夫と娘を殺された平凡な主婦が復讐に燃える殺人マシンと化すリベンジ・アクション映画『ライリー・ノース 復讐の女神』の2019年9月27日(金)劇場公開に先駆け、都内某所で先行試写会が開催された。
試写会では、抽選で選ばれたコアなアクション映画ファンが一足早く同作を鑑賞し、さらに上映後には「ナメてた相手が実は殺人マシンでした」映画の名付け親でもある映画ライター・ギンティ小林さんと、BANGER!!!執筆陣の一人でもある市川力夫さんが登場!
あらゆるジャンル映画に精通したお二人による、『ライリー・ノース』スペシャル・トークショーの模様をお届けします。
「正直、観る前はナメてました」ジェニファー・ガーナーの復活アクションにビックリ!
―まずは『ライリー・ノース 復讐の女神』をご覧になって、いかがでしたか?
ギンティ:「待ってました!」って感じですね。『96時間』(2008年)のピエール・モレル監督って、“ナメてた相手が実は殺人マシンでした”系の映画でもの凄い力を発揮してくれる方なのに、『96時間』以来なかなかこういう作品がなかったので。ショーン・ペンの『ザ・ガンマン』(2015年)も、“ナメてたショーン・ペンが実はもの凄い殺人マシンだった”みたいなのを期待していたんですけど……。
市川:ショーン・ペンにはナメる要素ないでしょ(笑)。
ギンティ:確かにショーン・ペンをナメるって、よっぽどの奴ですね(笑)。あの映画も見ごたえがあって良かったんですけど、やっぱり復讐の物語ってドラマチックじゃないですか。今作ではそれを思う存分、堪能させてもらった感じですね。
市川:ジェニファー・ガーナーが『エイリアス』シリーズ(2001年~)とか『エレクトラ』(2005年)でアクション経験を積んできた人だから、「さすがやってくれるなー!」という感じでした。正直、過去にアクションをやっていたのは知っていたんですけど、観る前は「ジェニファー・ガーナーさん、やってくれるんですか?」みたいな感じで、ちょっとナメてたんですよ。だけどビックリしました。カッコよかったです。
―ジェニファー・ガーナーは11年ぶりのアクション映画復帰なんですが、その間に3人のお子さんが誕生し、現在47歳。今年はピープル誌が発表する「最も美しい人」にも選出されました。
市川:すごいですよね。育児と仕事を両立してる。
裏切った奴の手には五寸釘!「ライリーって、心のこもった復讐をするんですよ」
―お二人は前々からピエール・モレル監督のことは追いかけていたんですか?
ギンティ:その時々で凄い映画を撮ってましたからね。
市川:まずは『アルティメット』(2004年)ですよね。
ギンティ:本国(フランス)と日本公開で若干時差があったんですけど、海外版で観て「とんでもないパルクールの映画が出てきた!」って思いましたね。
市川:『YAMAKASI ヤマカシ』(2001年)以前の90年代からずっと、パルクールを全面に使ったアクション映画って誰もが観たくて、ガンガン使ってくれよって思ってたんですけど、『アルティメット』でやりきってくれましたね。特にオープニングは今でもたまに観ますね。
ギンティ:観る! ただ不思議なことに、ラストに向かってアクションがどんどんトーンダウンするんだよね(笑)。
市川:オープニングは完璧なんですけどね(笑)。
ギンティ:『アルティメット』でパルクールを見せたことを含め、モレル監督はリアルにアクションを描くんですよ。ワイヤーで飛び回ったり、装弾数を無視して撃ちまくるみたいな大袈裟なことは決してせずに、ガンアクションでもボディアクションにしても、リアルさを重視したアクションを撮る人だから。
市川:いいなと思ったのが、『96時間』の主人公は元々最強だったんですけど、今回のライリーは普通の主婦で、最強じゃないところですね。訓練を受けて強くなるけど、そこまで最強ではない感じがあるじゃないですか。途中でやられたりもするし、人間的な弱みも抱えてる。そこがうまいんですよね。
ギンティ:ライリーって“心のこもった復讐”をするんですよ。(復讐相手を)観覧車にわざわざぶら下げたりとかって、骨が折れる作業ですよ?(笑)。 あと、復讐を果たせそうにない主婦がピンチに追い込まれる中で、ハラハラするシーンの一つが裁判シーンじゃないですかね。麻薬カルテルに買収された判事とか弁護士がライリーをやり込めていくのが、すごく腹立たしいじゃないですか。その裏切った判事の手に“五寸釘を打つ”って、久々にあんなスカッとする復讐を観ましたね。しかも相手に一言もしゃべらせないで、自分の言いたいこと言って、必ず「ジャスティス!」って言葉を使うのが本当にスカッとする(笑)。
モレル監督のこだわりがスゴイ! スタントコーディネーターは戦闘のプロ
―ライリーの戦い方はお二人から見てどうですか?
市川:ちゃんと自分の弱点をカバーする戦い方をしてますね。男と比べて小さくて華奢なところをカバーするために、下半身や金的を狙いにいったり。ちゃんとリアルな闘い方ですよね、“殺すための最短距離”。銃も体に合わせて、扱いやすそうなものを選んでますね。
ギンティ:監督は相当こだわっていると思いますね。銃器の扱いや戦い方の指導をしたキース・ウーラード(Keith Woulard)という人はユニークな経歴の持ち主で、元々ネイビーシールズ(アメリカ海軍特殊部隊)にいて、引退してからはDEA(アメリカ麻薬取締局)で働いていたんですよ。つまり“本当に戦ってきた人”が、映画でスタントコーディネーターをしているんですけど、今まで関わった作品が、テロリストに占拠されたホワイトハウスで主人公が戦うアントワーン・フークア監督の『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)。その作品でプロフェッショナルの闘い方を指導して、フークア監督と相性が良かったので『イコライザー』(2014年)でもタッグを組んで、主人公が身の回りやホームセンターにあるものを武器に変える“DIYな闘い方”を、監督や主演のデンゼル・ワシントンと作り上げたんですね。他には『ローン・サバイバー』(2013年)とかも『ボーダーライン』(2015年)。
市川:リアルな作品が多いですね。
ギンティ:実際に戦ってきた人をスタントコーディネーターにしているので、そこにもこだわりを感じますね。派手でファンタスティックな戦いじゃなくて、リアルかつ確実にちゃんと殺す。
市川:この作品の脚本家のチャド・セント・ジョンは『パニッシャー』(2004年)の短編『DIRTY LAUNDRY』(2012年)の脚本家で、主演のトーマス・ジェーン演じるパニッシャーがライリーと同じようにバンで寝泊まりしてるんですよ、車内も似てて。パニッシャーが休日、普通にコインランドリーに行ったらギャングに絡まれている若者がいたから助けるっていう、本当にそれだけの短編なんですけど、すごく残虐なんですよ。
ギンティ:殺し方にすごく心がこもってる。
―今作ではモレル監督自身も「“女性”を撮りたかった」とインタビューで語っていました。
市川:インタビューでは「撮影中に“MeToo運動”が起きて、普段だったら現場に男性スタッフが周りにいる中で女優が着替えたりするんだけど、男性たちが『出ていきます』って自発的な人払いができた」って言ってましたね。MeToo運動以降、じゃあ具体的に映画を作る現場で何が変わったのか? というインタビューはあんまり読んでいなかったので、こんなことが起きてるんだって、これで知りましたね。
―いわゆる平凡な女性がこんなに強くなる作品は、今まであったでしょうか?
ギンティ:これは“ナメてた主婦が殺人マシンになっちゃいました”というお話ですよね。『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)はジーナ・デイヴィスが主婦なんだけど、記憶を失ったエージェントだから最初から強かったわけだし。最近だと『アトミック・ブロンド』(2017年)は元々プロフェッショナルだし、韓国の『悪女/AKUJO』(2017年)もはじめから殺し屋だし。『ライリー・ノース』は本当に元々が平凡なママなので、そこが新しいですよね。
市川:だからこそ(訓練シーンを)一瞬で飛ばさないでくれよって思ったんですけどね(笑)。
ギンティ:そこもドラマなんだよね。
市川:10分、いや5分でもいいから訓練シーン見せて! って。
ギンティ:スピンオフができるぐらいの師匠がいたりして。
市川:絶対いますよ、師匠が。
ギンティ:ヘタしたら師匠がもう死んでるかもしれないしね(笑)。
市川:師匠のための復讐劇もあるかもしれない(笑)。
『ライリー・ノース 復讐の女神』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送
https://www.youtube.com/watch?v=JFAkS6jLN4I
『ライリー・ノース 復讐の女神』
ライリー・ノースは、夫クリスと10歳になる娘カーリーとともに平穏で幸せに暮らしていた。ある日、娘カーリーの誕生日を祝うために出かけた一家は麻薬組織の襲撃に遭い、ライリーだけが一命を取り留める。しかし犯人たちは無罪放免となり、ライリーは絶望と共に姿を消した。そして5年後、ライリーは復讐のため、悪党どもに正義の鉄槌を下すために還ってくる―。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送