J・J・エイブラムス製作のナチス実験スリラー映画『オーヴァーロード』に便乗!
いきなりで恐縮だが、今回紹介するB級映画は『オーバーロードZ』(2018年)である。原題は『Nazi Overlord』という。無論、米国の映画会社・アサイラムが製作した作品だ。
どこかで聞いたようなタイトルに、何かを察した方も多いだろう。そう、本作はかのJ・J・エイブラムスがプロデューサーを務めたアクション映画『オーヴァーロード』(2018年)に便乗したモックバスターなのだから。
そして例によって今回もまた、基になった原作とは一切関係ない。関係があったとしても、それはそれでアサイラム敗訴のリスクが高まるだけではあるが。
というわけで前口上もほどほどに、『オーバーロードZ』について語っていこう。
「戦争アクション×ゾンビホラー」という大げさな謳い文句を信用するべからず
時代は第二次世界大戦中。ノルマンディー上陸作戦において、ナチス兵を素手で絞め殺したという伝説を持つ米兵・ロジャース大尉。使命を果たして帰国も間近というところで、ナチスに捕まった英国の科学者、インディア・エリスの救出作戦に駆り出される。危険な任務に一旦は難色を示したロジャースだったが、結局は部下と共に、エリス博士が目撃されたという情報を入手しルーマニアへ急行。。ナチス兵の猛攻を凌いで基地に侵入すると、目的であるエリス博士と接触する。
だが、実はナチス側に寝返っていたエリス博士は、逆にロジャースの部隊を罠に掛けて拘束。「ナチスを除いた全人類を滅ぼす病原体」の研究のために、ロジャースの部隊を被検体として、地獄の責苦にも等しい実験を開始するのだった。
果たしてロジャースの部隊は、狂気と陰謀渦巻くナチスの秘密基地から脱出して、エリス博士の計画を食い止めることが出来るのか……? というのが本作の概要である。
早速だがこの『オーバーロードZ』、日本では「戦争アクション×ゾンビ・ホラー」という謳い文句が付いているものの、実際のゾンビの出番はごく僅かなので注意が必要だ。
さらに詳細を説明すると、前半の1時間は「ナチスの基地に潜入すると、銃撃戦を交えつつ科学者を探す」というプロットに従った、至って普通の戦争アクションパートが続くので、一切「ゾンビ・ホラー」要素は見当たらない。一応、中盤で“手足が逆に付いた死体”という意味深な代物が出てくるが、後半から始まるSFパートの目玉は“無数の虫を媒体にした生物兵器”のため、件の死体に大した意味はない。
というわけで話が進んで真相も判明し、終盤のクライマックスも間近というタイミングで、ついに「科学実験の影響で暴走して、ゾンビに似た挙動で襲ってくる兵士」が少し出てくる……という具合である。ゾンビという概念の定義について今さら議論するわけではないが、本作が「ゾンビ・ホラー」かと言うと……実に微妙なラインに立っているかもしれない。
意表を突く衝撃のラストまで色々とガマン!!
全体の2/3を占めている戦争アクションパートの内容は、実に平凡である。「タフガイの主人公が、記号的に怯えたり騒いだりする部下たちを率いて、無個性な敵軍を倒していく」という手垢の付いた展開には、「文句を言うレベルではないが、楽しさを感じるポイントも少ない」という感想を抱いた。だが……本作で最も印象に残る点、それはおそらく“ラスト”ではないだろうか。
それまでクライマックスも含めてひたすら陳腐で、凡百のB級アクション映画のテンプレートを愚直になぞったストーリーが続いただけに、主人公を待ち受けていた結末には、若干だが意表を突かれてしまった。そのため総合的な評価はさておき、本作に対する最終的な印象は極端に悪いわけではない。本作もまた人を選ぶアサイラム作品には相違ないが、最後に小さな興奮を味わいたい方は鑑賞してみるのも良いだろう。
ちなみに、その“ラスト”の詳細だが、ダイレクトなネタバレは抑えたうえ、可能な範囲で説明すると……。強いて言うなら、逆『イングロリアス・バスターズ』である。
文:知的風ハット
『オーバーロードZ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年10月放送
『オーバーロードZ』
1944年ノルマンディー上陸作戦後、米軍のロジャース大尉は、ナチスに拉致された女性科学者のエリス博士を救出する任務を命じられた。だがエリス博士はナチスに寝返って禁断の研究を完成させようとしていた。それは人類を死滅させ、世界を支配しようという悪魔の計画だった・・・。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年10月より放送