トム・ヒドルストンとジェレミー・レナーが来てくれたことの意義
今年も3回目となる「東京コミコン」が開催され、盛況のうちに幕を閉じました。今年の動員は6.3万人と発表されています。昨年が4万人ですから、イベントとしても成長しています。
招待したセレブ(来日ゲスト)も『アベンジャーズ』から2人、『ジャスティス・リーグ』から1人、『ハリー・ポッター』から2人、そして『ロボコップ』と強力な布陣! ここに『カメラを止めるな!』『バーフバリ』も加わり、ハリウッド・デビューしたゴジラとピカチュウ、トランスフォーマー(バンブルビー)も駆けつけ、月光仮面とバットマンが並び、『ターミネーター2』でシュワちゃんが乗ったハーレーダビッドソンの展示の前をハーレイ・クインのコスプレをした女の子たちが通る、という状態(笑)。今年公開されたスピルバーグの『レディ・プレイヤー1』で様々なキャラクターたちが跋扈する素敵な世界が描かれていましたが、まさにそれを地でいくような素敵な世界になっていました。
ここまで大きくなるとすべてを見て回れないのですが、僕が今年参加した(お手伝いさせていただいた)ステージを中心に振り返ってみたいと思います。
今回、トム・ヒドルストンさん、ジェレミー・レナーさんが登壇したステージのMCをさせていただきました。実はこのプログラムは主催者ステージといって、「東京コミコン」が呼んだセレブが会場の皆さんの前に登壇するというものなのですが、誰がいつ登壇するか、ギリギリまでわからないのです。セレブは基本的に撮影会とサイン会のために来ているので、そちらが優先となります。また、登壇したとしても時間が限られているのですね。だからどのセレブが来ても、彼らの出演した映画やドラマにちなんだ質問が出来る人間が控えていた方がいいだろうということで、僕がスタンバイしていました。僕はプロのMCではないし、同時通訳が出来るほど英語が堪能ではありませんが、ジャンル映画やドラマの知識は広く浅くあるので、なんとか対応できる。
また、このステージはそもそも“記者会見の場”ではなく“ファン・ミーティング”的な性格なので、ファンの皆さんの熱気さえあればなんとかなるものなのです。今回は特にトム・ヒドルストンさん、ジェレミー・レナーさんということに大きな意味がありました。今年の衝撃作である『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でトムさん演じるロキが殺され、ジェレミーさん演じるホークアイは登場しなかった。つまりファンにとっては、すごくやきもきした2人なのです(笑)。しかしトムさんは、この先予定されているロキのドラマ・シリーズでのロキの復活を、そしてジェレミーさんは次のアベンジャーズ映画(この時点ではまだ『アベンジャーズ:エンドゲーム』というタイトルは未発表)での大活躍をファンの前で約束! 大盛り上がりでした!
ファンの熱い気持ち、好きなものに対する愛から生まれる温かさがコミコンにとって一番必要なこと
僕はアメコミ映画についてはそれなりに語れる自負はあるのですが、初トライだったのは『バーフバリ』シリーズのラーナー・ダッグバーティさんのステージ。僕も『バーフバリ』は大好きですが、本シリーズについては、この作品の素晴らしさをいち早く見出し、ずっと応援し続けているファンの方々が沢山いらっしゃいます。正直自分でいいのか? と。ただ僕が選ばれた理由は、実はラーナーさん自身がすごくアメコミ好きで、いちファンとしてコミコンに来ることをすごく楽しみにしていたそうなのです。なので、コミコン側の人間としてラーナーさんを迎える、ということだったのです。
このステージの内容は、このサイトに別途詳細なレポートが載っているのでそちらをご覧いただきたいのですが、ラーナーさんの人柄とファンの皆さんの温かさに助けられました。先のステージもそうですが、集まったファンの皆さんの「自分はこれが好きなんだ」という熱い気持ち、そして好きなものに対する愛から生まれる温かさ、これがコミコンにとって一番必要なことなのです。
僕がMCを務めたもう一つのステージ「DC COSPLAYERS LEAGUE 2018 Presented by ビオレ ピュアスキンクレンズ」は、DC愛に満ちたコスプレイヤーたちにエズラ・ミラー氏が感動し「僕たちはみなファミリーだ! 僕たちオタクを見くびるな!」と素晴らしいスピーチをしてくれました。僕が「コミコンの主役は、なによりも参加してくれたファンの皆さんだ」と公言しているのは、まさにこういう場に立ち会っているからなんですね。僕個人としては<AXN>さん(スカパー!さん)のブースでDCドラマ『ARROW/アロー』(2012~)『GOTHAM/ゴッサム』(2014~)『SUPERGIRL/スーパーガール』(2015~)について皆さんとトークショーが出来たのが嬉しかったです。大好きなスーパーガールのために一肌脱げた気がしました。
今回は、日本での劇場公開30周年を記念して、出演スターであるピーター・ウェラーさんを呼んでの『ロボコップ』の上映会も行われました。『ロボコップ』は、31年前に渋谷で開催された<東京国際ファンタスティック映画祭>という素敵なイベントでプレミア上映されましたが、この映画祭に行くのが楽しみでしょうがありませんでした。当時、好きな同士が集まって好きな映画を一体になって盛り上がる、というイベントは本当に稀有だったのです。映画『ロボコップ』にワクワクした気持ちは、いまのアメコミ映画たちに、ファンタスティック映画祭に興奮した想いは、いまの東京コミコンに引き継がれている、そんな気持ちになりました。
今年は“ある方に感謝の気持ちを伝えたい”という理由で「東京コミコン」に参加されたファンは少なくありませんでした。スタン・リーさんです。スタン・リーさんが「東京コミコン」に参加して、“これはまさにコミコンそのものだ”と認めてくださったから、「東京コミコン」は出発できたのです。今回、スタン・リーさんを偲ぶコーナーがもうけられ、多くのファンがメッセージを寄せていました。僕は氏の「人を楽しませる仕事は素晴らしいんだ。ファンタジーに国境はないんだよ」という言葉がとても好きです。「東京コミコン」は、まさにこの言葉を体現する場でありつづけようと誓いました。
文:杉山すぴ豊