霊能力者と名探偵の最強コンビが爆誕!!
物語の舞台は、1829年のサンクトペテルブルク。ゴーゴリくんは秘密警察で書記官として働いているが、本当は書きもので食っていきたい作家志望の青年だ。あるとき、殺人事件の書き取りのために現場に向かうと、そこで腕の立つ探偵と評判のグローと出会う。実はゴーゴリくん、霊視能力というか降霊術というか、とにかく色んなものが見えてしまう特異体質で、それを見抜いたグローの推理力との合わせ技によって事件を秒で解決。その特殊能力を買われ、連続猟奇殺人事件を捜査するべくグローと共にウクライナの寒村へ赴くことになる。
霊能力を持つ作家志望の今どき男子と、シャーロック・ホームズを100倍怪しくしたような探偵紳士というコンビが冒頭ものの数分で爆誕するあたり、とにかく出し惜しみしないロシア映画の特徴が全開。しかも、物語の重要な鍵となる“暗黒の騎士”はオープニングの時点で登場済みで、「あっ、それもう見せちゃうんだ……」という驚異的なテンポの良さも本作の大きな魅力だ。ちなみに暗黒の騎士は、どことなく『ジェヴォーダンの獣』(2001年)テイストがあってカッコいいので要注目。
とにかくゴーゴリくんがめんどくさい! でもVFXのクオリティはハリウッド級!!
探偵グローは主人公ゴーゴリくんの特殊能力を利用して事件をさっさと解決させようと目論んでいるが、ゴーゴリくんは能力を発動するたびに意識を失うというめんどくさい副作用の持ち主でもあり、まだ何も起こらないうちからブッ倒れまくるので捜査はなかなか進展しない。しかし、グローは遺体の検死もやっちゃう万能ぶりで、さらに娘想いの屈強な鍛冶屋やアル中の村医者がゴーゴリに協力するというRPGみたいな展開はなかなか燃える。とはいえパーティの力不足感は否めず、いわゆるレストレード警部的ポジションの人が「しょうがねえな……」みたいな感じでヘルプしてくれるという有様ではある。
予算の都合もあってか全体的にもっちゃりした展開は否めないが、『ガーディアンズ』でも披露した露産VFXのクオリティはかなりのもので、まったく安っぽさを感じさせない。逆に、死体損壊シーンなどのSFXシーンはびっくりするくらいサクッと流していて、控えめなグロ描写などもご愛嬌といったところ。もちろん三部作ということで、ラストは「ここで終わるんかーい!」という感じで〆ているので、ぜひ間を置かず続編も劇場公開していただきたい。続編『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』はすでにタイトルでネタバレしてるけど、あの伝説の“まぶたが重い”妖怪が出てくるみたいですよ!
『魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち』は「WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019」にて2019年10月11日(金)より公開
『魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち』
ある村で起きた若い美女だけを狙う連続猟奇殺人事件――
容疑者として浮かび上がった“黒騎士"。
異世界と繋がる闇の力が覚醒したゴーゴリが連続殺人鬼の正体を暴く!
制作年: | 2017 |
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監督: | |
出演: |
「WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019」にて2019年10月11日(金)より公開