目標に向かってボールを運べ! 不屈の精神が叶えた国家統一への第一歩
ラグビーワールドカップ2019日本大会の開幕を記念し、2019年9月20日(金)<金曜ロードシネマクラブ>(日本テレビ系)にて『インビクタス/負けざる者たち』(2009年)が放送される。
本作はクリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマン、マット・デイモン主演の、実話に基づくアツいラグビー映画。ワールドカップ前に観れば、ラグビーが何倍も楽しくなること請け合いだ。
本作の舞台は1994年、悪名高きアパルトヘイト(人種隔離政策)が廃止されたばかりの南アフリカ。それまで反体制のテロリストとして投獄されていたネルソン・マンデラが南ア初の黒人大統領となり、肌の色を問わず国民が共存できるレインボー・ネーション(虹色の国)を目指す様子を描く。
そしてマンデラは、1995年に自国で開催されるラグビーW杯を最高の機会と捉え、アパルトヘイトの象徴だった代表チーム、通称“スプリングボクス”を勝てるチームに、そして和平の象徴として立て直すべく、主将ピナールと共に改革に乗り出す。
いかにして南アフリカは、ラグビーを通して人種間の深い溝を埋めたのか? 本作は、ひとりの指導者とアスリート、そして国民たちの熱意が叶えた国家統一への第一歩の物語だ。
南アの重い歴史、そしてネルソン・マンデラという人物を知る
90年代、いや80年代生まれであっても、当時の南アの状況を実感として捉えている人は殆どいないだろう。特に10~30代の若者は、これほど一触即発な人種差別の空気が、つい20年ほど前まで南アに充満していた事実に、まず驚かされるはずだ。そしてネルソン・マンデラという、やけにふわふわした雰囲気のおじさんが成し遂げたコトのデカさに、大きな衝撃を受けること間違いなしだ。
控えめに言っても超レジェンドな故マンデラ氏なのだが、彼は一体どんな半生を過ごしてきたのか? より深く知りたい方は、こちらの動画が分かりやすいので予習にどうぞ。十数分の映像だが、アパルトヘイト政権についても学ぶことができる。
ちなみに本作のフリーマン、見た目の貫禄はさすがだが、喋り方はそこまで似ていない。マンデラものまねに関しては南ア出身のコメディアン、トレバー・ノアが過剰で面白いのでついでに紹介しておく。なお、白人の父と黒人の母を持つノアは南アではかなり生きづらいタイプのマイノリティだったが、そのへんもがんがんネタにしてスターとなった彼は、いまやアメリカの人気トーク番組「ザ・デイリー・ショー」のホストとして世界的な人気を誇っている。
じわじわと波及していく変化の波を丁寧に描いたイーストウッド
いわゆる伝記映画や史実ものをイメージすると少々重いが、そこはさすがの巨匠イーストウッド。過剰に説明的なシーンがないのはもちろん、気持ち良いくらいにサクサクお話が進んでいくのでストレスは皆無だ。
マンデラの偉業も安易な美談にすることなく、じわじわと変革されていく南アの、本当に最初のきっかけを作った男の姿を、まるで観客のウェーブがスタジアム中に広がっていくかのように描く。
このたびの『インビクタス』地上波放送は、W杯とのタイミング合わせだけでなく、政府による差別・憎悪の先導という許しがたい愚行を、南アの歴史を通して日本人に突きつける、とても意義のある放送だ。
本作のクライマックス、汗と芝生と土の匂いがしてきそうな試合シーンに涙しよう。
『インビクタス/負けざる者たち』は金曜ロードシネマクラブにて2019年9月20日(金)放送
https://www.youtube.com/watch?v=SPexp_w0lCI
『インビクタス/負けざる者たち』
アパルトヘイトによる27年間もの投獄の後、黒人初の南アフリカ共和国大統領となったネルソン・マンデラは、依然として人種差別や経済格差が残っていることを痛感する。誰もが親しめるスポーツを通して、人々を団結させられると信じたマンデラは、南アフリカのラグビーチームの立て直しを図る。マンデラの”不屈の精神”はチームを鼓舞し、団結させ、奇跡の快進撃を呼び起こす。それは、暴力と混沌の時代に初めて黒人と白人が一体となった瞬間だった。
制作年: | 2009 |
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金曜ロード シネマクラブにて2019年9月20日(金)放送